第二百七十九話
なんかアクシズからアプサラスを売って欲しいという話が来た。
数に劣るのを質でカバーしたいのはわかるが、決してNOだ。
大体操縦できるわけないだろ……と言いたいところだが、量産型アプサラスことアプサラスVIならできなくはない。それでも売る気はないけどな。
アプサラスは初期の段階では操縦がマリオンちゃんズ以外は不可能だったから断っていたが、現在では少し事情が違う。
今では死神の陽炎、ニューギニア特別地区のシンボル、守り神的な存在となっている。
「ふもふも」
人種差別暴動の際にエゥーゴが奇襲してきた時に守っていたアプサラスが凄い評判が良くて、更にこの前やった軍事パレードで加熱、他国にアプサラスを売るっていうのはちょっと世論的にもありえないのが現状なわけだ。
元々売る気はないんだけどね。
「そもそもVIも実質ニュータイプ専用機ですからね」
「オールドタイプでも動かすだけなら、できるけど戦闘となるとただの的だからな」
ちなみにIVは完全にマリオンちゃんズ専用なのは知っての通りだと思うが、最近のIV事情はちょっと次元が違う。
ただ飛ばすだけでもニュータイプでないと不可能、ただし飛ばすことはできても操縦することもままならないだろうな。
なにせ操縦桿がないからな!マリオンちゃんズの精神感応波出力が強すぎてサイコミュに入出力装置無しで動かせるんだよ。
「ふもっふ!」
そういや原作のフォウはサイコガンダムを離れたところから引き寄せてたな。
原作キャラにできてマリオンちゃんズにできないわけがない。
そして操縦桿がなくても戦闘できるとか……マリオンちゃんズ、パネェっす。
「……あれ?よく考えると外から操れるってことはサイコミュ載せてるモビルスーツをハッキングしたりできるのか?」
「いえ、サイコミュに個々の精神感応波を登録しているのでそれなりに近づかないと難しいですね」
……できるんじゃん。
もしかしてシロッコの最後でジ・Oが動かなくなったのってそれか?でもマリオンちゃんがそれなりの距離じゃないと使えないんだよな。カミーユは結構離れた場所からそうしてたし……まさかカミーユはマリオンちゃん以上とか?
「ふも」
うーん……ニュータイプレベルだけなら可能性はあるか、でもこの世界のカミーユが戦場に出ることはないからいいか、ファが許さないだろ。
それにしてもいい加減アンチニュータイプのような存在のマリオンちゃんズが更にアンチになったな。
どこまでマリオンちゃんズは進化するんだろ。
「それにしてもアクシズは厚かましいですね。モビルスーツは買わないくせにアプサラスを売れなんて」
そう、俺達はモビルスーツを勧めたんだが素気無く断られた。
多分アナハイムの利権の関係なんだろうがもう少し愛想よくすべきだと思う。最近はスポンサーや寄付などが上手く行っているから調子に乗ってるのかもしれないな。
資金や兵器が充実したところで新兵だらけのアクシズの脅威度はそんなに変わらないのに……それに人口的な意味で不利なのは覆らないし。
「ふもふもっ!」
唯一売れたのは対人戦用ハロぐらいだ。あまりにも俺達にメリットがない。
ヘリウム3を買い取ったのは間違いだったかもしれん……あ、でもノイエジールIIを手に入れてたな。まだ成果が出てないから忘れてた。
「ふもふもふももも!」
「さっきからうるさいですね。なにかあったのでしょうか」
ちなみに今俺達がいるのは特別地区の首都の街中だ。
ボン太くん達はある方向に走って行っているところを見るとなにかあったんだろうな。
ただ……ボン太くんがハロを率いている姿を見るとなんというか……あんなのに逮捕されるって屈辱的だ。
とりあえず後をつけていくと——
「どうやら事件みたいですね。」
「そうみたいだな」
周りの野次馬の話を聞く限りでは空き巣が居直り強盗になったようだ。
銃、しかもマシンガンを持っているようだが、それだけではなく、手榴弾まで持っているらしい。
「これは死神様降臨すべきでしょうかね」
「そうだな……いや、たまには俺が出るかな」
「え、ブルーニーさんがですか?」
「ふもっ?!」
近くにいたボン太くんまで反応したぞ。
まぁ高性能集音マイクと重要人物の発言を優先的に拾う機能までついてるから俺達の会話が聞かれても不思議はないか。
そんな機能をつけたおかげでうっかり外で軍機を話すなんてことはできなくなったりしたんだけどな。
まぁ、中の人は肉体的ブートキャンプを受けたクローン兵だからマリオンちゃんズの恐怖を徹底的に叩き込んだ精鋭()だから聞いた話を外部に漏らすことはそうないはずだ。
「最近影が薄くなってきたからアピールしようなんて思ってないんだからね!」
「ツンデレ乙です」
いや、ホントに最近影が薄くなってる。
子供には今も人気なんだけど、ブルーパプワ内では実はヒモなんじゃないかという噂まで流れている始末。
一応デスクワークはしていることを知っているはずなんだが……あ、そういえば俺達の部屋って幹部が出入りするけど他の社員はあまり出入りしないか、まさかそのせいか?
今はとりあえず置いとくとして——
「さて、装備は——」
……おや?そういえば、SDサイズでアプサラスアーマー生成ができるのか検証してなかったな。
とりあえず誰もいない場所へ移動して——
「生成開始(トレース・オン)」
なんちって、って普通に生成されたぞ。しかもSDサイズのアプサラスとか……もうなんか滑稽だな。
「おおぉぉ、ブルーニーさん格好いいですよ!写真写真、後でマリオンズにも送らないといけないですね」
褒めてくれるのは嬉しいが、たまにマリオンちゃんの感性がわからない。
アプサラスアーマーを着た俺は格好いいとはとても思えないんだけど……まぁカッコ悪いと言われるよりは断然良いんだけどさ。
「凄く不服ですがセラーナにも送っておきますね。主人が釣った魚に餌を上げるのも妻の務めですよね」
なんか色々と変な方向へ進化してないか?そこまでしなくてもいいと思うんだけど。
「ところで可動砲は動くんですか?その状態で有線で伸ばせるならリアル触手プレイができますね」
「ああ、実弾、ビーム、模擬弾切り替え可能な上に有線で伸ばせるけど……女の子がそういうこと言っちゃ駄目だぞ」
くっ、誰だ。マリオンちゃんにこんないけないことを教えたのは……あ、俺(以下略)
「さて、人質もいるらしいから遊びは抜きで行くか」
「あ、私もついていきますからね」
一緒に来られると結局俺が目立たない気がするが……だからといってマリオンちゃんの頼みを断ることは断じて無いがな。
「よし、行くぞ」
アプサラスアーマーを浮遊させ、その上にマリオンちゃんが飛び乗るのを確認すると前進。
立て篭もりしているのは今時珍しい一軒家、多分特別地区になる前からそこそこ金持ちだったんだろうな。
でも、よく特別地区で空き巣なんてしようと思ったよな。
死神様の存在は世界的に有名になってるんだが……まだまだ知名度が低いってことか?
「犯人が立て籠もっているのはあそこですね。人質の方も同じ部屋に3人ほどいるようですよ」
3人……なんでそんな家に入るかねぇ。まぁプロの空き巣は住民が居ても気づかれずに盗んで帰るらしいけどさ。
「んじゃ、とりあえず……一斉発射!」
「え」
一斉に模擬弾が降り注ぐ。
砲門で訪問……なんちって……ごめんなさい。
「ヒャッハー!汚物は消毒だぁー!壊れた家は後で弁償するぜぇ!」
うん、いい感じで粉々になってるな。
でもまだまだまだまだまだまだだぜ。
「ブルーニーさん?もう犯人は沈黙して——」
「えー?発射音に消されて聞こえないなー」
続いて大型メガ粒子砲発射!
もちろん模擬弾だけどね。
「いやー、やっぱり蹂躙っていいですねぇ」
「……ま、ブルーニーさんが満足そうだからいいです」