第二百三十八話
ボン○くんスーツを原案とした治安維持用特殊スーツ兼特別地区公認マスコットキャラクター『パプワさん』を発表した。
ちなみにモデルは極楽鳥、大きさは3mと大型で鳴き声は『んばんば』だったりするが作為は……ある。
このボン○くんスーツことパプワさん、中身は最先端技術を導入して作られていてモニターや簡易空調、12時間稼働を可能にする水と食事、酸素、諸々を合わせて重量250kg、ただしパワードスーツも兼ねているので中の人への負担はそれほどない。
そして3mのサイズとなり、総重量が重くなった主な原因はサイコミュを搭載する必要があったからだ。そして搭載したサイコミュでサイコミュハロを操作することによって従来の治安維持ハロを上回る性能を発揮することができる。
中の人は育った環境で容姿に差ができるとはいえ、やはり全体的に似ていて表立って使いづらく、戦争が当分無いことが予想され、余ったクローン兵が務める。
これでトリモチや銃弾などを躱し、高い命中率を誇るハロの誕生するわけだ。
主要都市はサイコミュの中継器を設置して指揮するサイコミュハロは10機を超え、範囲も広大になるが地方になるとパプワさん搭載のサイコミュしかないため、指揮ができるのは3、4機でしかない上に指揮範囲も200m程度と狭いが運用次第だろう。
「ブルーニーさんを筆頭に着ぐるみ王国みたいですね」
「中の人など(以下略」
そうそう、人材不足でコロニー建設が滞りそうだったけど回避できた。
それもクローン兵なんだけどね。
新米クローン兵はちょっと不安だけど1年以上経ってるクローン兵は飲み込みが早くて今では小さいデブリを回避どころか器用にボール(ビーム砲装備)を操縦して的確に迎撃してくれるので普通の人間達より断然仕事が早くて安全で普通の人間が使えなくなりそう。
とりあえず投入したのは500人だが1ヶ月もすればフラナガン機関から1000人作られるはずだからもうその時は500人を新たに投入する予定だ。
給料も安くて病みつきになりそう……こうしてブラック企業ができるんですね。わかります。
「ほどほどにしないとアイナさんからクレーム来ますよ」
「まぁ10年はクローン兵自身の生産費用を稼ぐ期間ということで納得してもらってるから大丈夫……なはず?」
「自分で言ってて自信が持てないことは言わないでください」
そんなこんなで問題は少しだけ解決したわけだ……少しだけな。
ただ、世界が好景気に見舞われて実は困ったことがある。
それは……食料の値上がりだ。
世界的に好景気=懐が緩くなるわけだが、まず1番最初に影響が出たのは食料だった。
よく働いてよく食べる。これは人間の、というより動物としての基本。
そして人間はよく食べる上に良い物を食べたがる。
食料自給率が全世界的に低下しているのに良い物なんて食べれるわけないのに大騒ぎしている。
この影響で日本の食料が需要が上回り、軒並み値上がりして特別地区にも波及していて問題となってきている。
随分前から特別地区は日本食ブームだと言ったが、今では『ブーム』ではなく『文化』として根付いたと言ってもいいぐらいの浸透っぷりで、家庭料理に肉じゃが、味噌汁、お漬物が並ぶほどにまでなっている。
ここに来て特別地区の平均年収が低いこと、まったり労働が仇となり、このまま日本産の食料は高級品となった場合、半年後には中間層がイベント時に食べられる程度にまで落ち込むと予測された。
代用としてベトナム、アメリカ、オーストラリアなどから輸入をしてなんとかしようとしているが1番の友好国、と言うより属領であるベトナムなどは特別地区と環境的に類似する作物が多くて輸入はあまり意味がないんだよなぁ。
「農畜産部からコロニー産ブランド牛の開発が上がってきてますよ」
「そう簡単にはブランド化なんてできないだろ。確かコロニーで牛を育てると何らかの原因でストレスが掛かってあまり美味しくないと聞いたけど」
それにそんなことができるならジオンが真っ先にしてるだろ。
「色々研究した結果、重力を若干上げたことでその謎だったストレスが解消されたそうなんですよ」
「……マジで?」
「はい、どうやら動物は重力が若干重い分には筋肉が付く程度で精神には作用しないようなんですが軽い分には脂身は多くなり、ストレスが掛かるようなんです。その原因は不明ですけど美味しく育つならいいですよね」
これは革命が起きるやもしれん。
牛が大丈夫なら豚や鳥なんかもイケるかもしれない。
そうなればコロニーで畜産業が盛んに行われてコロニー産食品の批評を止めることができるかもしれない。
「内密に開発を進めることで許可する」
「マリオンズを1人付けておきますね」
マリオンちゃんも重要性が理解できているようで何よりだ。
これはジオンに対して強い外交カードとなる可能性がある……まぁ自力で気づくかもしれないけどな。
「それにしても人間の食料を考えるのは面倒だな」
「本当ですねぇ。私達と同じなら面倒も少ないんですけど」
そう言って袋詰してあるαタイプ(ジェニス)のプラモを喰う。
肉まんウマス!
やっぱり寒い季節には肉まんだよなぁ……特別地区には寒い季節なんてないけどな。もっと言えば俺達に気温って関係ないけどな。
「じゃあ私はアプサラスIIIを頂きます」
抹茶エクレアか、アプサラスIとIIが何味なのか気になるから1度作るよう頼んでみるか?
4月になった。
そして今俺の目の前には涙目のセラーナがいる。
「むぅ」
涙目で剥れている。
そして俺の隣でマリオンちゃんズが超良い笑顔で祝杯を上げている。
何があったかというと……
「セラーナ、いい加減にしないか。せっかくハーバード大学に合格したからとパーティまで開いてくれたんだぞ」
そう、はにゃーん様が言ったようにセラーナはハーバード大学に合格したのだ。
それは同時に特別地区から離れることを意味しているわけで……つまり、自意識過剰でなければ俺と別れるのが寂しいということだろう。
そしてマリオンちゃんズは恋敵がいなくなるので盛大にパーティを開催したわけだ。
全く、セラーナも受験したならわかっていただろうに……そしてマリオンちゃんズは大人げないぞ。
「「「「すみません」」」」
にやにやしながら謝ってもなんの意味もないから。
「それにしてもこんなに惚れられてるなんてブルーニーは色男……男?……だねぇー」
「ふん、結局結婚するかどうするか決めきれないシーマ様に言われたくないわ」
「うぐっ、そ、それより父親としてあんたはいいのかい」
あ、逃げたな。しかもとても面倒くさそうな方向に逃げやがった。
「良いわけがない。マレーネは役職上、自由な結婚はできそうになく、ハマーンは色々とアレだ。唯一普通に自由ができるセラーナがまさかブルーニーとなどと……」
「ちょっと待て、父上。私が色々とアレとはなんだ。そこのところ詳しく聞かせてもらえないか」
「いや、それは……」
「ハァ、私はやっぱり自由に結婚できないのでしょうか」
カーン家も色々と大変だな。
そういう意味ではシローとアイナが1番安定して——
「シロー!この名刺はなんですか」
「いや、それは、サイド6の役員皆と打ち上げに行った時のキャバクラの——」
「浮気!?浮気ね?!」
……マリオンちゃん?
「セーフです。浮気じゃないみたいですね。やましい気持ちは感じられません」
「ならアイナが一通り怒った後で教えてやれ」
「わかりました」
うん、どんな家庭でも問題は大なり小なりあるよな。
「ほれ、撫でてやるからちょっとは落ち着け」
いい加減居心地悪いから機嫌を直すため手を伸ばすと——俺がいつの間にか壁に埋まってた。
まぁ、こんな現象にも慣れてきたよ。俺。
「マリオンちゃん、こんな時ぐらい——」
「浮気ですか?浮気ですね?ギルティ?ダウト?」
ヤンデレ過ぎやしないかい。
「うーむ……じゃあマリオンちゃんはこっち、セラーナはこっちな」
壁から抜け出し、椅子に座って一考。
2人を手元に引き寄せ、膝の上に乗せて同時に頭を撫でる。
セラーナは満足そうであったがマリオンちゃんズはすっごい不満そう……だが、しばらくすると溜息をついて、仕方ないなぁと俺の首に手を回してゴロゴロと喉を鳴らすようにすり寄って来た。
「……気のせいか?ブルーニーがいつもより大きい気がする」
ギニアス、鋭すぎるだろ。
実は2人を抱えるにはサイズが小さかったから少し大きくしたのだ。
これからは気をつけないと。