第四十七話
2ヶ月もキャリフォルニアベースで工場が稼働すると生産される量はなかなかのものとなる。
そうなると連邦はジオンが契約を反故して防衛体制を整える時間稼ぎではないか、と勘ぐってしまうのはある意味仕方ない。
その可能性はあるのでジオンに1週間に1度、生産された兵器を宇宙へ上げることを義務付けることにした。
監視は連邦から5名、うちから5名が行うことになった。
合同じゃないと認めないとジオンさんからのご要望でこうなったんだけど…どんだけ連邦を嫌っているのか、それともうちが信用されていると思うべきか?
「それにしても2ヶ月ここに拘束されるのは辛いな」
この契約は『蒼い死神』が(両軍に対しての)抑止力的な役割を果たすことになっているので動けなくなっちゃったわけさ。
ちなみにこの取引を申し込んできたのはスカーさんだったのだ。ぶっちゃけ予想外過ぎる。
「幸いなのはハワイの使用を認められて会社とのやりとりが簡単になったことですね。それに1週間後にはサイコミュが2機生産されて届くことでしょうか」
そう、ついにサイコミュが生産されて——ってなんで2機なんだろうね。俺もわかんない。
そもそも俺達が帰る頃にはできてるとは言ってたがこれほど早くとは思ってなかったよ。
ただビットの小型化には頭を悩ませているらしい。
そういえばビットには核融合炉が搭載されているから大型になっている。
それならエネルギーを生み出すのではなく補充するようにしてみてはとアドバイスと言う名の原作のカンニングをギニアスに伝えてみたところ何とかなりそうとは言っていたから期待できるだろう。
さて、暇ができたということで世界全体の情勢を整理してみよう。
まずは攻勢に出ている連邦の現状。
ジャブローは強襲された関係上、生産拠点はインドに移されたが司令部は動かず重要性は変わりなし。
生産拠点が移った影響で主攻は人件費が安いこともあってかインドとなり、アフリカを包囲するのを目指してパキスタン、アフガニスタンを落とし、現在イランに進行中。
アジア方面はギニアスがやる気が無いため自然停戦中、厳しい山々が多くて進行ルートが狭い上にガッチリ固めているのでお互い手が出しようがないと言うのも1つの要因だ。
アフリカは以前俺達が戦った後と変わりなし、ただし現状を打開するために近いうちに何か動きがありそうだ。
モビルスーツ開発はどうやらジオンとは違い、水陸両用ではなく水中専用モビルスーツの開発を行っているとはイーさんからの情報である。
主力モビルスーツは量産型はジムクゥエル、エース機はジムカスタムで一旦落ち着いて地上をある程度取り返すことを優先するようだ。
ひょっとするとキャリフォルニアベースを手に入れるとまた開発に力を入れるかもしれないな。
そして守りに入っているジオン。
正直言えばジオンは第3次地球降下作戦を行った後はあまり戦線を動かしていないのでギレンの野望のジオン編で始めた状態とそんなに変わっていない。
ただ原作を知っている身としては善戦と言えるだろう。
それに企業や政治家などの人脈を通して着々と地盤を築いているので『現在は』原作以上の勢力といえる。
問題は田舎だった南アフリカとは違い世界有数の都心であるキャリフォルニアベースを撤収した際に企業や政治家達がどういう反応を示すかによっては原作通りの流れとなる可能性も秘めている。
連邦軍のインド侵攻はどうやら最初からある程度の戦力で攻めてきた場合は放棄するようにしていたらしく、被害は軽微である。
恐らくだが戦線を拡大しすぎたという自覚があり、守るつもりがほとんどなかったのだろう。
そしてイランも放棄するつもりだろうとは司令談である。
トルコ、イラク、アルメニア、アゼルバイジャンあたりで本格的に防衛線を敷くらしい。
宇宙に関してはルナツー攻略戦失敗により配下はともかく指揮をしたドズルが降伏なんてしたものだから権威が低下、相対的にキシリアの権威が上昇しているようでなかなか嫌なジオンが構成されようとしている。
モビルスーツ開発は将官がそれぞれ好き勝手に開発するという非効率なのはやめていないがギレンが会社同士をトライアルさせていたのはやめて共同開発となったことにより多少は費用が抑えることになる。
主力モビルスーツはゲルググ…かと思ったんだがギニアスから聞いた話ではゲルググMが近いうちお披露目されるらしく、それに伴いエース機も変わる予定だとか。
そもそも今のゲルググはジムIIと同等といった感じなのでジムクゥエルには一歩及ばないので次期主力機を早々に開発していたそうな。
俺達のフルバーニアに触発されてか、機動性加速性を重視した機体も開発しているとはノリスさん情報だ。
あ、後は水陸両用モビルスーツは連邦にも優ると更なる発展型を開発する方向で進んでいるらしい。
後、俺達にとっての問題は基本的に宇宙攻撃軍の情報しか流れてこない。これは今後の課題だ。
キシリアは謀略好きなので動向は把握しておきたいんだが…身内はしっかり囲い込んでいるため、なかなか難しそうだ。
連邦はモビルスーツのスペック上は有利に傾いたが俺達が色々やっちゃったせいで配備されている数が少なくて攻めるに攻めれない。
ジオンはモビルスーツ開発に遅れてしまったことと兵数的に戦線をこれ以上広げられないことから防備重視になった。
まとめていうと連邦が一部奪還に成功しているものの戦果としては微妙、というのが現在の状況だ。
「これからどうなるのかねぇ」
「戦争が続けば私達が儲かるんですけど…そろそろ何かがありそうですから上手くいかないと思います」
「マリオンちゃん、わざわざそういうフラグっぽいことは言わないでくれ。マリオンちゃんが言うと洒落にならなそうだから」
「当たるも八卦当たらぬも八卦ですよ」
「いつから占い師に?」
「嬢ちゃん達に荷物が届いてるよ。差出人はギニアスだってさ」
「やっと届きましたか、ちょっとその荷物を持ってお散歩してきますね」
「結構厳重に封がされてるけど何が入ってるんだい」
「秘密だ」
「やっぱりそうかい。あまり遠くに行くんじゃないよ」
「シーマ様は俺達のお母さんな件について」
「馬鹿言ってないで早く行きな!」
という訳で見られたら困るのでこの日のために掘っていた洞窟に居ます。
俺達の隠れ家だ。
まぁ、後1ヶ月と3週間程度で必要なくなるんだけどね……1回生き埋めになったのはいい思い出だ。
「さて、早速いただきますか!」
「ですね!最近仲間が増えたせいで満足に食べませんから!」
そう、あまり不自然にモビルスーツとかを消したら怪しまれるから迂闊に食べれないし、結構みんな真面目に見張りとか見回りとかしてるせいで食べる機会がないんだよ。
もういっそシーマ様にはバラしてしまおうか悩んでしまうぐらいには困ってる。
それでも海底食材を喰って燃料は着々と増えてるんだけどね。
味が問題なんだよ…特にマリオンちゃんが美食家というか健啖家というかだからさ。
「では全ての金属に感謝を込めて——」
「いただきます!」
パクっとな!……うん、味はレバニラ炒めだったよ。
実は俺、レバーが好きじゃないんだよなぁ。
テンション下がるわー。
「美味しいですね!」
「お、おぅ。せやな」
さて、肝心なのはステータスだ。
せっかく我慢して喰ったんだから期待したい。
ステータス!オープン!!
特殊オプション: EXAMシステム(マリオン・ウェルチ)
マグネットコーティング
憑依
ハイドロジェット
電磁波吸収塗料
アンダーグラウンド・ソナー
ミノフスキー粒子散布
ミノフスキー粒子体(マリオン・ウェルチ)
ミノフスキークラフト(低)
ミノフスキー粒子体(ブルーニー)
サイズ変化
マリオンちゃんニュータイプ占い
サイコミュ
ニュータイプ(カツ級)
ん?期待通りの文字が追加されてるんだけど…なんか変なのが一番下に追加されてるぞ。
もしかしてマリオンちゃんとの共有に頼らなくていいのか?!
……でもなぁ、ニュータイプの中でもっとも間抜けな死に方したカツと同レベルって…ぶっちゃけ縁起悪すぎる。
「どうですか?」
「期待通りサイコミュは搭載されたっぽいけど…なんか俺もニュータイプになっちゃったっぽい」
「……本当ですね。ほら、ブルーニーさんも感じませんか?」
「微かにだけど、確かに何かを感じる…もう1個喰えばひょっとすると…」
「ええ、早速食べましょう!」
うえぇ、自分で言ったもののぎもぢわるい。
これで変わってなかったら連邦に八つ当りしてやる。
………あ、変わってる。カツからシドレに変わった……ってこれはレベル上がったのか?下がったんじゃね?
俺の記憶が確かならシドレってシロッコがジェリドに付けたサラ・ザビアロフじゃ無い方だよな?
シロッコに見出されたんだからそれなりに才能はあったんだろうけど…正直微妙すぎるだろ。
「んー…ほんのちょっとだけ感じるようになったような…正直誤差の範囲ですね」
バッサリと斬られたな。
まぁ、そんな気はしてたけどな。
何にしてもサイコミュは搭載できたんだからビット、もしくはファンネルは使うことできるだろうから良かった良かった。
「次は是非エルメス自体も食べてみたいですね。私の予想ではロールキャベツではないかと思ってるんですが」
「案外マスカットだったりしてな」
「それは意外過ぎます」
と言うかサイコミュだけだからレバニラ炒めだったのだろうか、これがエルメスなら味はしないのか?
もし別の味なら是が非でも何とか外装作りを頑張らねば…しばらく宇宙へ行く予定ないし、鹵獲は難しそうだしねぇ。
「そういえばザンジバルも食べたことなかったですね……ぜひ食べてみたいです」
リリ丸逃げてーめっちゃ逃げてー。
なんにしてもニュータイプレベルを上げるためにサイコミュは作らせて喰わねばな……あの不味いのをまだ喰わないといけないってのは苦痛だけどさ。