第二百四十七話
<マリオン・ウェルチ>
最近私の存在が薄くなってきている気がします。
「いや、マリオンちゃんは圧倒的存在感を放ってるって」
ブルーニーさんが何か言ってますが今回に限りスルー。
最近セラーナちゃんがガンガン乙女力を高める時です。
「どちらかというとヤンデレ力とかストーカー力って部類になる気もするけど」
「乙女のストーカーとヤンデレは純愛なんです!」
「……まぁ全ては否定すまい」
よろしい。
そこで私も乙女力を高めようと思います。
「いや、無理しなくていいぞ」
無理なんてしてません!
「でもさ、具体的乙女力ってどうやって高めんの?というか女子力と違うのか?」
「女子力というのは男性が身につけても問題ない範囲のことで乙女力は男性が高めるとオネエになります」
「……なるほど」
まぁ私が勝手に決めたことですけどね。
「まずは手始めに毎日感謝の正拳突きを1億回やろうと思います」
「いや、それ乙女力じゃなくてネテロ力とか漢力だろ」
あれ?間違いましたか?
「……確かに女子力と乙女力が低下してるかもしれん」
「ガーン」
(真剣に言ってるあたりかなりマズイような……最近筋トレのし過ぎで脳筋になっちゃってるのか?)
どうしよう……ブルーニーさんが呆れてる?!
これは本格的にピンチで危険かもしれません。
「ちなみにマリオンちゃんが乙女力とやらを高めるためにやろうとしてることは?」
「他にはサバイバル術の見直し、CQCと合気道の修得、モビルスーツ解体術の開発でしょうか」
「どれも乙女力と正反対だろ!」
そんなまさか……特にモビルスーツ解体術は素手でモビルスーツと渡り合うためのもので必須ですよ。
私が編み出したこの術をマスターすればアプサラスでも1分も掛からずに解体、もしくは無効化できるという画期的な——
「1番推しちゃいけないやつだからな。マリオンちゃんズ以外誰もできないからな」
なん……だと?!
気合が足りません!気合が!
「どこのアニマルだよ。漢力を高めてどうする。……とりあえず無難に料理でも作ったら——」
「私達は食べられないのになんの意味が?」
「……そうだな。プラモを料理なんてできないし、俺が悪かった。ならおしゃれとかどうだ」
なんというか……すごく普通です。
「普通じゃなかったら乙女力って言わないだろ。むしろ変態力とか化物力とか戦闘力っていうんだ」
「戦闘力……たったの5か、ゴミめ」
「いや、ネタはいいから」
すいません。この前はにゃーん様が久しぶりに発作を起こしてましたから、つい言いたくなりました。
「おしゃれと言っても色々ある……そうだな、マントとかどうだ」
「私がいうのも何なんですけど、なんでマント?」
「マリオンちゃんズなら単独でムササビの術とかできそうだなぁとか思ってないぞ」
本音駄々漏れですから、それに乙女力関係なくなってますよ。
全く、人のこと言えないじゃないですか……でも——
「ブルーニーさんが見たいというなら吝かではありません」
空を歩く前に空を飛ぶ、正確には滑空ですけど……をするのもいいかもしれません。
多分思いっきりジャンプすれば必要高度まで行けますからどこでも使えそうです……問題は走った方が早いから移動に使うメリットはないことでしょうか。
「さすがマリオンちゃん。期待してる」
ブルーニーさんが期待しているので言わないでおこう……でも、タイガーなマスク的マントは嫌ですよ。
大阪のおばちゃんみたいですから。
「よし、それはそれでいいとして……うーん、おしゃれ……おしゃれねぇ?」
「ブルーニーさんは化粧とか過剰に着飾ったりするのは嫌いでしょう?」
「あー、まぁなぁ。素のままで十分美人なのにわざわざ化粧する必要ないしな」
もー、美人とか……口が上手いんですから!
「肌荒れとかはヒーリングでどうとでもなるからスキンケアとかも必要なさそうだし」
ですよねぇ。
正直ニキビ1つもできたことが……というより、この体で時間の流れを感じるのは髪ぐらいですからね。
……くっ、胸部装甲の強化も全高の強化もされないんですよ。
無念。
「補正ブラでも——」
「ちょっとデリカシーがないんじゃないかと思ったり思わなかったりしちゃったりしなかったりするんですがそのあたりどうお考えでしょうか?」
「悪かった。悪かたからそんな冷めた目で俺を見ないで」
まったく、あのようなものに頼るほど私は落ちぶれていません。
それに使うなら自作します!
「まぁ服は自分で作れるもんな。出来て不思議はない……まぁ、そもそもマリオンちゃんだって貧乳というほど小さいわけではないし」
「そう、私は普通のサイズなんです。だからコンプレックスなんて抱いていません!」
「ダウト」
はい、嘘つきました。
「さて、本筋に戻すとして……マニキュアとかどうだ。派手な奴じゃなくて透明感があるやつとか」
「なるほど、文字通り爪先までおしゃれしようというんですね」
ファンデーションすら嫌がるブルーニーさんですが爪先ぐらいならいいということでしょう。
恋敵であるセラーナちゃんもそのあたりは気をつけているようで化粧はせずにスキンケアやUVカットに気をつける程度でとどめてますからね……よくブルーニーさんのことをわかってる強敵です。
まぁ……それでも肌荒れなどを治すためのヒーリングぐらいは掛けてあげてますけどね。
狭量な自分を改善する一環ですが、だからといって浮気や妾を認めたわけじゃないですよ!
一部の特等席(膝の上)が取られましたが真の特等席(コクピット)は譲りません。
「では早速マニキュアを買いに行きましょう」
「だな」
「あ、香水とかもどうですか?あまりキツイのは嫌ですけど物を選べばいい香りでしょうし」
「マリオンちゃんのいい匂いがしなくなるから却下」
「……変態」
「ぐはぁ……否定はしないが」
ま、変態も愛情表現の一種ですよね。
「よし、せっかくだからアクセサリーも買うか。エディットで再現できるとはいえ買うのも醍醐味だろ」
「服との差がわかりませんけど、ブルーニーさんがそう言うなら……ハッ?!これは婚約、いえ結婚指輪ですか?!給料3ヶ月分ですか?!」
「いや、俺の給料3ヶ月分とか多分特別地区内にそんな指輪ないからな。ティアラとかならあるかもだが」
「その気になればダイヤモンドなんて石炭を熱しながら握れば自作できますしねぇ」
「……そんなことまでできたのか」
工業用ダイヤなんかを遊び半分で作ってたりします。
だからダイヤよりは別の宝石を希望します。
「なら琥珀とか真珠の方がいいか」
「真珠は養殖もできますから琥珀がいいです」
ただ、アレって蜂蜜にしか見えないのが難点ですね。