第三十一話
スナイパーキャノンを装備して試射、結果はなかなかだ。
射程はセンサーだけでは10kmぐらいが動かない的に命中率80〜90%、動いて−10%ぐらいで威力はジム改の装甲貫通、シールドで防がれるとシールド貫通して装甲の表面を焼く程度。
これは通常のモビルスーツだとありえないほどの高性能なセンサーと俺自身がモビルスーツなのと射撃が得意だからできることだ。
ジムスナイパー系だとセンサーの有効範囲は7kmに届くか届かないかぐらいで、普通の人間だと4kmぐらい、天才で5〜6kmで命中率は50%〜70%限界だろうというのはギニアスの見解だ。
マリオンちゃんと共有状態だと13kmからでも外す気がしないあたり俺達ってチート?って今更か、もっともジム改の装甲を貫通できないほど減衰するんだけどね。頭部を撃ち抜くのが限界だけどさ。
ガンタンクの有効射程が260kmだから短い気がするけど、実弾だから曲射ができるんだから仕方ない。それに偵察機による観測などサポートが必要なのも忘れてはいかんよ?
大気圏外なら減衰が弱まるから射程は伸びるだろうし貫通力も上がるだろうけど、それは実際してみないと分からない、ギニアスの計算では倍は確実に伸びるらしいけど。
燃費はビームライフル以上、メガ粒子砲未満…としか言い様がない。ただビームは単発式で射出式(長時間撃つことね)にすることもできるが…凄い勢いで燃料を喰うので使う予定がない。
スナイパーキャノンはやはり多少の小型化はされているがそれでもまだ大きくゴツイので射出式を除ければもっと小型化してスリムにできるらしいので第二弾にも期待。
ちなみにスナイパーキャノンを撃つ構えはザメルを思い出す俺がいる。
「それにしても俺達の追加されたメガ粒子砲を見た時のギニアスの顔はウケたわー」
「顎が外れてましたねー治した後『いったいどういう構造してるんだーーー!』って叫んでましたし…その内バラされそうなところが問題有りです」
俺達自身も分からないんだからギニアスに分かるわけがない。
企業秘密で通したけどしばらくジト目でマリオンちゃんを見てた…いい年したおっさんがジト目って。
さて、最近イーさんとジャミトフから何度もルナツーへ増援依頼を請けて欲しいと連絡が来ている。
乗り気ではない俺達にそれでもしつこく依頼して来るあたり切羽詰まってるんだろうけど…やっぱり宇宙での戦闘は不安が残る。
ただ1日に3回も連絡を入れてくるのはやめて欲しい。しかも個々に3回だから計6回も連絡されてくる。
それほどかねー…ジオンの方からは声が掛からないのは有利に進めているからかな。
ジャミトフからルナツーを巡回していたマゼランやサラミスが突如爆発、撃沈されたという情報が入ってきて、詳細を知らんかと尋ねられたがマリオンちゃんは知らないと答えたそうな…まぁ本当に知らなかったんだけどね。
それにぶっちゃけ知った所で防ぎようがないだろ、連邦的には未知の兵器だし。
しかしエルメスかブラウ・ブロ…あ、ブラウ・ブロは有線だからエルメスか。
ん?もしかしてシャリア・ブルはブラウ・ブロじゃなくてエルメスで登場したり?それでララァがジオング…うわーありそうで嫌だな。
じゃあシャアはゼロ・ジ・アール…だったらマジでジオンこえー、俺達マジで宇宙に行かない方がいいんじゃねぇか。
最悪はシャア専用キュベレイとか出てきたら勝てる気せんよ、俺。
ジオンは兵なしだけど兵器が怖すぎる。
連邦は質より量なのに対して一騎当千だから俺達の天敵は連邦よりジオンなんだよ。
まぁ主人公勢が連邦にしかいないからやっぱりどっちもどっちなんだけどな。
「工場の方は順調なようで良かった良かった。チタン合金セラミック複合材も数日中には生産可能になるっぽいし——」
「ブルーニーさん、現実逃避しますよね」
ギクッ、いやだってめっちゃ不安だしさ。
連邦の援軍に行ってモビルアーマー博覧会とかになったらさすがに厳しそうだし。
「大丈夫ですよ。私とブルーニーさんなら誰が来ようと勝てます」
「………まぁ幸い俺達には空気も物質的な意味で食料も要らないから宇宙自体は怖くないしな」
「そうですよ。人の時は、生活を支えるコロニーが逞しくも見えましたが偶にそれは虚像でガラス細工のように割れやすく脆いものなんじゃ…と不安になったものです」
あー地球じゃありえない不安だから分かり辛いが、確かに死と隣り合わせのコロニーでの生活はストレスがいっぱいありそうだ。
もしかしたらスペースノイドの不平不満は結局のところ宇宙で長時間暮らすことによってヒステリーにあるかもな。現代でも潜水艦の長期任務は相当なストレスになるって聞くし。
「ハァ…わかったよ。いつか行くことになるんだから今のうち行っておいた方がいいってんだろ。行くか、宇宙」
「これから先もっと技術の発展すれば私達は宇宙では不利になるかもしれません。そうなってから宇宙の初実戦などすれば余計に不利になり、本当に危なくなります」
「正直俺達個人で宇宙に上がれば戦闘なんてしなくていいから安全だと——」
「それじゃあ食材が選べないじゃないですか!!」
おおう、マリオンちゃんの食い意地はここまで成長したか。これは某アーサー王まで進化するかも…
「あ、その前にギニアスに挨拶を——」
「行きますよ!」
こうして俺達はまた連邦の依頼を請けることになった。
さっきマリオンちゃんは有無も言わさず行こうとしたけど、やっぱり挨拶は必要ということでギニアスに事情説明を兼ねた挨拶に行く。
「ほどほどに頑張ってくれ…だが、ないとは思うが撃破されそうになったら遠慮なんてせず全滅させても構わないよ。君達のモビルスーツには大変興味があるからね……それに」
「それに?」
「主攻はあの紫ババァだ。あいつは無自覚にジオンを滅ぼす」
うわ、紫ババァ発言にもビックリだけどギニアスの先見性にもビックリ。
こうしてわりと暖かく見送られながら連邦の(現在の)三大基地の一つ、ベルファストを目指す。
ジャブロー強襲の被害はアプサラスIIIによって造船所とその格納庫、そしてシャアが爆破に成功したモビルスーツ工場が主な成果だがもう一つ成果があった。
それは造船所の宇宙への打ち上げ設備の全壊。
もっともジャブロー強襲ってこれが目当てでやってたんだから当然といえば当然だけどさ。いざ、成功してみたら宇宙を半ば切り捨てて地上を取り返すことに専念し始めた。
依頼を請ける旨を伝えるためジャミトフと連絡した際に教えてもらった情報だが全国各地で激戦が繰り広げられているらしい。
宇宙に回すはずだった予備戦力を地上に振り分けたことが大きく、一進一退の攻防が続いている…インドネシアとオーストラリア以外は。
実はインドネシアとオーストラリアは俺達が仲介でお互い非公式な不可侵条約が成立している。
ちなみに破ったら俺達がお仕置きすることになっているのは言うまでもない。
もっともオーストラリアの統一されてないせいもあって戦いが全くないわけではないけどな、インドネシアからの侵攻はしないってだけで随分違うしシーレーン破壊も控えることも条約に結ばれているし、影響は結構大きい。
ジオンの司令の階級も決して高い訳ではないから侵攻を命じられた場合は侵攻することになるが、その場合前もって俺達に情報を流して連邦と打ち合わせして八百長戦闘が行われる手はずになってたりする。
それとジャミトフの階級が知らない間に大佐から少将に上がってた。
変なトラブルがあったにせよマダガスカルと南アフリカを取り返した戦果が評価されたらしい。
…あれ?イーさんって大佐だよな?同階級だったジャミトフの派閥って…いや、それ以前にジャミトフはジーン・コリニー派閥じゃなかったっけ?
ま、いいか。俺達に不利になる要素じゃないし…多分。
話は戻して、ジャブローの打ち上げし設備が全壊したせいで宇宙への道は細々としたものになり、現在で一番打ち上げし設備が充実しているのがベルファスト基地であり、それを利用するために来たんだが…それはいい、いいんだけど…
「なぜ俺達が第13独立部隊…通称ホワイトベース隊に載らにゃならんのだ!」
「私達の安全と精鋭部隊の集中運用だそうですけど…」
「そうは言うが整備士とかパイロットとかがビクビクしてるじゃねぇか、それにとっととルナツーに援軍に出せばよかったのになんで俺達を待つかねぇ」
「どうやら私達がルナツー行きを決めなかった場合ホワイトベース隊は地上任務に変更する予定だったそうです。その場合明らかに宇宙を切り捨てるつもりですよね」
どんだけ俺達に期待してんだよ。主人公達送ってたら大丈夫だって、エルメスの1機や2機、ビグ・ザムの3機や4機、ノイエ・ジールの5機や6機……はさすがに無理か、俺達とアムロ達が協力しても倒せる自信がないぞ。
あ、しかも小説版ではアムロは死ぬんだっけ?ネットで見たことがあるだけで読んだことないから本当かどうか知らないけどな。
格納庫に乗り込んでから誰も寄ってこない中、子供故の無謀かカツ・レツ・キッカが俺達の足元に寄って来て文句言っている。
面倒なので細かいことは省略するが、大きく言えばアムロの仇!!だそうだ。
いや、俺達アムロを殺せてないんですが…子供からしたらモビルスーツの腕を斬り落としたことも気に入らないだろうから深く考えるだけ無駄か。
「お前達にはここに入らないように言っておいただろう!謹慎させられたいのか!」
「謹慎イヤー」
「逃げろー」
「待ってよー」
おっと、素人をまとめあげて見事戦い抜いた艦長、ブライト・ノアさんじゃありませんか。
アクシズの脅威vだとせっかく有能なのに指揮バグがあるせいで若干使いづらいキャラだね。
子供相手に本当に謹慎させる訳がないので恐らく脅しだろうけど…ランバ・ラルと遭遇してないが謹慎エピソードはあったんだろうね。
どういうエピソードだったのか原作を知っている身としては気になるがとりあえず今はスルー
「マリオンちゃん、出番です」
「うむ、行って参る」
マリオンちゃん、ホワイトベースに舞い降りる。