第二百六十三話
各国のマスゴミは俺達の軍事パレードを色々な捉え方をしていた。
曰く、全宇宙最強の軍団。
曰く、最悪にして災厄。
曰く、もうどうにでもな〜れ。
曰く、一地方国家がこれほど巨大な軍事力は必要ないと。
曰く、いつ人間が死神に勝てると錯覚したのか。
曰く、死神様バンザーイ!!
曰く、ティターンズもジオンも特別地区を解体すべきではないのかと提言。
曰く、我が社はニューギニア特別地区を応援しています。
曰く、私達はニューギニア特別地区を支持しています。
曰く、もうやめてぇ人類のライフはもうゼロよ!
などなど。
ツッコミどころ満載の記事が多い。
ティターンズとジオンからは苦情が殺到、内容をまとめると——『お前、自重汁!!』だな。
噂ではギレンが入院したらしい。胃に穴が空いたそうな……なんでだ?
あ、ちなみにジャミトフは平気な理由はもう慣れたらしい。苦情は言ってきたけどな。
そして大きな変化があった。
各地方政府から挨拶という名の根回しが増えた。以前から度々あったが、今は以前より念入りに行うようになった。
どれぐらい念入りかというと、死神教集会限定で売っていた死神ステッカーの大量注文だ。
そして更には効能を拡大解釈してモビルスーツだけではなく、施設も適応して欲しいという要望が殺到している。
なんの権利があってそんな要望を出しているのか小一時間ほど問い詰めたいが優しい優しい俺達は飲んでやった。
ただし、民需産業のみだがな。つまり軍需産業や軍事施設は適応外なわけだ。
軍事施設は攻撃を仕掛けてきた段階で死神ステッカーは無効としてもいいけど、生産施設とかは目の前で戦力を整えられるのをただ眺めるだけになる可能性があった。そんなことになったら笑い話にしかならない。
ちなみに契約に反した場合、その戦争においてその勢力が所持している全ての死神ステッカーは無効となる。
これによって1番死神ステッカーの恩恵を受ける現場の一兵士にまで影響が出ることになり、お偉方が契約違反をしないか現場の兵士達が監視するなんてことになったが……まぁ余談だな。
そもそも大々的に売り出す前は死神教信者にしか売ってないわけだから現在保有してるのは信者、つまり諜報員でもあるから今更なんだが。
「凄い反響ですね。主に他国が、ですけど」
「国内は割りと平然と受け入れられました。これも日頃の行いでしょう……喜んでいいかどうかは悩みますが、特別地区の存在感を改めて示せたと前向きに思うことにします」
マレーネの言葉に少し棘を感じる。
日頃の行い=非常識な日常、前向き=そうとでも考えないとやってられない、と言っているように聞こえる……多分気のせいだろう。
「それに死神教からの奉納が馬鹿になりませんね。今回の分だけでアプサラスが1機ぐらい作れます」
「これ以上アプサラスを増やすと予算が圧迫されます!」
マリオンちゃんの発言に焦って注意をするがもちろんただの物の例えだ。
アプサラス100機、調子に乗って作ってしまったが問題は維持費にある。
いくらコスト削減のために共通部品を増やしているとは言っても維持費は相応に掛かる。
可変モビルスーツ、特にβを治安維持から前線まで満足する数を揃えるよりは安いが、国庫の負担になるのは間違いない。
もちろん戦力的には圧倒的にアプサラスの方が優位だからこそマレーネも認めたんだが……さすがにこれ以上はダメらしい。
まぁ、どこかの誰かみたいにアプサラスに傾倒してるわけじゃないから別にいいんだけどな。
「アプサラスの大量生産が決定した時のギニアスさんは凄かったですね」
最初は何処かの世紀末格闘家の長兄の死に際のように拳を天に突き上げて、しばらく固まってたな。
その後は浮かれ過ぎてアイナに鎮圧されてたが。
「念願が叶ったのですから不思議ではありませんが……財布に優しくないです。これからしばらくはきっちり切り詰めないと……」
結婚しても居ないのに主婦のような言葉だな。
「主婦の皆さんは偉大なんですよ。旦那の少ない給料をやりくりして、自分が贅沢するために旦那に少ない小遣いで納得してもらうために試行錯誤して切り詰め、何かあった時にはそのへそくりからお金が出るんですから!」
「途中でいらん本音がなければ共感できたんだけどねぇ」
結局半分は自分が贅沢するためかい。
まぁ、緊急時にそこから出るんだから悪いものではない……はず。
「それに結婚してないのはしようとしてないだけですから」
サラッと訴えたが、もしかしてこっちが本当に訴えたかったことか?
幹部が結婚しにくいのは俺達のせいというのは半分ぐらいは俺達のせいだと自覚してるから反論しないけどな。
ブルーパプワ幹部が変な奴とくっつかれると困る。
人間同士の恋愛は面倒だよなぁ。俺達みたいに一心同体なら楽だろうに……
「セラーナとの件で拗れているブルーニー様がそういいますか」
……マリオンちゃんからの視線が痛いっす。
きっと目からビームが出てるな。ずっと見られてると多分俺は溶ける。
「マリオンちゃんが第1、それを揺るがすことなんてことはない」
「第2ならあるんですね。わかります」
「ブルーニーさんの浮気者おぉ!アムロくんにペガサス流星拳教えてやるうぅ!」
いや、マリオンちゃん、それ何がしたいんだ?ただ単に中の人ネタを仕込みたいだけだろ?!しかも今の世代だとキングダムの信とかTIGER &BUNNYのバーナビー・ブルックスJrの中の人だから成立しないぞ!
最近アムロがマリオンちゃんに扱かれているようだ。
本当にペガサス流星拳を習得させる気か?いやいや、音速の拳連打とかマリオンちゃんじゃないんだから無理だろ。
ニュータイプは身体能力だけだと普通の人間と変わらない……なんて百も承知だよな。
つまりストレス解消か。アムロ南無。
アムロと言えばメイとくっつくとかくっつかないとかの話が全然進まない。
どうやらアムロはセイラに心残りがあるそうな……セイラはセイラで最近アムロを意識し始めていると聞く。
……主人公がハーレムってどこのラノベ主人公だよ。ガンダムでハーレムなんてないはずだ。
そしてヒロインは死ぬものでもある……セイラはともかくメイは死なないだろうけどな。
「ギレン閣下から軍事パレードは少し延期すると連絡がありました」
「もしかしなくても……」
「私達のせいですな。アプサラス100機、ミサイルの撃墜ショーなんてやれば並大抵の国では恥ずかしくて軍事パレードなんてできなくなります」
そんなこと狙ったわけっじゃないんだけど……むう、ジオンとの関係に亀裂が入らなければいいんだけど。
「どうやらサイコミュの新型以外にもノイエジールの新型機を開発しているそうです」
アプサラスに対抗して大型モビルアーマーで対抗する気か、でも延期って程度の期間で開発できないだろ。
「どうやら構想や理論自体は既に完成しているようです。生産まで漕ぎ着けれなかった理由は不明ですが」
ノイエジールの新型ねぇ?
俺達に対抗できるかどうかより味が気になる。
美味ければいいんだけど。