第四十四話
艦艇があったせいもあり、かなりの数のモビルスーツが鹵獲できたが新たに8機加えることができたがこれ以上素人を増やすと足を引っ張る可能性が高いので残りは基地の放置。
そして2日経過した現在、俺達の目の前をジオンの侵略部隊第二陣が通っている。
前回と違い、艦艇はほとんどなくモビルスーツが主体となっていて、歩行しているものやドダイに載っているものまでいる。
そしてもう1つの特徴として砲戦仕様のモビルスーツが特に多いということも上げられる。
変わり種としてはザク改の砲戦仕様だろう。
砲戦仕様なのは恐らくゲルググの大量生産が行われている現状ではザク改は型落ちということと前回狙撃で痛い目に遭ったからだろう。
まぁ正直読んでたけどね。
さて、今回の流れをご紹介。
1.ゲルググキャノンが適当に砲撃。
2.そのゲルググキャノンへ至るルートに俺達が潜んでおく。
3.俺達とは反対側にシーマ様が率いる30機のゲルググが地中に潜って待機。
4.ゲルググキャノンを倒そうと向かうと俺達が攻撃してからシーマ達が、反撃として砲撃を選んだ場合シーマ様達が突撃を仕掛けて俺達も参戦。
という流れになっている。
ぶっちゃけ中規模基地を攻略した時の焼き直しだ。変わったことといえばシーマ様達の数が増えたのにゲルググキャノンに付いている護衛の数が減ってないってことぐらいだ。
さて、作戦開始。
砲撃が敵陣中に命中を確認、次々砲弾を降らせるが敵は大体わかっていたのだろう、慌てず騒がずザク改キャノンやマゼラベースキャノンが砲撃を逆算して狙いを定めようと…した時にシーマ様達が地中から這い出て一斉射撃、無警戒だったこともありほぼ1射に付き1機が撃破されている。
ただし今回は撃破したモビルスーツを除いてもまだ170機以上(逆探知される可能性が高いから詳細は調べれてない)の大部隊であり、恐らくだがこちらも無傷とはいかないだろう。
「とか思ってたけど…こいつは——」
「EXAMシステムですね。確かイフリート改…だったはずなんですけど」
「ゲルググに乗せられてるな、しかも魔改造ゲルググことシュトゥッツァー風ときてる」
厳密には原作のシュトゥッツァーがジャンクで改造されているのに対してこちらはエース機として正規品で改造しているようだ。
つまりパイロットは——
「ニムバス・シュターゼン、か」
「あの人とは一度話したことがあるんですけどギニアスさんと声そっくりですよね」
中の人が同じだからな。
それを言ったらマリオンちゃんだってクリスチーナ・マッケンジーとか灰原哀とかリナ・インバースとかキャナルとか乱馬(女)とか綾波レイとかペンペンに似てるじゃないか。
そして改めて思う、めぐねえ仕事し過ぎだろ。
どんだけ主役級で出てんだ。
最近はちょっと仕事少なめだけどな。
『キサマか!!蒼い死神というのは!』
「……これって答えなくちゃ駄目かな?」
「暑苦しいですしスルーでもいい気がしますね」
『死神だろうがなんだろうが騎士であるワタシがキサマを成敗してくれる!!』
「あ、人の話聞かないタイプだ」
「スルー確定ですね」
しかしせっかくのゲルググなのになんでヒートホーク?ビームサーベルが実用化されてんだからそっちにしろよ、重量があって運動性が悪くなるだろ。しかも2本…二刀流に憧れる年頃か?
「変なやつだがEXAMシステムオリジナルを使っているとなるととシーマ様達には荷が重いだろうから俺達が相手することになるが」
「問題はこの寡兵で勝てるかどうかです。私達に負けはありませんが被害が大きくなりそうです」
相手が陸戦型ガンダムより優れているゲルググシュトゥッツァーであるとはいえ、現在の俺達はあの時よりパワーアップしている。
そのパワーアップとゲルググシュトゥッツァーどちらがより進化したかというと…当然俺達だ。
『くっ、なんという機動力だ。なぜあの程度のブースターでこれほどの高機動を?!』
一人で盛り上がって悪いんだけどお前後回しだから。
マリオンちゃん入りEXAMシステムの凄いところは行動パターンの豊富さ、先読み能力にある。
つまりマリオンちゃん入りEXAMシステムの真骨頂は回避能力にあるわけだ。
「つまり攻撃を当てるのはなかなか骨が折れるんだよねーお互い」
「ニュータイプと戦っているのとほとんど変わりませんね…ニュータイプ対策に作られたEXAMシステムがニュータイプと変わらないなんて因果なものですね」
ニュータイプであるマリオンちゃんがあってこそのEXAMシステムなんだからニュータイプに近くて当然といえば当然だけどな。
お互いの攻撃が当たらないので俺達はニムバスと闘いながら他のモビルスーツも相手にすることにした。
こういう面倒な敵は燃料切れかオーバーヒートを誘うに限る。
ハマーンが乗ったキュベレイだって物資切れを誘い、疲労させて狩るのは基本だぜ。
さすがにBDよりは強いけどそれ以上に強くなってる俺達では当時のBDの方が強く感じる。
「シーマさん、キャノン隊の砲撃も疎らになってきましたからそろそろ撤退準備をお願いします」
『了解、聞いたねお前達!鈍くさい奴は置いてくから覚悟しな!』
『『『イエッサー!』』』
ゲルググキャノンの部隊、略してキャノン隊とは安直な名前だが傭兵というのは臨機応変に隊編成を行うことからあまり隊名は考えていない。
そしてキャノン隊の砲撃が疎らになった理由、それは弾薬切れではなく、乱戦しているからでもない。
それは航空隊に攻撃されていてそれの対応に追われているからだろう。
対応に限界を感じたら信号弾を上げるように指示してある…が、唯一の心配はそのタイミングを見誤らないかだがそこは信用しよう。
「お、信号弾だ。思ったより早いのは素人が混ざっているため早く切り上げたのか、思った以上に航空隊の攻撃が厳しいのか、後でレポート上げさせるか」
「ですねー…シーマさん達の撤退を確認」
「さて、本気で暴れますか」
何だかんだ言ってやっぱり味方がいると気を遣う…今まで敵しかいなかったものだから味方も敵に見えてしまうんだよ。
それに俺達が無双して変な勘違いをして天狗なんてなられたら目も当てられないしな…もっとも俺達が天狗になってる可能性は否めないが。
状況は変わったがやること変わらず、ニムバスは牽制だけにして本命の攻撃でガンガンゲルググやザク改キャノンを撃破していく。
おのれ卑怯な!とか正々堂々戦え!とかそれでもキサマは騎士か!とか叫んでるが一言言わせてもらおう、大勢で1機のモビルスーツを狙うのは正々堂々か?それと俺達は騎士じゃない。あ、二言になってら、こりゃ失敬。
もう戦闘描写なんていらないだろうと思えるぐらい一方的な戦いが繰り広げられ、既に80機は鉄クズと化しているのだけど…
「撤退しないな」
「しませんねー食材が傷んじゃうじゃないですか」
半分には到達していないとはいえ、かなりの損害を出しているにも関わらず撤退しない。
「って、なんか来たな」
「味方も巻き込んだミサイルの雨ですか?!食材が!!」
気にするのはやっぱりそっちなんだね。
だが、それも仕方ないだろう。食道楽は人間の性だ。
それにしても空一面ミサイルってどんだけ撃ってんだよ。
「ブルーニーさん!ここで緊急ミッション発動ですよ!ミサイルを着弾させずに全弾迎撃してください。クリア報酬はボーナスポイント3ポイントです」
「いや、ミッションはともかくボーナスポイントってなんだよ」
「1兆ポイント貯まったら私があんなことやこんなことを——」
「やる気が出るかどうか微妙なライン過ぎるだろ!1兆ってどんだけ先の話だよ!」
とか言いつつ張り切って迎撃。
盾を外してマシンガンを装備して手数を増やす。
それはもうどっかの誰かみたいに銃身が焼きつくまで!的な雰囲気で撃ち続ける。
この味方のことを考えないやり口、キシリアか?でもギレンもやりそうだしな。
「くそ、お前らも俺達に攻撃してないで迎撃手伝えよ!」
「決死隊ってやつでしょうか」
だとしたら面倒にも程があるっての。
あ、でもニムバス、他は逃がしてもお前は逃さないぞ?ここで逃すと何処で会えるかわからないからな。
俺達の前へのこのこ現れたのが運の尽きってやつだ。
「あ、ニムバスの挙動がおかしい。今がチャンスか!」
スナイパーキャノン装備だからフルバーニアン仕様とは比べ物にならないがそれでも地上では頂点を狙えるw速度で近づき、ビームサーベルをコクピットに突き立てる。
『これでやっと解放されるのですね…』
「いやいや成仏はさせないからな?それにしても挙動がおかしかったのは何でだ」
「それは多分パイロットと私が正反対の判断を下してEXAMシステムがエラーを出したのかと」
『その通りです。元々ニムバスとの共有率は30%ほどしかありませんでしたから…』
へー、やはりパイロットを選ぶんだな、と思いつつ未だに振り続けるミサイルの雨を迎撃中…そろそろ本当に銃身が焼き付きそう…という思いだ。
ぶっちゃけ勝手に燃料で冷却されてるっぽいからいつまでも撃ち続けられるみたいなんだよな。
「ちなみに共有率は一般兵だと5%ほどで長時間起動すると私の本能に負けて暴走状態になります。この場合の暴走はEXAMシステムの暴走より酷いことになります。それとブルーニーさんとの共有は200%で完全に支配されちゃってますね私」
…もしかしてマリオンちゃんの妙なカオスっぷりって俺が知らないうちに共有で変な影響を与えたのか?
結局2分もの間ミサイルの雨を降らされたが1発も地面に着弾することはなかった…が、めっちゃ疲れた。ニュータイプ部隊との戦闘より疲れたぞ。
それと残っていたジオンの部隊はミサイルの雨が切れる前に撤退した。
もしかして俺達が迎撃するのをわかった上での攻撃だったのか?だとするとミサイルは俺達への枷の1つだったのかも?
何にしても無茶な作戦だなぁ。
おかげで燃料が結構減ったじゃないか…と言ってもまだまだある。
ちなみにどれぐらいあるかというと10000は超えていると言っておこうか。
実は宇宙に上る前の話になるんだが、どの程度食事がとれるか疑問があったんで海底食材を喰いに喰っていたのだよ。
燃料の心配がなくなったのでそれから燃料表記がなかったのだ。
「さて、戦闘も終わったことだし…喰うとするか」
『え、なに、ち、近寄らないで』
「良いではないか良いではないか」
『あーれー』
うん、マリオンちゃんがカオスなのは俺の影響じゃないっぽいよな。
「大丈夫、貴女は私と1つになるだけだから」
『なんだか私と貴女は一緒のような気がしないんですけど!』
「気のせいよ」
『嫌、ちょっと待っ——アァッッッ!——』
このマリオンは感じ易いらしくアッサリどっかへ逝った。いやまだ吸収してないんだけどね。
俺達の楽しみはここからだ!!