第二百五十六話
人工雪降らしてみた。
降ってる途中から水になった。
「……」
「……」
「……」
「……」
「どうします?」
「どうしようか」
やはり野外で雪景色というのは無理があったか……まぁ、やる前からわかってた。
わかってはいた、わかっていたが夢を見たかったんだっ!
「仕方ない、モビルスーツ運搬用コンテナに溜めるか」
「断熱もしないとですね」
チッ、せっかく野外でホワイトクリスマスだ!と思ったのに。
「まぁ、この機会にウインタースポーツが流行ればリゾートコロニーの観光客も増えるはず」
雪まつりだけでなく、スキーやスノボーで遊ぶことも可能にする予定だ。
南国の島であるニューギニアでどの程度需要があるかわからないが。
「私達が推奨しているものが流行る傾向がありますから大丈夫ですよ」
情報操作なんてしなくてもそこそこ広告を出すだけで不利益でもない限り、民衆はこちらの意図通りに動いてくれる。
これは特別地区の民衆が流されやすいのか、それとも俺達に逆らわないように意識して動いているのかは不明だがな。
「皆で雪合戦しましょうね!」
……キラキラ目を輝かせているが……マリオンちゃんズと戦うのか?
軽く屍の山ができることが想像できる。
今となってはマリオンちゃんズはSDサイズだと俺より強いし……サイズが変わっても怪しいということは男の意地で内緒だ。
と言うか皆って幹部連中や死神の衣も含んでる?皆拒否しそうだけど……まぁそこは強制参加させれば問題ないか、逃げたらリアル鬼ごっこが始まるだけだし。
「楽しみですねー」
雪まつり当日。
うん。
幹部に雪合戦の参加を言いつけると皆顔色が悪くなった。
ナンデダロー?
逃げ出したゼロの隣には俺の近くにいたはずのマリオンズの姿が……瞬歩ですか?もしくはZ戦士達の高速移動?
「嫌だ。絶対死ぬ!無理!」
「大丈夫です。即死でもない限りは死にませんから」
リビングデッドの呼——じゃなくてヒーリングですね。わかります。
なんて場面があった。
ちなみに事前にデータを集めたらマリオンちゃんはメジャーリーガーなんて鼻で笑うほどの速度が出ていた。
それでいて球技が苦手なんだそうだ。
手を離すタイミングがイマイチらしい……うん、人間でない俺ですらわけがわからない世界だ。
「でも、これだと雪合戦らしくないですね」
この雪合戦は幹部どころか社員……どころか一般人参加もいる。
しかし一般参加者が死神の衣に勝つことは難しいので平等にするため、全員雪球を発射する銃を装備している。(参考モデル:VS荒らしのショットガンディスクの銃)
もちろんマリオンちゃんズも装備しているので死ぬようなことはないはずだ。
更に一般参加者はライオットシールド(警察や軍隊が装備している透明な盾)を装備しているというハンデを用意した。
これでマリオンちゃんズの無双にならない……といいなぁ。
チーム構成は一般人20人1組、ブルーパプワ関係者10人1組。
そして俺はマリオンちゃんズ9人と組んでいる……明らかにラスボス枠だ。
他にもシーマ、コッセル、黒い三連星と死神の衣から5人のチームやはにゃーん様、リリーナ、クリちゃん、マハラジャ、マレーネ、セラーナなどのカーン家+αチームなどがいる。
「それにしても……無駄に手の込んだ砦になったな」
「「「私達の手に掛かればこんなものですよ」」」
今回の雪合戦ルールでは開始する前に1時間ほど準備時間が用意されている。
その間に雪球を作ったり、自分達を守る壁を作ったりするんだが……マリオンちゃんズはこの時間に1万発ほどの雪球と砦……要塞とも言えるものを建築してみせた。
他のチームは壁や丘を作った程度なのに……というか既にこれが雪まつりの作品じゃね?
「開始時間まで後3分」
審判……と言うかこれもマリオンズなんだけど……の声が響く。
なにせ多くの雪球が飛び交い、それが当たったかどうか判定するなんて常人には不可能だ。
マリオンズだと安心だ。
ちなみに当たり判定になると脱落ではなく、スタート地点に戻って3分待機でリスタート。
そして本拠地の旗が現存していて落脱数が少ないチームが勝者となる。
優勝するとリゾートコロニーに家族ご招待。ちなみに往復と3日間のホテル、飲食、移動全て無料だ。
結局宣伝になった。ぶっちゃけ何がいいか思い浮かばなかっただけだったりするけど。
「カウントを始めます。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、スタートです」
合図とともに……ブルーパプワ関係者が全員こっちに突っ込んできたwwwこれは草不可避www
とは言っても強いやつから倒そうとするのは常套手段だ。
「いっぱい来ましたねー。こちらも歓迎の準備です」
「マリオン2了解」
「マリオン3了解」
「マリオン(以下略」
コードネームがそのまま過ぎるだろ。
それはともかく、ブルーパプワ関係者よ。
お前達の判断は正しい。だが、正しいがゆえに間違っているぞ!
「ちょっ?!落とし穴とか有りか?!」
「ぐおっ?!あっちこっちから狙ってやがる?!」
あ、早速被害が出たな。
マリオンちゃんズは蟻一匹でも全力で相手するようで、落とし穴、堀、十字砲火を可能にした狭い通路や迷路まで作っている。
ルールで禁止してないけど……本気過ぎるだろ。
これらを突破しないと旗は取れないとか無理キチゲー。
「これだけで一種のアトラクションだな……お、はにゃーん様は頑張ってるな。ニートのくせに動けるとは生意気な、出入り口にコケ集めるぞ」
俺はあの戦法以外でクリアしたことないがな。
そんなこと言ってるとはにゃーん様とリリーナ、クリちゃんが落とし穴と堀を突破して門を潜った……が残念!ポチッとな。
「……これはさすがになしだと思うんだが?」
「……雪崩?」
「無理無理無理?!」
ふはははは、そう簡単に突破できるわけなかろう。
こうして3人は雪に埋もれた。
……つくづく大人気ねぇ。
とは言っても1回しか使えないんだけどね。
それに審判役であるマリオンズが感知して救出してくれるから安全だし問題ないよな。
「でもこれだけ攻められると雪球が減りますね」
「10人だと補給ができません」
「後ろに引いて小口で対応することを進言!」
「了承。この拠点を放棄する!」
同一存在なのにノリノリだねぇ。
そもそも補給は最初から防衛拠点に分けてるんだから少なくて当然ななんだが……ツッコむのは野暮ってもんか。
「あ、死神の衣チームの拠点1つが一般参加者に落とされましたね」
「これは後で猛特訓です」
「無様な」
「ウププププ」
「m9(^Д^)プギャー」
……マリオンちゃんズがテンション上がりすぎてキャラが変わってる。
あれ?そういえばセラーナは……あ、マレーネと一緒に拠点防衛してるのか。堅実なやり方だな。