第二百四十四話
モンシアを除く不死身の第四小隊が入隊したことによってあることが実現した。
それは黒い三連星と不死身の第四小隊(モンシア抜き)のエース級小隊同士の対決だ。
今までも臨時的に模擬戦はやっていたが、それはあくまでクローン兵の教育として行ったものであり今回はガチに勝敗を競う。
大体のエース級はモビルスーツが運用されるようになってから単機行動が多い。
戦闘機以上に個人の技量が戦闘を左右するから仕方ない面もあるし、死神の陽炎に限って言えば傭兵という性質上仕方ないが、正規軍も兼ねた組織なので部隊運用を重視したいところ。
今までは黒い三連星が手本となって教育してきたが、やはり熟練のパイロットの小隊同士の模擬戦を行いたかった……まぁ原作とは違う黒い三連星だけどな。
はにゃーん様やクリちゃん、リリーナの三人も小隊といえば小隊なんだが……個々の技量が飛び抜け過ぎて参考にならない。
他にもクローン兵や養殖ニュータイプ達の小隊もあるが、やはりニュータイプ同士の戦いとなるとオールドタイプを相手するのとは違う動きになるため、サポートハロのデータ蓄積がうまくいかない。
死神の陽炎にもオールドタイプの兵士ぐらいはいるんだけど……目ぼしい人材は養殖ニュータイプにするから練度はお察しなんだよな。基本は砲撃用モビルスーツによる支援が目的とした部隊ってのもあるけど。
「それにしてもなんで私達のモビルスーツはジムカスタムなんだ」
「俺の趣味。中身はαタイプだから最新機とそう変わらない……はずだ」
実はアプサラスシリーズとサイコタイプに頼り過ぎて汎用モビルスーツの開発がイマイチ。
R・ジャジャとαタイプをミックスして新型機を開発しようとしているが正直必要性を感じないので捗らない。
しかしだからと言ってサイコタイプで統一しようものなら不死身の第四小隊を完全に模擬戦相手にするか、養殖ニュータイプにしてデータ取りを諦めるか……微妙なところだ。
コスト的には養殖ニュータイプにする方が安いが、エース級小隊なんてレアものだしなぁ。
ちなみにジムカスタムにしたのはもちろん原作の再現だ。
疑問には思っているようだがそれ以上は何も言わず、コクピットに乗り込むバニング達。
さて、どんな戦いを見せてくれるのか、楽しみだ。
まぁ黒い三連星の勝利は揺らがんだろうけどな。じゃないと養殖ニュータイプ、いや、死神の衣の名と共にお前達がリアルで泣く事になるぞ。
『では、カウントを始めます』
今回の模擬戦のステージはジャングル……と言うか、特別地区もベトナムもインドネシアも基本的にジャングルが多いので自然と選択肢がジャングルになってしまう。
黒い三連星のモビルスーツはジェニス型αタイプ、サイコタイプを使うとあまりに一方的になるためハンデだ。不死身の第四小隊には伝えてないから後で怒るかもしれないな。
黒い三連星は模擬ビームライフル、不死身の第四小隊は模擬マシンガンを装備している。
死神の陽炎の強さを知っている不死身の第四小隊は攻撃力より当てることを重視した選択となった。
ビームマシンガンもあるが、あれは模擬戦で使うと殺気もない模擬戦だと普通レベルの養殖ニュータイプも回避できないのでさすがに厳しいということで無し。
「始まったか」
お互いセンサーに掛からない距離からスタートしたから、しばらくは探り合いだ。
そして初動から差がでた。
黒い三連星はスピード重視で索敵するのに対して不死身の第四小隊はゆっくり進み、警戒を怠らない。
やはり養殖ニュータイプとオールドタイプの差が大きく出たか……いや、元々連邦は物量戦がお得意戦法だ。
物量戦ならばゆっくり押し潰すやり方の方があっている気もする。
「さて、接触したか」
両チーム共にほぼ同時に気づいた。
射程の関係もあってすぐに撃ち合いとはならない……というのはニュータイプではない場合だ。
黒い三連星は早々に照準を合わせ、引き金を絞る。
それを読んでいたかのようにシールドに身を隠して凌ぐバニング達。
普通なら今の攻撃で決着がつくだろうが、相手が死神の衣の上位という情報を得ているバニング達はこの程度で撃破されることはないようだ。
シールドに身を隠し、ビームを受けつつ前進してマシンガンの有効射程に入ると反撃を開始する。
しかし反撃が始まる間に黒い三連星は固まって移動していたのを分散したことにより、狙いが絞れずに初弾が命中することはなかった。
「これがニュータイプだよなぁ」
相手が動こうとする意図を先に察する力である以上、こういう展開が多くなる。
アデルとベイトは敵の動きについていくのは大変そうだが……あれ?バニングはついていってる?
「ブルーニーさん……やっぱり忘れてたんですね。バニングさんはニュータイプとして覚醒間近って伝えましたよ」
…………
………
……
…
そういえば、言ってたな。
だめじゃん!
この模擬戦はオールドタイプのエース級で構成された小隊のデータを取るためのものなのに……ハァ。
まぁ、後2人はニュータイプってわけじゃないから多少は意味があるか。
分散して翻弄しようとする黒い三連星、集中して戦おうとする不死身の第四小隊。
兵法的に言えば集中運用が正解だが果たして。
「マシンガンは1、2発じゃ致命傷にはならないけど、回避するとなると動きが制限されるな」
「対死神の衣ビームマシンガンが開発されているという噂もありますから注意が必要ですね」
さっきも言った通り死神の衣にはビームマシンガンが有効だ。
死神の衣より下位であるクローン兵にも同じことが言える。
それが目の前で改めて証明されている。
分散して戦う黒い三連星の1機が集中的に狙われて数発頂いている。
判定は左腕損傷とまだ致命的ではないが死神の衣の上位である黒い三連星が負傷させられるというのは腕がいい証拠だ。
まぁ当たった弾は全てバニングのものだからオールドタイプのヒットとはカウント出来ないが。
「と言うかもしかしてバニングのニュータイプとしての素質ってそこそこあるのか」
「感覚的にはそれほどではないと思いますよ。今回の戦果は周りの2人との連携が上手く行ったからみたいですし、本来の目的は達成できませんでしたが少しは果たせたみたいですよ」
「ふむ……ところで俺とバニングのニュータイプレベルはどっちが上なんだ?」
「……………………」
無言でいい笑顔を向けても誤魔化せないぞ。
むしろ答えを言ってるようなもんじゃん。
くそ、早くサイコミュを発展させてレベルを上げてやる!
結局勝敗自体は黒い三連星の勝ちとなったが黒い三連星も更に損傷を受け、小破判定が出ていた。
以前と今のバニングの指示の仕方が違い過ぎてアデル達との連携が完璧とはいかなかったとも言っていた……つまりこれ以上強くなるわけか。
ふむ、ニュータイプが1人混ざるだけでここまで変わるものなのか。
そういえば指揮官型のナチュラルニュータイプは数が少ないから、これはこれで貴重な人材じゃないか。
はにゃーん様はブートキャンプ経験者でもあるからナチュラルかどうかは微妙だし、アムロはすっかり開発畑だし、クリちゃんは養殖だし……うん、使い道ができたな。