第三十四話
現在の俺達の状況。
ケンプファーを喰っても進化なし、宇宙適正は俺達とそう変わらなかったように感じるから当然か。
先生…モビルアーマーが食べたいです。
ゲルググJの腕は喰えなかった。引き千切れた速度があまりにも速くて何処にいったか分からなくなったんだよ。宇宙って嫌な場所だねぇ。
ルナツーまではまだ少し距離がある。
そしてジオン軍襲来。←今ココ
「来るとは思ってたけどさー…順番間違って…ないのか、ホワイトベースは中破判定だしジムキャノンIIは1機中破?だし」
今回のメンツはヴァル・ヴァロ1、ビグロ3、ザクレロ3となかなか機動性に富んだ編成と…なぜドラッツェ?しかもカラーリングは青じゃなくて緑だし…ん?なんか想像より速い気がするぞ。
もしかして更に高機動化したドラッツェなのか?しかも数は20機とか本採用されてるわけ?
あ、腰につけてた妙なものは増槽だったのか、パージしてこちらに迫ってくる。
モビルアーマー隊は俺達を無視してホワイトベースを狙うらしい、そちらはアムロ達に任せるとして俺達はドラッツェを相手するとしよう…楽だしね。
それにNT-1フルバーニアの高機動を活かせば恐らく撃退はそんなに難しくない…はず。
「ええぇぇ、ドラッツェがビームライフルかよ」
ビームライフル普及し過ぎだろ常考。
…あ、俺達のせいですか、そうですか。
「こんなモビルスーツもどきにまで機動力が負けるなんて…さすがにショックです」
いや、モビルスーツもどきだから高機動なんだけどね。
それにしても戦ってみて思うんだけどこのドラッツェはなかなか優秀な機体っぽいんだよな、原作ではやられ役だったがこのドラッツェはなかなかいい。
ジオング同様足がないからコロニー内では使い勝手が悪いだろうけど、そもそもコロニー内で戦闘なんて事態になったら色々問題ありだしなぁ。
宇宙空間なら現在のゲルググにすら勝てる…って、あら?よく見ると上半身がザク改でない改?なんつって…じゃなくて確かドラッツェの上半身はザクIIF2型だったはずなんだけど…本当に色々影響が出てるなぁ。
それにもしかしたらもう半分であるガトルも再設計されている可能性があるな。
ま、ゴチャゴチャ考えた所で何が言いたいかというと、急造戦力では少なくともないってことだ。
「でも俺達の」
「敵ではないですねー」
パパパッと13機撃破、いやーさすがにエースでもないのに時間かけてたら異名である蒼い死神を返上しないといけないだろ?ちょっと気合入れてみたわけだよ。
短時間で数が減って残った敵はビビっちゃってるらしく逃げ腰で戦ってるせいで撃墜しきれない。
「てか逃げすぎだろ!離れすぎてお前らのビームライフルは減衰しちゃって俺達に当たっても装甲の表面しか焼いてないぞ!」
「こんなことならもうちょっと時間かければよかったですね」
「本当にな。仕方ないあっちがピンチっぽいし…それを隙と見て襲ってくるなら大歓迎すればいいし」
「ですね」
ニュータイプというのは本当に反則だと思う。背後からの攻撃なんて何となくで躱せるんだからなー…でもニュータイプ同士の戦いって気持ち悪い。
お互いがお互い理解できるのに理解できないあの感覚はマリオンちゃんと共有しているだけのオールドタイプな俺だけの感覚なんだろうか。
「おっと、釣れた——なっ!」
「これで全滅ですね。あ、あちらも撤退していきます」
と言うか俺達の足止めがドラッツェ達の役割であり、タイムリミットだった訳か…って誰だよ、こんな偏った作戦考えたの。
おっと、それよりドラッツェを喰わないとねー…おお、ハマグリのお吸い物か、ザク改はアサリの鉄分たっぷり味噌汁だったから汁物で統一か?
「おや?機動性が?」
「明らかに速くなりましたね。」
お、地形適正宇宙がAになっとる…ドラッツェでAになるって微妙な気分だ。
…?あれ?ドラッツェで上がってケンプファーで上がらない?…あ、でも機動力だけならドラッツェの方があったっぽいから不思議はないかな?
どうもドラッツェは機動力だけを重視した機体になっていたようで初期のザクII達同様、バルカンですら致命傷になるようだけどさ…昔の人は言いました。『当たらなければどうということはない!』と。
まぁそんな機体だからモビルアーマーの護衛機として開発されたのだろう。
アムロ達の戦果はビグロ1、ザクレロ2か、ちなみに味方の被害はジムキャノンIIが横真っ二つにへし折られてる。でもコクピットからよりチョイ下だから多分パイロットは生きてる。
ホワイトベースって実力以上に結構運がいいよな。俺達と戦って全員生きてるし、ビットでメタメタにやられたのに死んでないし…リュウは結構早く死ぬと勝手に思ってたからな。
そういやジオン側で初キャラ殺しガルシアだったな。ガルマは原作通りだしランバ・ラルは間接的にだし…すごく地味だけど。
ビグロとザクレロを喰えば更に適正が上がるかねぇ?今回の依頼は鹵獲しても母艦のスペースに限りがあるので全て喰うことにしている。その分報酬は色を付けてもらってるけどな。
「さて、ビグロとザクレロとか…これは一気に宇宙の適正をあげろという思し召しだろう」
「ですねですね」
ビグロは鉄火巻き、ザクレロはザクロ…どっちも1字違うだけの食材だね。
この法則でいくとメタスはレタスだろうなぁ、なんという微妙な味だ。
「アプサラスの時と一緒で外側は残しとかないと不自然だから喰う量が少ないな」
「もっとも私達がここに留まってること自体が不自然ですけどね」
そこは華麗にスルーだよ。
俺達も喰ってかないと生きて…生きてるのか俺達?少なくとも死んではないと思うけど…まぁ活動していけない。
そして地形適正が———
「上がらねぇー…何でだよ。ザクレロだぞ?ビグロだぞ?なんで上がらない!」
「やはりヴァル・ヴァロが食べたいですね。あれはどう見てもカニでしょうし」
いや、味の問題じゃないんだけど。
ご都合主義的な展開はなかったものの宇宙適正AになったおかげでゲルググJとは同等に戦えそうな機動力を手に入れた。
これで多少は楽に逃げれるぞ!
ルナツーに到着、あれから襲撃はなかった。
多分エルメス組は戦闘の疲労もあっただろうしな、元々彼女達は軍人としては半人前どころか素人に等しいのだから今までの一方的に攻撃して終わっていた戦闘とは違って命懸けの戦いは俺達が初めてだろう。
サイコミュは…いやニュータイプはメンタルが重要なのは分かっている。
動揺したり焦ったり怒ったりすることでニュータイプとしての能力は不安定になる…もっとも不安定になるというのはプラス方向にも傾く場合があるから必ずしも良いとは言えないが…つまりシャアのピンチに動揺したララァに攻撃が当たったのはマイナスに働いた訳だ。
その動揺は簡単に抑えられるものじゃないだろう。
そういえば勘違いするかもしれないが今回の襲撃と前回の襲撃は24時間以内の出来事だからな。
「それにしても場違い感半端ないな。南アフリカでは連邦は俺達を恐れていたこともあってお客様待遇だったからまだマシだったけど」
「今回は明らかに『ハァ?傭兵?民間人はすっこんでろ!』的な空気がしますね」
お前らより偉い人に頼まれて来てんだけどなー…所詮地上の一部地域でしか得られてない名声か…いや、青いモビルスーツを集中的に攻撃する通称青狩りが全国各地で起こったぐらいだから地球限定の名声か。
冷ややかな視線を浴びせてくるのでこちらは鉛の雨を浴びせてあげようかと思ったんだけどマリオンちゃんに止められたので断念。
一応これからの予定を話すブリーフィングがあるらしいのでマリオンちゃんも出席することになったので今は俺一人だ。
特にやることがなかったのでマリオンちゃん仕込みのハッキングでルナツーにアクセスにチャレンジ、無事成功を果たす。
ルナツーの戦力のほとんどはジムクゥエルとジムキャノンIIという驚きの事実やビンソン計画が半ば破綻したのでコロンブス級が増産されていることなどが気になったことである。
他にもソーラ・システム用パネルが格納されていたりとなかなか物騒な基地だと思う。
『ブルーニーさん、もう帰りましょう』
「突然どうした」
『私が質問する度に嫌味を言ってくるんですよ。顔を見せないのは失礼だ〜とか女が戦場に出るなんて〜とかそんな派手なパイロットスーツ恥ずかしくないのか〜とか…いつの時代の人間なんでしょうね』
「まあまあ落ち着いて落ち着いて」
『あれ?私の思ってた反応と違う…』
「後でジオン側から依頼を請けてルナツーを落とせば合法的に命を持って償わす…いや、捌けるんだから」
『私の予想を上回ってました。それと最後の一文、字が違いますよ』
「いやいや、生きたまま解体してあげるんだから間違いない。人間でもお造りができるかチャレンジ○年生だぜ」
『そんなグロテスクなチャレンジ○年生は廃刊です!』
なかなかマリオンちゃんは手厳しい。
うちのマリオンちゃんを馬鹿にする者は死、ある、のみ。
ルナツーは司令が少佐なんてふざけた宇宙基地であるから部下もふざけたやつらが多いんだろう。
またまたジャミトフ情報だがルナツーは本来左遷先の一つだったことがこういう事態を引き起こしているらしい。
もともとルナツーが存在する区域はコロニーも少なく、ジオンに対抗して作った基地であるために前線になるから左遷なんだとか。
いやーほとんど唯一と言っていい宇宙基地がこの体たらく、いい具合に連邦は腐ってるな。
『ブライトさんが代わりに質問してくれてもらってるのでストレスは減りましたけどね』
「おお、ブライトさん空気読めるね〜お礼として次回戦うことがあったら一撃だけ艦橋を外してあげよう」
『珍しくブルーニーさんが太っ腹だ』
「誰がメタボか?!」
『そんなこと言ってませんよ!』