第二百七十三話
<アルフレッド・イズルハ>
くそ、せっかくの初登場で忌々しいエピソードだけで終わりなんて、あのクソ親殺す……のに帰るのは面倒だからせいぜい僕が帰るまで長生きしてろよ。
そういう僕は今、アクシズに向かうための船の中にいる。
グレミーはちょっと鼻に付くところがある典型的なオリ主タイプっぽいけど、噛ませ犬タイプじゃなくてよかった。じゃなかったら他の転生者なんて見殺しどころか喜々として殺しに来るところだ。
僕はハーレム以前に原作キャラに恋愛的な意味ではあまり興味ない。むしろあの地獄から抜けだした今、モブでもいいから家庭を作って平和平穏に過ごしたい。
本当はジオンかロシアか特別地区に移住したいんだけど……貧乏って嫌だな。
アクシズはこれからジオンと戦うらしいから平和とは掛け離れてるけど、移住の支援をしてくれてスマートにサイド7から、あのクソ親共から一刻も早く離れることができたんだから多少のことは目を瞑る。
それに平和平穏とはいってもせっかくの宇宙世紀、モビルスーツに乗ってみたいと思うのは当然だ。
そのモビルスーツに乗れる機会があるとすればトップと繋がりがあって、規律が緩いであろうアクシズしかない。
一応ニューギニア特別地区でもモビルスーツに乗ることはできるらしいけど、パトレイバーとボン○くんが歩きまわる国なんて怪しすぎる。
それに噂でしかないけど銃弾を弾き、声で人を殺し、走れば衝撃波が起こるなんていうチートな存在がいるとかいないとか。
誇張にしても怖すぎる。
転生チート持ちがいるんだろうか?なら僕にも隠された力が……あるかなぁ?
そういえばバーニィもグレミーも何気にチートっぽい、転生したからって相対的に未来である宇宙世紀で科学者をやったり、原作を知ってはいても組織を束ねることなんてそう簡単には出来ないはず。
「僕にも何かできることがあるはずだ」
モビルスーツの操縦が上手いとか……でも戦場に出るのは怖い。
「……ハァ、暇だから無駄に色々考えちゃうな」
アクシズが地球に近づいてきてるとは言っても片道3ヶ月ぐらい掛かるみたいで暇なんだよ。
働かざるを得ずということで皿洗いとかしてるけど基本は機械に入れてスイッチ押して、終わったら拭くだけと家にいる時に比べたら幸せ過ぎる。
幸せ過ぎるけど、暇なんだよ、
大事なことなので2回——
さて、新年明けて0091年——
「よばれてとびでてマリオンズ!」
またマリオンズが増えた。
今年でマリオンちゃんも26歳になったか……マリオンズが25人……もしかしなくても宇宙征服は軽くできるな。
各サイドにマリオンズを3人以上配置できるんだから治安、防衛は完璧だろう。
もっとも統治するための官僚が全然足りなくて政は滞るのは予想できるけどな。
「そういやブルーニー、前々から気になっていたんだが」
「ん?なんだ。シーマ様」
シーマ様は自分から声を掛けたにも関わらず、深い深い深呼吸を繰り返し、意を決するように次の言葉を吐き出した。
「お前は人間なのか?」
宴会でどんちゃん騒ぎがピタッと、まるで空気が固まったかのように止まった。
「凄い今更な質問だな」
(くっ、誰だい!罰ゲームクジにこんな無謀なこと入れたのは?!)←犯人
さて、どう答えたものか。
正直、事実を言っても誤魔化してもそう変わることはないと思う。
俺自身は国の運営や会社の経営やイベントなどに口出しするし代表として動いているが、影響力があるのはあくまでマリオンちゃんだ。
シーマ様も俺がロボットだろうが人間だろうがあまり関係ないと思ったからこそこんなところで聞いてきたんだと思うし。
うーん……よし。
「人間じゃないぞ」
「そうか、やはり答えられない……「「「「「えっ?!」」」」」」
ここにいるのは幹部達ばかりだし別にいいだろ。
「そんな軽く言って良かったのかい?造反を生む原因にもなるかもしれないのに」
「ふん、ここにマリオンちゃんズに楯突こうって奴がいるか?」
「…………」
沈黙が答えは答えとなる。
それに今不愉快に思ったり、謀りごとを考えたら瞬く間に今生まれたばかりのマリオンズに喜々として狩られることになる。それは幹部達ならよくわかっているだろう。
「つまり君はロボットなんだね?」
「今更だけどその通りだ。ただな、その工具を置いてから近寄ってこい。ギニアス」
絶対分解なんてさせないぞ。
マリオンちゃんズを総動員してでも。
「それは残念だ」
本気……じゃないよな?諦めたように見せかけてまだ目を輝かせていたような……気のせいだよな?
「ギニアスさん、150%本気でしたよ」
とりあえずSDサイズでビームライフルを使うのは厳禁だな。
……ノイエジールIIの件を理由に予算を削ってやろうか。
最近ナタリーの方が開発部筆頭でいいんじゃないかと思えてきたんだよなぁ。真面目だし優秀だしはにゃーん様やリリーナを人質にすれば言うこと聞きそうだし(ゲス顔)
……あ、駄目だ。ギニアスに余計な時間を与えると何するかわかったもんじゃないな。
筆頭である今ですら裏で何を開発しているかわかったもんじゃないのに書類仕事から解放なんかした日には魔改造されたアプサラスが無駄に作られるぞ。
「……じゃあブルーニーは人工知能ってことかい。そうは見えないけどねぇ」
また難しい問いだな。
まさか人間の魂を持つ、サイズが変化するモビルスーツなんて言っても信じないだろうし……マリオンちゃんズより意味不明な存在……なのか?最近俺よりマリオンちゃんズの方がよほど理解の範疇を超える存在と思えてきたんだけど……模擬戦でも負け越してるし。
「実はブルーニーさんには人間の脳が入ってます」
「「……え?」」
「って、ブルーニーも驚いてるぞ」
マリオンちゃんのフォローが突飛すぎて驚いてしまった。
いやいや、人間の脳って……攻殻機動隊じゃあるまいし……まぁ、それで誤魔化すか。
「いや、まさかマリオンちゃんがサラッと俺の秘密を話してちょっと驚いただけだ」
「じゃあなにかい、その身体は義肢の延長で出来たものだってのかい」
「まぁそんな感じだ」
勝手に進化するけどな。
「……趣味悪いねぇ」
「悪かったな。でも強そうだろ」
「それは否定しないさ」
まぁ色々矛盾がある誤魔化しだけどな。
だって、俺達が活動し始めたのはブルーディスティニーが開発されて何ヶ月も経ってない頃なのにブルーディスティニーの姿をした義肢なんて作れるわけがない。
そこまで気にする奴らがいるかどうかは知らないし、気にしても俺達の冗談で流せそうだからいいか。
「ということは脳の寿命が来るまでは死ぬことはないってことか。ならしばらくは後継者問題もない……ってそれ以前にヒールがあればほぼ不老不死を実現しているんだったね」
1番恩恵を受けてる本人が忘れてたw
「なんか言ったかい?」
「若作り年増」
「コロスッ!」