第二百五十二話
サイコミュによる分割機体制御をサイコミュ制御システムと命名、単純だけどわかりやすくていいだろ。
今まで以上に追従性が良くなったが、パイロットへの負担も大きくなるのでファンネルのように無線型で制御できるのはマリオンちゃんズのみ、そして作りようによってはターンXのように全身分離機能も実現できる……どんなメリットがあるのかは甚だ疑問ではあるが。
汎用性(ニュータイプ限定ではあるが)を持たせるとなると有線式で、追従性は上昇するものの無線式に比べると劣るし全身分離が不可能、その代わりジオングのアームのように飛ばしたりはできる。
……ただし、この技術には問題がある。
それは……推進剤が各パーツに依存する、ということだ。
独自に運用するとなると各パーツに推進剤を載せる必要があるのはわかると思う。しかしそうするとタンクの重量や積載量の制限などが壁となり、稼働時間が短くなるということ。
そして……無線型の場合は万が一、盗聴されて行動が先読みされる可能性も無きにしもあらず。
ファンネルが先読みされたところで手札が減るだけだが、機体の動きが先読みされたらさすがにマリオンちゃんズでもやばい……はずだ。
つまり、色々と問題が山積みな技術で、すぐに応用は出来そうにないということになった。
「それにしてもやっと食の聖地がやっとまともに運営され始めたな」
「長かったですね。かれこれ4年も掛かりましたよ」
法整備とか利権調整とか利権調整とか利権調整とか大変だったなぁ。
何処かの魔法を使う道化師がマスコットのハンバーガーショップや某牛丼チェーン店、回転する寿司屋などが出店しようとするんだもんなぁ。
チェーン店も1つや2つならいいけどさすがに10を超えると、それは食の聖地なんて呼べるものではない。
一応高級志向の店も構えるという話だけど……どう努力してもチェーン店はチェーン店、ファーストフードでしかない。
「まぁそもそも宇宙にまで来てファーストフードを食べたいのかねぇ」
「とは言っても無くても困るんですよね」
扱いに困る奴らだ。
せめて国内限定チェーン店とかだったらまだ言い訳も立つんだけどMなハンバーガーとか世界規模だし。
「でも日本の高級料亭とかフランス、トルコ、中華の3つ星レストランが入ってくれて良かったですね」
「おかげで随分高性能な輸送船を作るはめになったけどな」
鮮度命!とか言って冷凍せずに高速船で食材を運ぶことが条件に付け加えられた。
コロニー産の食材は中小規模の飲食店で使われる契約になっているが、これもまとめるのに苦労した。
やはりというかコロニー産の食材は不人気は根強い。
一応無農薬だから無駄に無農薬が好きな日本には一定の需要があることは救いだが、最近は韓国が偽装して問題になってるからなぁ……誰だ、自業自得って言った奴は!
「輸送船もですけど、数を増やさないといけなくなった方が問題ですねー」
「また人材がorz」
またまたクローン兵の追加生産が決定している。
今度の生産で10000人になる予定だ。
オタクの聖地の住民の労働力だけでは補いきれなくなったから苦肉の策だ。
もしこの好景気が終わるようなことがあればクローン兵は火星送りにするか?あっちには仕事なんて腐るほどあるからな。
「リゾートコロニーの建設が終われば更に増やさないといけませんけどね」
そうだった。
12月(現在9月)にはリゾートコロニーが完成する予定だったな。
更に仕事が増える……今からクローン兵を更に増産した方がいいだろうか……とりあえず15000までは増やすか。
「死神様〜」
「死神様〜」
「死神様!」
「死神様!!!!」
なんかひたすら死神死神と連呼されてます。
これが何かというと……第1回死神教集会である。
俺が遊び半分でやってる公式ブログで死神教の話に触れた際に——
「いっそ、集会でも開くか」
と書いてしまったことが運の尽き、まさか1万通を超える要望メールが届くとは思わなかった。
ちなみに1万通というのはあくまで届いた数だ。
実は回線が混雑したようで全ては届かなかったようなのだ……死神教信者はいったい何人いるんだろうな。
これほど熱狂的に要望されると集会を開くのも怖いが、何もしなかった時はもっと怖いので仕方なく集会を開くことにしたわけだ。
口は災いの元とはよく言ったものだ。本当に昔の人って凄いよな。
まぁ、死神様と言っても俺ではなくマリオンちゃんが持て囃されているんだけどね。
俺はモビルスーツサイズでご神体役をしている。
面倒を全部マリオンちゃんに丸投げしたわけじゃないよ?本当だよ?
「皆さん、よく集まってくださいました。司会を努めさせてもらいますマリオン・ウェルチです」
「「「「「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉ」」」」」
マリオンちゃん人気、ここに極めり。
拍手と歓声、そして次第に何かに気づき、鎮まり、拝み始める。
本当に宗教っぽいんですけど。
「突然の集会でしたので特にイベントを用意しているわけではないのですがこういう物を用意してみました」
取り出したのはステッカーとお守りだ。
察しのいい人はこの段階で大体予想がつくだろう。
「このステッカーはモビルスーツに張っていると私やナンバーズ……いえ、この場では分家様と言いましょうか……に攻撃されない、つまり軍人さんにおすすめするステッカーです」
会場がざわつく、思ったより反応があるな。
まさかそんなに軍人がいるのか?他国の軍人なら大体は戦ったことがあるから思うところはないのだろうか。
それとも特別地区の軍人……はそもそもこんなステッカーはいらないな。コレクションにするなら考えるけど。
「ただし、攻撃してきたらその限りではないので注意してください」
ちなみにこのステッカーは一括払いで家より高かったりするが売れるのかね?
「このお守りを持っていればどんな持病、難病でも瞬く間に改善、更にはアンチエイジング効果もありマイナス2歳は保証します。ただし、事故事件などの突発的なものは対象外ですのでご了承ください」
更にざわつきが強くなった。
まぁ普通に考えれば持つだけで病が治るなんてよくある詐欺話だよな。
しかも値段は乗用車と同程度の値段だ。売れなくても不思議ではない……いや、さすがに俺達のネームバリューがあろうともこっちは売れな——
「私、買うわ!」
「俺も買うぞ」
「拙僧にもいただけぬだろうか」
……思った以上に売れてる。
俺や幹部達ならヒーリングがあると分かっているから金を出すこともあるだろうが普通の人間が……ねぇ?どんな神経してんだろ。
ステッカーは売店で、お守りはマリオンちゃん直々に売ることがわかって更に客が増えた。
これは宗教というよりアイドルのファンか?
たまにマリオンちゃんにしつこく触ろうとしてそのままセクハラに及ぼうとくだらんことをやらかそうとしたが、その触られる前にマリオンちゃんに軽く肋の骨を折られていた。
これがSDサイズなら俺のビームライフルが火を吹くところだったぜ。