第三十九話
軍需産業な我らの会社な訳だが、民生品にも手を出したいと思っている。
だって戦争が終わったら需要なくなるからな。
それまで荒稼ぎするにしてもやはり限度があるわけで…新しい何かを始めるにしても何がいいか。
実はギニアス…正確に言うとギニアス開発チームがリリ丸の改造、改修とエルメス…というかサイコミュとビットの解析に取り掛かっているので開発ができないわけだけども。
んー……そうだ乗っ取りをしよう。
資金だけは豊富だから中堅どころの会社を乗っ取って民生品はそちらで何とかしよう。
そうするとどんな会社を乗っ取るか悩むな…原作で出てくるような会社は今の俺達の資金では難しい。
個人的には軍需産業にも転用できそうなジャンルがいいんだが…アイナに相談してみるか。
「アイナさん、何処かの会社を乗っ取ろうと考えてるんですがあまり軍需産業からかけ離れている業種は嫌なんですけど何か思い当たる業種はありませんか?」
「それなら建設機械メーカーなんてどうでしょう。私達と重なる部分は多くありますし、基地の建設にも必要ですし終戦しても復興に必要でしょう」
なるほど…しかしそれは他の大手も同じことをしてそうな気もする。
後発の俺達が入り込む余地はあるだろうか?あ、でもティターンズというコネもあるし、末席に座らせてもらうことぐらいはできるかな。
キャタピラ技術でガンタンクかザクタンクを作ってみるか?
傭兵家業では俺達以外の肉入りモビルスーツには後方支援だけ頼むと仮定すればタンク系もありなんだよな、俺達は余裕で躱せるし…タンクにスナイパーキャノンも有りかもな。
復興需要を狙うのも確かに良い狙いだし…よし、そうしようか。
「という訳で良さそうな会社を探して来てください」
「あれ?マリアさん達が投資するて話しじゃ?」
「私達は傭兵家業で当分忙しいですから」
えぇー…とアイナが何処か納得いかない声を上げているがそこはスルー。
これからのティターンズの大黒柱ジャミトフさんとO☆HA☆NA☆SHIしないといけないし…いや、普通に話し合うだけだからね?リアルでビーム砲撃ったりしないよ?この世界に非札証設定なんてないから。
「あ、それと近いうちジオンから持続的に大量発注があると思うから頑張ってね」
「え?!それなら投資は最初から設備や拡張に投資しましょうよ?!」
それもそうだな。
「アイナさんにお任せしますー」
なんか文句言っているがマリオンちゃんは華麗に受け流す。
民生品への移行ばかり考えてたけど、今回は需要ができるんだから問題ないんだった。
「それでこの攻略案どうですか?」
という訳でジャミトフの爺ちゃんに直談判。
『またいきなりだね。もう少し心の準備というものをさせてほしいものだが…まぁいい、この攻略案を採用しよう。それで報酬だが…正直これは厳しいと思うぞ』
「やっぱりそうですか…何とかなりませんか?そちらが必要な物というのは分かるんですがこちらにも諸事情がありまして」
『しかしだね…』
「こういう言い方はあまりしたくないんですが、正直無理矢理でも手に入れるつもりなんですよ」
『……つまり被害が増える前に報酬として引き渡せと?』
「YES」
『……わかった。用意しよう、ただしこれは貸しだからな』
「まぁいつでも返せそうなのでいいですよ」
『……』
爺ちゃんは憮然としている。そりゃ貸しを作っても通じない相手ってのはしんどいだろうね。
「じゃあよろしくね。お爺ちゃん」
『孫として扱って欲しいなら一度ぐらい顔を見せたらどうだ』
「んーそれはまだしばらく先ですね。もう少し私達の身の安全を確保できたら、ということで」
『……正直私達よりおぬしらの方がずっと安全だと思うがね』
それを言っちゃ—おしまいよ。
傍目から見ると24時間モビルスーツの乗っている、もしくは近くにいる段階で普通の政治家達よりガードが固いともいえる…けど多分言いたいのはそれほど用心しなくても俺達は十分強いだろ、と言いたいんだろうね。
まぁ身の安全という言葉自体は間違ってないんだよ。俺達の、ではなくて、オリジナルマリオンちゃんの、安全だけどな。
「という訳で来月の7日ぐらいからジオン基地攻略戦に乗り出します」
現在の日時は12月21日、つまり攻略作戦実行は1月7日になる。つまり一年戦争は名前を変わることが確定したわけだ。
なぜ作戦がこれほど先なのか、それはリリ丸の第一次改修が終了するからだ。
思ったより簡単にミノフスキークラフトを搭載することができるというギニアスはさすがだと思う。
ちなみにクリスマスが近づいているので皆さんどっか浮き足立っている。
戦争というのはどうしても死亡者は男の割合が多いため、独身女性が多くなる。
実はうちの会社の社員は元軍人がほとんどなので男の割合が多いため、そして家族が居ない者がほとんどなのでクリスマスイベントとして色々な地域から集めた女性とのお見合いパーティーを発表したのが原因だったりする。
あまり禁欲生活が長いと治安悪化に繋がるからな。
シローとアイナとその親衛隊が抑えてはいるがいつまで保てるか分からないため改善の一手だ。
ちなみにオーストラリア難民達はジオンを恨んでいる傾向が強いのでジオンに友好な地域から女性を集めるなど気を使っている。
蛇足だが軍機が多数ある会社なので家族は別の島に住むことになっているので多少不満があるようだが現状よりは良いと前向きなやつが多い。
「私達にそれを聞かせてどうしろってんだい?」
「どうするかを聞こうかと思いまして、このまま普通に会社勤めもいいですし、私達と共に戦場を駆けるてもいいです。自由意志ってやつです。モビルスーツなども結構余ってますし、今回の兵站は連邦持ちらしいですから戦力はいくらいてもいいんですよ」
「ほう、それは太っ腹なこった。これがコネの力ってやつかねぇ」
シーマ様はそういうのに苦労してそうだしな。
直属の上司はアサクラ、更に上がキシリア…うん、色々な意味で死亡フラグ満載だ。
「同行する場合、主軸はゲルググキャノン特殊仕様で後方支援、その護衛にゲルググという編成になります」
「それじゃ前を務めるのは嬢ちゃん達だけでやるつもりかい」
「その通りです。そもそも時間短縮のための後方支援であって勝つための後方支援ではありませんから」
「ハァ…わかってたけどむちゃくちゃだねぇ〜嬢ちゃん達は」
呆れた様子のシーマ様だが、何処かホッとしているように感じるのは恐らく今までの仕事によるトラウマか何かだろう。
ちなみにゲルググキャノン特殊仕様というのは肩のビームキャノンを撤去して両肩にガンキャノンと同じ240mmキャノン砲を搭載したものだ。
ビームキャノンの方が懐的には安くて済むんだけど兵站は連邦持ちってことだし、そもそもビームキャノンの射程は収束率や出力の関係上短いため、実弾で曲射できるキャノン砲を採用している。
まさか会社で少数ながら連邦の兵器を生産してるとは…アイナさん営業掛け過ぎでしょ。
「それでシーマさん達はどうします?嫌なら会社の警備部にリリ丸の運用人員だけで——」
「もちろん行くよ。そうだろ、お前達」
「「「もちろんだぜ!姉貴」」」
「姉貴言うな」
「分かりました。ミデア6機用意しますから人員の配置はそちらでやってください…あ、それと無事帰ってきたら参戦ボーナスと歩合制ボーナスもありますから気合入れてくださいね…あ、注意事項としては私達の収入は契約以外にも兵器の鹵獲というものがありますからできるだけ壊すのは最小限でお願いします」
「ハ?最小限って…ガチの戦闘中にかい?」
「はい、私達だと基本的にコクピットだけビームサーベルで焼くのが基本ですが、そこまでは期待しませんよ。ただ私達の周りに攻撃をしないでもらいたいだけです」
「………どうやら嬢ちゃん達の強さを見誤ってたようだね」
「正しく蒼い死神というに相応しい」
「コッセルさんも正しく海賊ですよね」
「プッ」
笑ったのはシーマ様です。
まぁだから誰もツッコミを入れないんだけど。
「さて、そうと決まればコッセル、準備しな」
「あいさー…野郎共!早速取り掛かるぞ!」
まだ結構日数があるのに何をするのか…って思うじゃん?
まぁシーマ様本人はもちろん、その配下の皆さんにも言えることなんだけど地上戦をしたことないんだってさ。
そりゃ汚い仕事ってのは地上より宇宙の方が多いからね。地上は汚れ仕事してくれる人なんていっぱいいるから。
おかげでモビルスーツやザンジバルの格納庫などで転落する事故が数件あったりする。
幸い死者や障害が残ったりするほどの大怪我はなかった。
これは宇宙生まれだからっていうより艦内は無重力という先入観が抜けないだけなんだけど…コロニーって重力あるし。
それだけ艦内で過ごしてたんだろうな。
一応対策として衝撃吸収マットを敷いたから負傷すること自体は減ったので後は慣れてもらうしかないな。
こう…なんだろうこの感じ………んー………ああ、ペットを躾ける感じに似てるのか。
「あ、そうだ模擬戦をするなら私達も手伝い——」
「「「「「いえ、遠慮しておきます!」」」」」
「……早い上にハモらなくてもいいじゃないですか」
ほとんどの兵士の顔が真っ青になった。
一応もう仲間だからな?殺したり怪我させたりするつもりはないんだがね。
あ、そういえば航空戦力も用意しておいたほうがいいだろうか?…だけどザンジバルはその図体の割りには搭載数が少ないし、ミデアでは発進できない。
ギニアスの話だとホワイトベースとザンジバルではホワイトベースの方が格納スペースが広いらしい。
原因は設計自体にも粗があるが装甲の重さの違いやミノフスキークラフトとエンジンのサイズの違いなどである。
つまりミノフスキークラフトの搭載で格納スペースが増える!…なんて簡単にはいかないんだよなー、簡単な倉庫程度なら増やせれるが本格化するには再設計が必要だ。
まぁ今回のように兵站が相手持ちにならないとシーマ様達には早々出撃の機会なんてないだろうけどな。