第二百六十話
リゾートコロニーの完成でサイド5への観光客が増えた。
それによってオタクの聖地に居着く、食い詰め同人作家達に打って付けの仕事ができた。
宇宙航行資格による観光客の送迎だ。
今までは大体が物流を担う輸送業としてしか使われていなかったが、旅行客の増大でブルーパプワと契約することで観光客の送迎、つまり公共交通機関として運用することになった。
個人タクシーに似た性質を持っていて、どういうサービスを行うかなどは各々任意でブルーパプワが総括管理するがツアー会社が指名などもできるので競合しあって良い流れに……なればいいなぁ。
こういうのって大体問題が後から後から次々と湧いて出てくるのはもうのび太くんがジャイアンにいじめられるぐらいテンプレだ。
もっとも処理するのは俺達じゃなくてもっと下の奴らだから関係ないが。
「仕事とはトラブルでもある、ですね」
「……あながち間違いではないな」
仕事をしていてトラブルがなかったことなんてあった試しがない。
それはともかく、これで売れない同人作家が餓死することはなくなった。
夢に向かって努力する者を俺は応援するぞ……もちろん不浄なる者(BL作家)を除くがな。実際不浄なる者には仕事をあまり回さないようにしている。
え?差別?いいえ、区別です。
昔の人は言いました。腐った蜜柑はとっとと捨てろ、と……何処か違った気もするけど大筋には間違ってないはず。
「それにしても除菌は上手く行っているようだな。世界的に見てもBL……いや、感染病を抑えているじゃないか」
「……これが、未曾有のバイオハザードの前触れであったとはブルーニーさんも思いもしなかった」
おい、やめろよ。フラグ立てんな……あ、フラグ立てたの自分だったか。
「でもまだまだ潜伏期間中の感染者も多くいるので注意が必要ですよ」
……そうだ、将来俺達が戦争を起こす際の大義名分に使うか。
BL浄化戦争、うん、いいかもしれん。
「そんなことで戦争を始めたなんて歴史の汚点になりますよ」
「勝てば官軍なのだ!」
まぁ、3割は冗談だがな。
リゾートコロニーのウケは上々。
比較的近いサイド6からの利用者も多い。
元々競合相手であるサイド6には無いシチュエーションを揃えた。
海や川などは被るが、やはり特別地区のサイド5ということでジャングルなどを再現している。
自然素材が高くなっていたコロニー建設当時では実現できなかった施設だな。
一応言っておくとこれはただの金稼ぎだけでなく、種の保存の役割も担っている。
地球とは重力が違うからどういった変化があるかわからないからイマイチ実現されているかどうかは不明だが。
「それにしてもあの超重力空間って必要だったんですか?」
アトラクション施設の1つに超重力空間という施設がある。
まぁ単純に重力が100倍だったりするが……簡単にいえば龍玉の宇宙船の機能を現実化したものだ。
「結構体験希望者がいるからいいだろ」
「……100倍もの重力を普通の人間が耐えられるわけないじゃないですか。体験者が出る度に怪我人になって私達が駆り出されるんですよ。それに次第に試す人がいなくなります」
100倍はやり過ぎたか……全く人造人間の嫁をもらった禿を見習えってんだ。
「私達にはいいトレーニングになるんですけどね」
いや、マリオンちゃんズはトレーニング関係ないだろ。
マリオンちゃんズの身体能力は燃料依存であることは確定したんだし……まぁ重力化の戦闘訓練と考えれば意味は……あるのか?
さて、少し時間は過ぎて0090年6月。
あまりとろとろしてると小話ばかりで先に進まない……ゲフンゲフン。
それはともかく、とりあえずラビットの水陸両用、水中型が大まかに完成したらしい。
完成図を見せてもらったんだが……
「なんでキャンサー?」
水陸両用タイプはズゴックをモデルにしているのに、なぜか水中型はガンダムWの地味な水中型モビルスーツ……モビルスーツ?アレってもしかしてモビルアーマーになるのか?足は確か無かったはずだし。
なんにしてもウサギがカニになった。
……なんでこうなった?
まさか他に転生者が?
「聞いた話では開発チームで飲み会を開いた時に食べたのが——」
「カニ?」
「そうです。それで閃いたそうです」
そんな閃き捨ててしまえ。
クビにしてやろうか。
「一応潜水艦に格納しやすいように設計はしているようですから使ってみた後で判断すればいいと思います。使えればカニでもいいし……それに私達が食べるとなると……」
「キャンサーだから十中八九カニか?!よし、これで行こうか。それとこの後、ブルーパプワでアレンジはするんだろ?」
「はい。素体を作るのには協力しましたが、同じ物を使う必要はありませんね。おそらくMIP社もそのまま使うことはないでしょう」
それにしても……キャンサーだと見た目的に迫力というか威圧感がない。
もうちょっとなにかないものか。
「足でも生やしてみますか?」
「どこまでカニに近づける気だ」
だいたい水中型に足は不要だろ。
そしてこの後、キャンサーは試験テストで優秀な成績を残して実戦配備をすることとなった。
本当にこれで良かったんだろうか?
「食べてみるとカニカマでしたね」
「自作自演だから質が落ちるのかね。ズゴックシリーズがちゃんとしたカニなのに見た目ではずっと似てるこっちがカニ(偽)というのは釈然としないけど」
しかもステータスに変動がない……まぁ最新機を吸収し続けてたから今の量産機を喰ってパワーアップは難しいんだろうな。
ちなみにキャンサーの名前はクラブになった。
なんかポケットの中のモンスターっぽいが気にしたら負けだ。
また一段と今日は短いです。
もう少しで仕事は一段落……付くかなぁ?
来年までこのままズルズルと短いままかもしれません。