第二百六十七話
姐さん事件です。
ジオンのノイエジールIIが何者かに盗まれたとです。
てっきりモビルスーツが盗まれるのは連邦系組織の十八番だと思ってたんだけど、どうやら違ったようだ。
「しかも散々暴れられて近衛部隊の半数がやられるとか笑える」
「笑えませんよ。一応うちの後ろ盾なんですから」
その通り、本当は若干笑えない自体になっている。
いくら最新鋭機であるノイエジールIIを3機奪われたとは言ってもちょっと信じられない戦果だ。
詳細情報は手に入っていないからノイエジールIIが優秀な機体なのか、敵が優秀なのか、ジオンが間抜けだったのかはわからない。
ただし被害はダイクン派諜報員から大体は把握している。
グワジン級中破、チベ級1隻撃破と2隻中破、ムサイ7隻撃破、4隻中破、モビルスーツ31機撃破されるという1地方の決戦が行われたレベルの被害だな。しかも敗戦してる方だし。
さすがジオンの最新鋭機、凄い戦果を叩き出したな。開発主に対して、ってのはかなり皮肉だが。
近衛部隊ということで率いたのは禿げた忠犬ことエギーユ・デュ・ミディ……じゃなくてエギーユ・デラーズは終戦後、近衛部隊配属になったドロス級で指揮をしていたから無事だったがグワジン級で指揮をしていたなら死んでいた可能性が高い。
「なんとか1機は撃破できてよかったのですが……強奪したパイロットは逃がしてしまっているようです」
へー……って、顔は写ってないけど体つきからして女か?
ただしそれ以外は特に情報はなく、犯人の特定は————
「あ、犯人はシャアさんとララァさんとレコアさんですよ」
意外とあっさりされた。
「戦闘と死の気配がありましたからね。ちょっと注意を向けてみると3人の気配がありましたから間違いないと思いますよ」
じゃあもしかして撃破されたノイエジールIIを操ってたのはレコアか?シャアやララァが撃破されるなんて想像できないし……そうすると、このレコアを回収しようとしているノイエジールIIに割り込んで邪魔するように入ってきたノイエジールIIはララァで、邪魔されたのはシャアか?
もしかしなくても三角関係?となると気になるのはナナイのことが気になるな。
えーっと確か調査依頼してたよな?後で見てみるか。
それはともかくとして——
「つまり裏で糸を引いているのは……」
「エゥーゴ……そしてアナハイムということですな」
にしてもやり過ぎじゃないか?
今までアナハイムは暗躍してきたがこうまで露骨に武力行使なんてしてこなかったぞ。
さすがに今回のはやばいだろ。
まぁ、俺達だから……いや、マリオンちゃんズだからわかったんだけど、それでも大胆だ。
「もしかするとアナハイムがエゥーゴを切り捨てる、もしくは居心地が悪くなってきたのかもしれません。最近はアナハイムもこちらと対立することを避けるようになってまいりましたし」
なるほど、自分達の存在意義をアナハイムに示すためか、それともエゥーゴが再び独立した組織を目指そうとしているのかはわからないが、アナハイムの主導ではない可能性があるか。
……いや、ちょっと待て、シャアはキャスバル・レム・ダイクンだ。
もしかしてこちらのダイクン派諜報員がノイエジールII強奪に協力した可能性も考えられるな。
一旦諜報員の締め上げが必要か?……理由がないか、まさかダイクンの遺児が存在しているなんてバレればどうなるかわからない。
しかし、既にバレている可能性がある以上、黙っているわけもないだろう。
まぁ、こういう時こそマリオンちゃんズの出番だ!…………なんだか昔は俺がリードしてたのに、今となってはマリオンちゃんズのおまけのようになっちまったな。
「大丈夫ですよ。私達はいつまでも一心同体です。私達の成果はブルーニーの成果です」
いつもと違って今のは俺の心の声だったんだが……ナチュラルに心を読んだな。
よくラノベであるやつだが……マリオンちゃんズにやられる分には全然OKだ。
「私達も大歓迎ですよ」
いや、俺はそれほどの能力ねぇから。
実は定期的にサイコミュを喰ってるんだけどレベルが上がるようなことはない。
進化にも何か条件があるのか、それともただ単に運が無いのか、未だに進化の法則は不明なところが多い。
「コホン、話を戻しますがアナハイムは以前からマークしていましたが、エゥーゴは表立って行動してこなかったのでノーマークでした。これからは網を張りたいと思います」
「ああ、それで頼む」
その前にマリオンズに面接が必要か、二重スパイは上手く使えばアドバンテージになるし、本来はいるかいないかで疑心暗鬼になるところだがマリオンちゃんズがいるおかげで確実なねずみ駆除ができるから調べるのは無駄にならない。
何より疑っている相手を取り調べるわけじゃないから不審に思われないのもメリットだ。
マリオンズの面談をした結果……黒だった。
ダイクン派諜報員の中にシャアと繋がったものがいた。
そこで悩んだのは駆除をするのか利用するのか、だ。
考えた末、駆除することにした。
理由は利用する場合、長期の間泳がす必要があり、その間に増殖されると駆除する対象が増えてしまうし、ひょっとすると駆除対象にマハラジャやセラーナも含まれるかもしれないからだ。
そうなるとはにゃーん様もどうするかわからないし、セラーナは……こっちに付いてくだろうか?セラーナが俺に対してどれぐらい本気かわからない。
そしてカーン一家が離れるとなると政策部は致命的なダメージを受けることになるし、ナタリーもはにゃーん様と共にする可能性が高いから開発部もダメージがある。
そしてリリーナもはにゃーん様と行動を共にするだろう……うん、色々ガタガタになるな。
しかし、問題はもし逆シャアのようにシャアがキャスバル・レム・ダイクンとして表立って動くようになった時だよな。
遅かれ早かれカーン一家と話す必要があるだろう。
しかし今は——
「久しぶりだな。ルセット、連絡がないからアナハイムに始末されたかと思ってたぞ」
『正直私自身、五体満足で生きてることが不思議なぐらいよ』
どうやらアナハイムにスパイであることがバレたようだな。
『でも最近はアナハイムの強引なやり方に嫌気が差した社員や役員が派閥を形成してなかなか面白いことになってるわ』
「へー、やっぱりアナハイムの中でもそういうことがあるんだな」
『1番大きいのは貴方達が行った軍事パレードよ。あれによってアナハイムの幹部たちは縮み込んで和平派が形成されて、今では無視できないほどの勢力ね』
それはそれは、俺達のたゆまぬ努力が実を結んだってことか。
まぁ、元々アナハイムには吸収された会社が多くてまだまだ不安定というならわかりやすいが、そんな甘っちょろい企業ではないが、内部分裂が起こる程度にはインパクトがあったようだな。
『それで本題なんだけど』
これが本題ではないらしい。
『新しい転生者を見つけたようなの。名前はアルフレッド・イズルハだ』
転生者の情報なんてそれほど興味が無いけど……ここでまさかのアルか。
ポケ戦からまた新たに参戦か……それにしても意外だ。まさかマイナーなキャラまで……ってマリガンとか明らかに小物臭があふれているか。
バーニィとアルが転生者ねぇ。これでポケ戦では2人目か。
そういえばフラウとマリガンもファーストで2人だったな。
『現在の行方は不明です。黒人差別があったころあたりから捕捉できません』
最近までは姿が確認されていたのか。さて何処にいるんだろうね。
どうでもいいといえばどうでもいいけど、一応念のために転生者の捕捉はしておきたいんだけど無理か。
でも……アルねぇ……多分転生者の中で最年少だよな?
まぁ、だからこそ独立戦争などでは不参加だったんだろうな。