第二十五話
さすが連邦の本拠地、防衛力が半端ない。
基地に入って早々ジム改6機、懐かしの61式戦車3両を片付けて(食材的にも)少し前進すると同じ編成の部隊が現れて片付けるとまた少し前進すると同じ編成——というループを5回ほど既に繰り返した。
実は今回分かったことがある。
俺達の食事に関してだが口あたりでしか食べれないと思ってたんだけど身体全体で食べることができることが判明した。
ただし口以外だと味がわからない上に燃料効率が落ちるっぽいが食事の時間が短縮されることが今は重要なので妥協することにする。
それとなぜか生き物がいると部分的にすら食べれないことも分かった。
まぁそれができたら接近戦用の武器が要らなくなるな。
「うげぇ、こんな時にか」
「新型のジムですね。しかもなんだか強そう」
そのモビルスーツの名前はジムカスタム、0083を見てバニング大尉の操るのを見て好きになった。
「が、今は関係ない」
ビームサーベルをコクピットに突き立て——れなかった。
まさか反応できるとは思ってなかった——ってあれ?
「おい、こいつら」
「間違いありませんEXAMシステムです。ただ私は居ないみたいですけど」
そういやまだ3号機が残ってたな。つまりそれを量産したのか——
「おい、なんか味方同士戦い始めたぞ」
「私の存在がなければEXAMシステム単体だと強いものと認識した全てが敵と判定されるんです。まだ克服されてないようですね」
なんという欠陥品、まさか連邦がこの欠陥を気づいてないとは思えない…あれか、俺達を恐れるあまり欠陥品を持ちだしたってことか?
「面倒だけどこれなら楽勝かな」
まさか攻撃力上がるけどバーサク状態とは思いもしなかった。
なんにしてもEXAMシステムが実用されなさそうでよかったよ、これ以上ジオン劣勢は困る。
12機いたモビルスーツの内3機がジムカスタム、残りはジム改だったんだけども…瞬く間にジム改が斬り伏せられた。さすがEXAMシステム、伊達じゃない。
残ったジムカスタムが暴れてるところを背中からブスリッと。
所詮暴走してるだけのモビルスーツ、正対してるならともかく後ろには目がないから楽なお仕事です。全天モニタの導入はまだみたいだな。
後2機か、でもEXAMシステムを積んでるって分かったからどうとでもなる。
モビルスーツって白兵戦もできる万能兵器ではあるんだけど——
「蹴りなんて普通は使わないからなぁ」
そう、マリオンちゃんがいないEXAMシステムはただのCPU、想定した行動には恐ろしいほどの強さを発揮するが俺達は普通とは違う。
ローキックで脚を砕いて重心を崩しビームサーベルでコクピットを貫く、EXAMシステム自体は頭部に設置されているがコクピットがなくなっても動けなくなるらしい。
もう1機も問題なく撃破する。
「ジムカスタムの味は——チキンのバターソテーか、美味い。ジム系は鳥系の味が多いのか」
「ジム改はなぜタルタルソースなんでしょう。あ、私達のジェネレーターの出力上がりましたよ。どの程度意味があるのか謎ですけど」
武装追加がズゴックのクローだけだからわかんないけど、他の武装が追加されたら必要になる…かもしれないぞ?
それにビームライフルの威力が上がるんじゃ…いや、ビームライフル自体の性能が上がらないと無理か。
そもそも俺達が使ってるビームライフルは試作品であり、現在の連邦が使ってるビームライフルより性能が劣る。
なにより食事での進化はズゴックの爪以外は今の所ない。
内蔵武装の進化はするが外部武装は進化しないのか、はたまた別の条件があるのか…あ、そういえば他の武装を使おうと思ったことなかったな。なんという間抜け。
まだ食べてなかったジムカスタムのビームライフルを手に取ってみてみると——
「装備されてやがる」
「無意識に武器を乗っ取ってるみたいです。これで武装強化は楽でいいですね」
それでいいのかなぁ。
都合が悪い訳じゃないからいいか、試しに1発…燃料の減りも変わった感じがしないのはメイン武装は共通消費なのか、それとも新旧のビームライフルにそれほどの差がなかったのか、色々検証しないといけないな。今じゃないが。
「出力、収束率、速射性、連射性、どれをとっても私達が持ってたビームライフルを上回ってますね」
「だな。戦争って本当に技術の進歩を早めるな」
「主に私達のせいな気もしますよ。ブルーニーさんの話を聞く限りでは」
「HAHAHA、何のことだいマリオンちゃん」
「別にいいですけどね」
さて、新しい武器を手に前進。今まで使ってきたビームライフルは胃袋(異次元)に収めてアムロとシャアが戦っているであろう戦場へ向かう。
アムロのガンダムからNT-1やシャアのザクからズゴックEなんかと比べると何という微々たる強化だ。
ちなみにアムロ達が戦ってるであろう位置は爆心地をソナーで特定して進んでいるので多分間違ってない…はず、いやマリオンちゃんが言ってるんだから間違いない。
ジム改、時々ジム・クゥエル、稀にジムカスタムを撃破しながら進むと——
「おお、ズゴックにハイゴッグがいっぱい!夢のようだ!」
「しかし現実は非情である。現実を見ましょう」
「聞こえない見えない感じない」
「現実逃避してても駄目ですよ」
ですよねー…目の前にアムロ、つまりNT-1が立っているんだわ。
このまま真正面から戦うとどうなるか分からんし、
ならば!
「えーこちら実験大隊所属ブルーニー中尉だ。こちらに赤い彗星がいると聞いてきたんだが」
赤ずきんちゃんの狼作戦。
俺の顔はガンダムタイプだし信用されるだろう。
『さっきまではいたんですけど逃げられました』
よし、疑ってないな。
「そうか、それなら仕方あるまい。君はこれからどうするのかね」
『僕は一旦ホワイトベースに帰還しようと思います』
「わかった。私はまた襲撃があってはいけないのでここにいるので君は安心して帰るがいい」
と言うか早く帰れ。
『了解しま——』
『アムロ!そこの青いモビルスーツは噂の蒼い死神だ!!』
『え?!』
だーーーーーーーー!なんでよりによってこのタイミングで出てくるかなカイ・シデン!それとジムキャノンIIに乗ってたのはやっぱりお前か!
くそ、アムロだけでも面倒だというのにカイまで…その隣にはもう1機ジムキャノンIIと無印ガンダムが並ぶ、パイロットの候補はリュウ、ハヤト、セイラの3人にジャブローで補充されるスレッガー、ジョブ・ジョンも候補に入るな。
俺達の異名は前線じゃないジャブローにも知れ渡っているらしい。
すれ違おうとしていたアムロは反射的にだろうがビームライフルをこちらに向ける。
「カラコン挿入」
『EXAMシステム、スタンバイ』
「これまでにない戦いが今ここに始まる!」
「スポーツとかアニメとかじゃないからな」
マリオンちゃんはいつでも絶好調だ。
ビームライフルを払いのけて俺達自身もNT-1に向き直り、牽制程度にしかならない胸部バルカンとミサイルランチャーを発射する——が見事に躱される。
反応はえぇ〜なんかキモいぞ。
俺達もこんな風に見えてるんだろうか。
「ガンキャノンなら速攻で倒せるのにジムキャノンIIだとシールドがうざい」
アムロと射撃合戦になったがやはりニュータイプ同士(俺は仮だけど)の射撃ではほとんど意味がないので若干アムロの回避行動をある程度コントロールして後ろにいるガンダムやジムキャノンIIを狙ったんだが、さすがと言うか見事に防がれた上に倍返しされました。
お前らは半沢でもシローでもないだろ!
「なんか知らんけどカイともう1機のジムキャノンIIにも若干EXAMシステムが反応してるあたり微覚醒してるっぽいし——面倒過ぎる」
EXAMシステムは囁き程度だが確かに反応している。ということはもう1機のジムキャノンIIはハヤトかな。
無印ガンダムに反応しないってことはリュウ、スレッガー、ジョブ・ジョンのどれかか…リュウかな?ジョブ・ジョンやスレッガーなら2人共出撃してくるはずだし。
「無双してただけあって強いな。荒削りだけど」
「正規の訓練を始めてあまり間がないんでしょうね。さっきから共鳴でわめき声がうるさいですし」
むう、うちのマリオンちゃんに手を出すとは許せん!
『な、なんだこの汚いプレッシャーは?!』
「よし、お前死刑」
「最初から殺すつもりで戦ってるでしょ」
その通りでガス。
アムロって物語を終息させるには必要だけど戦争を継続させたり起こさせたりする意味的には大した役割になっていないと思うからここで始末しても問題ない…はず。
実際Zとかにはエゥーゴ入り…正確にはカラバだけども…したけどほとんど出番はなく、結局次に現れたのは逆シャアだからなぁ…必要なさそう。
「でも、倒すのは難し——そう——だなっ!」
接近戦に持ち込んでみたが接近戦は圧倒的に俺達の方が有利だ。
いくらニュータイプでもモビルスーツが身体の俺達に動作の速さで上回れるはずはない——が、決定打には届いていない。
膝を砕こうとローキックをすれば退いて躱し、コクピットを殴ろうとすれば腕でガードする。
至近距離でバルカンを撃ち込めば当たるが致命傷にならないように装甲が厚い部分で受けるように操っているっぽい。器用だな。
『おいおい、アムロが押されてるぞ』
『接近戦じゃ分が悪い。離れてアムロ』
チィッ忌々しい、カイ達の武装がいつの間にか実弾兵器に変わってやがる。
ビームライフルなら連射性が悪いので綺麗に躱すことができるが、それに較べてマシンガンの威力は劣るが連射性に優れていて全てを躱しきるには攻撃を止めないといけないので地味にダメージを蓄積されていく。
とは言っても致命的なダメージではない、装甲やシールドが凹めば治すのに燃料が消費されるから本当にじわじわとダメージがあるのだ。
接近戦で決めきれないなんてやってらんねー。
もしかしなくても俺達…いや、俺のレベルアップしないといけないってことかね。
戦い方は自己流、遊び半分だからな。ザクのシャアを倒したのに楽観視し過ぎたか?たかがザク、しかもよく考えれば地上用じゃないザクに乗ってるシャアだろうが。
こりゃ気を引き締めなくちゃ——
『EXAMシステム、120%起動します』
「なんじゃそりゃ、マリオンちゃん知ってる?」
「いえ、私も知りません……あ、もしかしてさっきEXAMシステム搭載のジムカスタムを食べたからじゃないですか?」
あ、それでパワーアップしてるわけ?
めっちゃ身体軽い、だがこの感覚…絶対部品痛が待ってるな。
「その腕、いただく」
『プレッシャーが——動きが速く——ッ?!』
「肩から斬り落とす予定だったのに肘からかよ。パワーアップしてこれってアムロ、どんだけー」
あ、間合い離れちゃ——イテテテ、マシンガン地味に痛い。どれぐらい痛いかって言うと全力で水風船投げられるぐらいいたい。
おや、アムロと合流したら撤退していったか、疲れたー———ウガガガガッ身体が——
「い、痛いです。身体が痛いですぅ」
「マ、マリオンちゃんもか」
今まで身体の痛みは俺だけの痛みだったが今回の痛みはカラコンを外してもマリオンちゃんも痛みを感じるようだ。
「少し休めば治るかな」
「そうですね休みましょう。カニ食べながら」
「……食いしん坊」
「なっ?!」