さて、ニューギニア特別地区建国記念日になった。
開始は午前10時、メインストリートを死神の衣が操るサイコタイプが先頭を、その後ろをαタイプが歩く。
ぶっちゃけモビルスーツの行進なんて特別地区に最初からいる人間からしたら見慣れたものだろうけどな。
設立当時は四六時中治安維持でモビルスーツがウロウロしていた。
今ではラビットやハロに主力を譲ったが、偶にいるラビットを暴走させる犯罪者を取り締まることがまだあるし……まぁサイコタイプはそんな役割をしてないから目新しいと言えるか?でもブルーパプワの宣伝でよくテレビに出演してるからやっぱり微妙か。
空ではβシリーズが……うん、正直戦闘機が跳んでるのとあまり変わらないから派手さ的にはイマイチだが、地上に近づいてモビルスーツ形態となったりすると見物客から歓声が上がる。
悲鳴が混ざってるとか気のせいだ。
もっとも——
「所詮前菜、空の派手さはやっぱりアレだろ」
もう言わなくても特別地区の住民なら察しているだろう。むしろわからなかったら正気を疑うレベルだ。
大気圏から降ってくる流星『群』、数は100。
パレードを見に来ていた民衆達から空の異常に気づきどよめきが起こる。
「名前をつけるとしたら真・オペレーションメテオあたりか?」
「いえ、極・オペレーションメテオでしょう」
「お父様……ほとんど変わってない……」
「スターライトブレイカーとかどうでしょう」
マレーネ、それは一体どこの白い魔王様なんだ。
まぁ星を破壊できそうという意味ではそう変わったものじゃない気もするけど。
「さあ、アプサラスのご降臨だ」
1機でもモビルスーツ10機分以上なのにそれが100機も並ぶとさすがに空が狭く感じる。
俺でもそう感じるのだから見物客達が感じる圧迫感は相当なものだろう。
ちなみにマリオンちゃんズは警備を最小限に残して他は全員がアプサラスを操縦している。
マリオンちゃんズだけでは数が足りない分は、はにゃーん様やリリーナ、クリちゃんなどを筆頭に死神の衣の上位、キシリアからの要請で参加することとなったクスコ・アルなどが担っている。
実は……気づいたらいけないことに気づいたんだ。
アプサラスIVをマリオンズの人数分生産することになって、アプサラスアーマーを生成して改造すればコスト安くね?と思って生成してみたんだが……コクピット、再現されていたのだ。
そしてアプサラスアーマーは燃料を消費して生成されるが、その燃料はどうやら『資源』基準であるようなのだ。
アプサラスアーマー生成にどれだけの鉱物が使われているかで換算されるかで燃料が消費されているが普通に生産しようとした場合は当然エネルギーが必要になるわけだが、それを全て無視して生成できるということになる。
つまり……めっちゃ安くアプサラスが量産できるということだ。
しかし、これらは本命ではない。
では、本命は何かというと……この量産されたアプサラスアーマー達は最初のアプサラスアーマーと同じで『ファンネル』として運用できるのだ。
そう、その気になればアプサラスアーマーを無限に生成し続けて圧倒的物量が実現できるのだ。
ただし、いくらか問題があってアプサラスアーマーを遠隔操作できるのはマリオンちゃん本体しかできない。
そしていくらマリオンちゃんが規格外だからといってアプサラスアーマーの砲台数を全て操作するとなると質を落とさない(ビームを相殺したりする)レベルを保つには2機程度が限度ということ。
本人曰く、燃料がもっと貯まればあるいは……だ、そうだ。
そして次に燃料は共有した状態のままを維持できるが、俺達自身に備わっているサイコミュではデータ送信出力の問題で遠隔過ぎると操作ができないということ。
それら欠点を差し引いても十分過ぎるんだけどな。
なんだか(敵が)無理ゲー過ぎて面白くない。
無双ゲーは無双ゲーで楽しむ方法があるが、アバターがノーダメ、攻撃は一撃必殺の無双ゲーなんてクソゲー過ぎる。
既に『戦い』が成立しないんじゃないか?
俺達単機ならまだ無双ゲーだったのに……縛り、舐めプ推奨ってのもなぁ。
「ま、今はそういうことは置いといてマリオンちゃんズの晴れの舞台に集中するか」
巨大なその身体で宙返りなどアクロバット飛行するのはマリオンちゃんズだろう。
そして突然、彼方から放たれたミサイル。
ミサイルに気づいた見物客が悲鳴を上げ、混乱する。
しかし、それを寸分狂わず迎撃する可動ビーム砲、しかしミサイルの破片は見物客に降り注ぐことに……はならず、アプサラスIIIの大型メガ粒子砲が破片全てを消し飛ばす。
これは攻撃されたわけではなく、演出の1つだ。
「しかし実弾というのはやり過ぎだったのでは?そもそもあれほど跡形も無いなら模擬ミサイルでもわからなかったと思いますが」
「こらこら、天下のブルーパプワがそんな腑抜けた演出をしたなんてバレたら興ざめだろ。それに何より、逆に本物ならここまでするのか、と驚いてくれるかもしれないじゃないか」
「それは、まぁ……ただ、ですね?アレほど必要なんでしょうか?」
ミサイルは1発ではなく、次々とミサイルが飛んでくる。
それはもうミサイルではなく花火のような扱いとなっている。
この演出に使われるミサイルは計1000発で、1発1000万ぐらいするからマハラジャの言いたいことはわかるけどね。
「どうせ使わなくなった規格のミサイルだし問題無いだろ」
現在の空の主力であるβタイプ、そしてドップブースターのミサイルは共通規格だが、一時期連邦やジオンに卸していたフライマンタやマゼラアタック、一部のモビルスーツに採用されていたミサイルなどが在庫として余っていたのだ。
一応両軍に売れなくはなかったけど在庫処分で押し付けるのもどうかと思って消費することに決めたのだ。
「やっと見物客達も事態が飲み込めたようだな」
あのまま混乱したままだったらどうしようかと思っていたが良かった良かった。
事態が飲み込めた見物客はアプサラス達が攻撃する度に声を上げたり拍手したりしている。
「とりあえず成功なようだな」