第二百三十四話
決戦がティターンズの勝利に終わり、黒人達も多大な戦死者を出したことで敗北を認めたようで静かになった。
エゥーゴは死神の衣の治安維持地域に逃げ込んできた部隊は壊滅させたと報告に合ったからそれなりに戦力を削れたと思うが、予め死神の衣が存在していることを知られていただろうから少し頭が回る人間は北側に逃げただろう。
アナハイムの傭兵達は雇われの身だから大体は無罪、あまりにも悪質な傭兵達は裁判の後、死刑がほぼ確定。
悪質といっても捕虜や一般人を虐殺をしていたような奴らだから日頃死刑に反対する民衆も声が小さく、やりやすいとジャミトフが笑ってたな。
そしてやはりというかなんというか、戦後処理は鬼のように忙しいらしい。
俺達は早々に韓国と話をつけてニューギニア特別地区の民衆を納得させたから問題はなかった。
ちょっと韓国を滅ぼせ、的な過剰な声があったけど小さいものだったし……ネットでも煽ってたが誘導するまでもなく潰えたのはよかった。
「やっと暴動が終わって戦後処理が始まったってのに、これか?」
手元にあるのはジャミトフが持ってきた企画書だ。
その内容は空中空母の開発を共同でやろうと言うものなんだが……なんでウチと?船のノウハウなんてフィッシュボーンと魔改造ザンジバル(実績なし)ぐらいしかないぞ、と問い合わせるとそもそも新しい発想の艦を作るのだから既存のイメージがないウチがいた方が刺激になるとかなんとか。
「空中空母とはまたSFチックなものを……」
「モビルスーツが出てきている段階十分SFですよ。私達の存在も十分SFですけど」
いや、科学的に立証されてないからSFじゃないんじゃない?あ、SFの定義になると凄くややこしい話になるからカット。
「でも空中空母なんてガルダを改造したらいいだけのような気もしますけど」
確かにガルダほどの大型艦があれば必要なさそうだよなぁ。
輸送機だから機能的ではないが、あの積載量を考えると必要が無い気もする。
ま、有力なパートナーでもあるんだし、協力するのは吝かではない。
連邦の造船ノウハウを手に入れれると思えば多少の出費は大目に見よう。
「でもアプサラスってほとんど艦艇に近いですよね。砲門数とかサラミスやマゼランより多いですし」
そこは流そうぜ。
一応アレはモビルアーマーってことになってるからさ。何より操縦は1人でしてるんだし、決して艦艇ではない。
アプサラスVはモビルスーツ搭載能力があるが補給能力は微妙だしなぁ。
一応可変モビルスーツが開発されたことで当初予定していたSFS搭載分だけ積載量が増えた。それに通常のモビルスーツと比べると飛行するため移動距離が広くなったので更に使い勝手が良くなった。
これからはミデアでは難しい局面も増える……かもしれないので生産するつもりだ。
リリ丸とジャジャ丸に搭載したサイコミュと可動砲は結局使う機会なんてないままだけどな。
「ティターンズが連邦を乗っ取るのは来年度からにするか」
「区切りがいいですからね。今から予算の振り分けを考えているでしょうね」
いや、もう考えてあるんじゃないか?
前線に立って指揮を執っていたジャミトフだが、本業は組織のトップなのだから先のことは次々と手を打ってるだろう。
実際手元にある空中空母開発予算は今回の戦訓を元にしてあるから、この短い期間に見積もったものだろう。
「……マリオンズからの報告にあったタンクタイプの必要性の検討結果は出たか」
パラパラッと書類を見てみるが……うん、価値はあるかな。
可変モビルスーツはβタイプはもちろん、量産型βでも維持費は結構掛かる。
もう少し開発すれば維持費は下がるかもしれないがタンクタイプの維持費を下回ることはまずない。
生産コストも同じだ。
そして、1番の理由はティターンズの需要が高まりそうだからだ。
おまけではあるが死神の衣にもなりそこねたクローン兵の使い道の1つとなるだろう。
これから先、どれだけニューギニア特別地区が攻撃されるかは疑問だし、本土防衛は政府に対して不安が募るから……あ、でもオーストラリアや南中国なんかには向いてるか?
可変モビルスーツなんて買えるほど余裕が無い国だけど、俺達の資本でもあるわけだし防衛の手助けぐらいはしないとな。了承っと。
「次は……お、農業コロニー2基目の見積書か」
韓国という消費地()を手に入れたことによって農業コロニーを作るように手配していたんだけど、1週間もしない内に上がってくるなんて、ブルーパプワも大きくなったもんだねぇ。
「以前作ったコロニーの改善するだけですからそれほど手間がかからないのは当然だと思いますけど……それにもう6基目ですからノウハウも結構貯まってきてますし」
「それらも含めてブルーパプワの進化ってことだ」
もちろん了承っと。
実は韓国からも優秀な人材を引き抜くつもりでいる。
農業に深刻なダメージを与えれば韓国産業の比重を変え、農業から工業へと変えさせる。
そうすれば領土が狭く乏しい韓国は現代日本のように進歩……したらいいなぁ。
こうなると自給率も現代日本と同じように下がる。そうすると俺達が食料の輸出を減らしたりすれば一気にデフレからインフレへ、その混乱に乗じて人材を引き抜く。
え?韓国人から怨まれてまともな労働力にならないだろって?こちらには教育に定評あるマリオンちゃんズがいるので問題無いだろう。
いやー、将来楽しみだなぁー。……韓国人を使うのに抵抗があるけどな。
本当は日本人がいいんだけど、日本人(自分も含む)は食べ物に関わるとマジで怖いからな。
隣国がミサイル撃っても、領土(島)を占領しても、潜水艦で領海に入っても、防空圏変更して奪っても怒らないが食べ物は激おこだからな。(元ネタ:日本を本気で怒らせてみたいがより)
それに日本はアメリカを始め、色々な国の利権が混ざってて手を出すのは危険だ。
その点韓国はほとんど中国、ロシア、日本、アメリカの利権だからな。この4ヶ国は俺達とも繋がりがあるし、根回しは終わらしたから問題なし。
ついでにこれを機に工場も作るかな。
「そのあたりも政策部に検討させておくか」
追加書類を書き書き……っと。
さて、次は……ん?犯罪が増加傾向?
どういうことよ。
「それは俺が説明します」
「いつの間にか一人称が俺になってるアムロ君、発言を認める」
「どうやら治安維持に使っているハロの対策が取られつつあるようなんです」
「マジか」
「はい、火器には強いハロですけどトリモチ弾で無効化されるケースが増えつつあります」
む、ハロの無効化手段を真似られたわけか。
一応トリモチを溶かす薬品があるが……明らかにイタチごっこか。
「一応メイがハロの回避性能を向上させる方向で改善してみようと試みています。俺は機動力の向上を目指してるんですけど……」
アムロの方は成果が芳しくないようだな。
まぁ、ハロのサイズで機動力向上なんて簡単にできるわけがない。
「一応ハロを球体からスパイク状にしてトリモチをある程度防ぐことができることがわかったんですが」
「それは他の民衆に迷惑になりそうだな」
「ですね」
「んー……とりあえずハロの投入数を増やして物量で押し潰すか」
「」
なんかアムロが唖然としてるが、これぐらい思いつけよ。
犯罪グループも延々とトリモチ弾を生産なんてできないだろうからな。銃弾と違って単純な作りじゃないから製造に手間が掛かるからこれで対処ができるはずだ。