第二百五十七話
雪合戦をしていてわかったこと。
それは……死神教信者が多く混ざっているようだということだ。
なぜそれが分かったかというと——
「死神様バンザーイ!!」
「死神様に栄光あれええぇぇ!」
うん、めっちゃ叫んでるんだよ。
ちなみにガンガン特攻して死神の衣が次々血祭りになっていたりする。
いや、俺達は支援されなくても圧倒的だからほどほどに楽しんでね?正直ゲームバランスが崩れてるから。
結局俺達の砦を攻略しようとしたメンツは全滅、マリオンズを1人も脱落させることも叶わず、スタート地点で復活待ち状態だ。
数少ない防衛戦力が一般参加者(死神教信者含む)に攻め立てられるという構図が続く。
つまり——
「俺達は暇だ」
「わかってましたけど……やっぱりマリオンズを半分にすべきだったでしょうか」
だな。
まさか1時間で砦ができるとは思ってなかったからな。ハンデが足りなかったとしか言えない。
一般人が籠城するだけでも難攻不落っぽい砦なのに守るのがマリオンちゃんズ+α(俺)とか開発者すらクリアできない無理ゲーで店頭に並んでも見向きもされないレベルだろ。
チームが5人ならこんなに立派な砦は出来なかっただろうな……城壁……5mもあるんだぜ。
雪をマリオンちゃんズが押し固めて作ってるからそう簡単には壊れない、正しく砦だ。
「まぁ攻めてくる敵がいなかったらただの背景と同じだけど」
「誰か私達に挑む奴はいないのかー」
「ここにいるぞ——グボッ」
魏延と馬岱ネタ成立。
横山さん次元超え過ぎだろ。むむむっ。
「何がむむむっですか!」
「マリオンちゃんズが可愛すぎて困っている」
「「「」」」
あ、マジ照れしてる。
いや、まぁ俺も自分で言っといて恥ずかしいけどな。
顔色はいつもの変わることのない蒼いなのが幸いだ。
「さすがに死神の衣上位陣は崩れませんねー。一般参加者2チーム相手に2人で防衛できているあたり、合格ですね」
「失格になれば猛特訓が待っていると思えば頑張るだろうよ」
「地獄の特訓よりは幾分かマシですよ」
俺から言うと五十歩百歩にしか聞こえないが……体験者達からすると雲泥の差があるらしい。
基準は死んで生き返るか、九割九分九厘九毛九糸殺しとの違いぐらいの違いがあるんだってさ。
それにどこまでの違いがあるかはわからんけども。
結局一般参加者VSブルーパプワ関係者という図式は最後まで変わらず、俺達は高みの見物。
あ、そういえば俺達にポイント献上しようと死神教信者が自殺しに来たことがあった。
本人曰く「死神様の為に死ねるなら本望です!」とのこと……いや、本当に死ぬわけじゃないからいいんだけど……本当の意味で本気じゃないよな?
「それにしても雪まつりがなぁ」
「ちょっと期待はずれでしたね」
「だな」
いや、出来は良かったんだよ?良かったんだけど……
「まさか作品のほとんどが俺かマリオンちゃんズとは思いもしなかった」
まるで示し合わせたかのように俺達の彫刻がされていた。
……まぁ調べてみると死神教信者が半数だったんだけどね。ちなみに残り半分は純粋に特別地区を栄えさせた俺達を讃えるために作ってくれたそうだ。
ただ、さ……なんか知らない人が見たらさ、洗脳教育してるみたいに見えない?
だって当事者である俺が見て思い浮かんだのが北朝鮮だったぞ。
さすがにやり過ぎだ。
一応他にもアイナとシローの結婚式の再現とかシーマとマレーネの(性的な)絡みとかはにゃーん様とリリーナとメイの看板娘とかクリちゃんのビーナスなどなどがあった。
看板娘はともかくクリちゃんのビーナスとか草不可避。
セラーナとナタリーの作品はなかったので凹んでたりしてたが……仕方ないだろ。露出が少ないんだから。
それにしてもリリーナの存在を知っている作者がいるとは思わなかった……と思って調べてみると作者は死神の衣だったという罠、軍機漏らしてんじゃねぇよ。
ちなみにシーマとマレーネの絡みの作者(という名の勇者)は1ヶ月ほど姿が確認されず、確認されたのはプンチャック・ジャヤ(ニューギニア島どころかオーストラリア込みでの最高峰)の頂上でボロボロになって打ち捨てられた状態で発見された……むしろよく生きてたな。
「まさか雪まつりで年齢制限を設けることになるとは思わなかったな」
でも撤回はしなかった俺を褒めろ!え?BL規制しといて百合はいいのか、って?良いに決まってるだろ!
ついでに言うと当人達から絶賛零度の視線を受けている最中だぜ!
更に言うと仕事の量が当社比で2倍ほどになった気がする……怒って2倍ならまだ優しい方か。
「でもアレぐらいなら年齢制限を設ける必要はなかったかもしれませんよ。特別地区の内陸部に行けばまだ裸同然で生活してる民族とかいますし」
確かに今現在でも一応文化遺産的な扱いでそういう民族が存在しているけど……それとこれを混ぜていいものだろうか?
「さて、イベントの一応の成功はいいとして……問題はこれだな」
アクシズが捕捉された。
大体の予想通り地球圏を目指しているようで、到着は3年後、つまり0092年の年末頃らしい。
ただし、加速しなければ、だがな。
「でも出発した時期からすると随分時間がかかってますね?」
「予想では来年か再来年ぐらいには来れてたはずなんだが……燃料が足りなかったか?」
原作ほどではないだろうけどアクシズに、それほどの物資があるとは思えない。
いや、原作ではジオンが滅び、その遺産がアクシズに回っていたとしたら、この世界のアクシズは原作のアクシズより物資が少ない可能性もありえるな。
最初だけ加速して慣性航行で地球圏に向かってきているのかもしれない。
そういやアクシズの右上のたんこぶことモウサだが、一年戦争後に作られたはずのその存在は確認されている。
それどころか反対側にもう1つ小惑星がくっついていることが判明している。
軽く原作を超えてるな。やはり物資不足ってことはないのかな?
「これはジオン対アクシズが現実味を帯びてきたな」
「まさかアクシズで遠足、なんてことはないでしょうしね」
これは新しい兵器を開発してジオンに売るチャンス!
……最近ティターンズにばかり兵器が売れてジオンには売れないんだよ。
販路拡大は企業の責務、とは思いたくないがやはり資金が少ないと力を伸ばしにくいのも間違いない。
世の中金が金を集める。
いくら戦争の時のキャンセル料が莫大でもそれだけでは足りないのさ。
自転車操業こそ至高……違うか。
「アプサラスが導入されてからはキャンセル料より撃破ボーナスと鹵獲ボーナスの方が大きくなったんですけどね」
「死神なのにディスられるとはこれ如何に」