第五十二話
ギニアスに新しい仕事を押し付けてきたし、ついでにカーネルさんは元気そうだったし…ギニアスの仕事量に関して文句言われたが今度のは緊急性が高いので勘弁してもらった。
シローはモビルスーツ治安維持部隊を率いて忙しそうにしているが市民を守る仕事なのでやる気は十分。後、新人教育にも力を入れている。
そういう意味ではアイナも今はほとんど軍需産業だが民需にも手を出し始めたことによって精神的に楽になり、余裕ができたのか立派な社長に進化し続けている。
あ、それとなぜか黒い三連星で唯一生き残ったガイアだが、なぜかうちで働いてる。
本人に聞いても要領を得ないがマリオンちゃんが嫌な気配はないと言ってるし占いに出たってことは味方判定ということっぽいので、現在はまだ若いシローのサポートとコッセルと組んで死神の陽炎の精鋭化を進めている。
シーマ様は官僚達と仲良くSMプレイをしている…いや、これがあながち揶揄ではなく、本当に官僚達がMっぽくて、働かせれば働かせるほど喜んでいるらしい。
ニューギニア島はとんだ変態島だったようだ。
政治家に関しては都合が悪い人間は消えてもらった。とは言っても何人かは殺ったがほとんどは不正で刑務所に放り込んだ程度だ。
今ではほとんど一党独裁制と化している。
そして肝心の俺達だが、現在向かっているのは当初の予定通り宇宙引越公社の本社へ…と思ったんだけど、またしても邪魔が…いや、邪魔じゃないんだけどさ。
「ブルーニーさーん、キャリフォルニアベース攻略の報酬が届きましたよ」
マリオンちゃんに言われるまでその伏線…ゴホン、報酬を忘れてた。
「それにしてもこれが二次小説とかだったらアッサリした展開でユーザーを萎えさせること必至だな」
届いたコンテナを開けて本物であることを確認してつい呟いてしまった。
「まさかこんなに簡単に手に入るとはな…ブルーディスティニー3号機」
もっともEXAMシステムは載せかえられてNT-1…いやNT-2だったか…なんだけどな。
ただしこの選択肢は間違いだったとしか言い様がない。
いい加減ピーキーなNTシリーズにEXAMシステムなんか載せたら人間が動かせるわけないだろう常考。
実際テストとしてアムロが乗ったらしいが…暴走して危うく死にかけたとか、南無。
唯一の収穫はリミッター解除されているNTシリーズをアムロが操作自体はできていたことから更に高性能化しても対応ができるということがわかっただけである。
さすがEXAMシステム。
いや、先にアンチニュータイプ兵器にニュータイプ乗せてどうすんだよ、とツッコミを入れる方が先か?開発者の思惑と連邦の思惑の相違ってやつか。
一応撃墜王ことテネス・A・ユングや宇宙のゴキ○リことヤザン・ゲーブルなどの連邦のエースにも試させたが案の定暴走…てか例に上げたパイロット、中の人が一緒だ。
こうして粗大ごみが出来上がったわけだ…同胞をこの扱いは少し寂しいがな。
ぶっちゃけEXAMシステムはニュータイプが基となっているだけのことはあって兵器としては不安定だから仕方ない。
それでも俺達という異例があったため研究していたようだが報酬として貰い受けることになった。
一応ジムカスタムなどにも載せていたそうだが暴走するんで諦めたらしい。
「これで最後の私が揃いました」
「長かったような、短かったような。厳密にはネット小説に換算すると51話分ぐらい」
これで連邦の最新鋭機のデータ取りができる。
今までは俺達自身とエルメス以外は量産機しか手に入っていない現状、なかなか嬉しい土産だ。
勘違いしないで欲しいのはこれがご都合主義ではなくちゃんと理由があるがそれはそのうち語るとして。
「じゃあEXAMシステムを美味しくいただくとして本体は予定通り解析に回せばいいんですね?しばらくは別の開発に忙しいでしょうから倉庫行きでしょうけど」
「ああ……で、あのマリオンはどうなんだ?」
「それが……もう少し近づけば聞こえると思います」
「?」
言われた通り近づいてみると声が…いや、これは…
『ア……ア……アッ……ウー……アハ、アハハ……ボヘェ』
「……もしかして?」
「どうやら何回も分解、解析、暴走などでもう1人の私は壊れてしまったようです。おお私よ、壊れてしまうとは情けない」
「お前はどこぞの王様か!前にも同じようなネタやらかったっけ?」
『ハッ?!私はいったい』
「なんか復活したぞ。王様のセリフは復活呪文だったらしいな」
「もうブルーニーさんったらーお前なんて…」
「聞いちゃいねー」
しばらくマリオンを交えて雑談する。
話してわかったのはどうやらクルスト博士はBDからジムカスタムに載せ替えてテストした際に苦痛を与える人間だと本能的に判断して殺してしまったらしい。
それからはほとんど意識がない状態で今に至るとのこと…あー、確かEXAMシステムはクルスト博士以外は解析もろくにできないぐらいオリジナリティが強いって設定があったんだっけ?もしかして渋りながらも応じたのはこの辺が理由かも。
正常なマリオンだったらアムロと共鳴してアムロ×EXAMシステム=無限大!的な展開もありえたわけだ…そんなことになれば蒼い死神無双ゲーが白い悪魔無双ゲーに変わるだけになってたな。
ん?そもそもフルバーニア仕様で無双してたか。
この前も宇宙で元気よく19機のゲルググを3分も掛からず全滅させた上にゲルググJに乗るシン・マツナガを中破させたとか、いい感じに原作よりパワーアップした逸話を作っている。コンスコンさん、シン・マツナガさん南無南無。
まぁ俺達ほどではないがな。
「さて、そろそろ一緒になろうか」
「…まさか目の前で浮気されるとは思いませんでした…私とは遊びだったんですね!!」
「いやいや、誤解だってマリオンちゃん」
『ポッ』
「マリオンも頬を赤く…じゃなくて目を赤く染めない!」
なんか今回は前例と違う吸収になりました。
ついでにだが、SD化している状態でも吸収は可能、ただしサイズの関係上少し時間が掛るけどな。
「さて、毎度毎度のステータ——」
「むっ!いける!」
また変なオプションが増えてるはずだから確認しようと思ったがマリオンちゃんが何やら気合いを入れたかと思うと……
「なん……だと?!」
そこには先ほどまでなかった14の影。
「力のマリオン!」
「技のマリオン!」
「ニュータイプのマリオン!」
「「「その他大勢のマリオン!」」」
「「「私達!ブルーニーさんのアイドル!終焉のヒロイン!蒼色特戦隊!」」」
何処からとも無く、特戦隊!特戦隊!と流れてくる…あ、俺達の本体からじゃん。
しかもファイティングポーズまで決めてるし…最後は雑だったな、その他大勢って。
「それで、これは——」
「私の分身ですね。それぞれの視覚、思考、聴覚を共有できますからなかなか便利みたいですね」
「「「ですね」」」
「いや、俺が言うことだっての。…もしかしてモビルスーツに乗れたり?」
「できますね。あ…そういえば今回のパワーアップでかなり離れられるようになったみたいです。具体的に言えばサイド3まで行ける気がします」
事実上どこでも行けるってことね。
「まぁ何にしても…ステータス」
地形適正:陸S砂S空B海S宇宙S
特殊オプション: EXAMシステム(マリオン・ウェルチ)
マグネットコーティング
憑依
ハイドロジェット
電磁波吸収塗料
アンダーグラウンド・ソナー
ミノフスキー粒子散布
ミノフスキー粒子体(マリオン・ウェルチ)
ミノフスキークラフト(低)
ミノフスキー粒子体(ブルーニー)
サイズ変化
マリオンちゃんニュータイプ占い
サイコミュ
ニュータイプ(カツ級)→(シドレ級)
マリオンエディッタ(目、髪、肌)
マリオンちゃん分身の術(満年齢と同数まで)
特別ボーナス: 低燃費
色々変わってるな。
いつからか分からないが空FだったのにBになってる……あ、もしかしてフルバーニアのせいか?
もしかして地上関係の適正は地上にいないと更新されないのか?地上に降りてきて初戦以外はスナイパー仕様だったし、初戦が終わった後確認してないな。
特別ボーナスってのは多分マリオン入りEXAMシステムを全て吸収したからだろうな。
あ、13人分身体がいるってことは年齢はカウントされてるんだな、ということは1年で1人増えるわけだ。
そして一番謎なのはこれだろう、マリオンエディッタ。
「マリオンちゃ——」
本人に確認を取ろうとしたら再び絶句。
髪が腰まで伸びたマリオン、肩ぐらいまでのマリオン、ボウズのマリオン(爆)、縦・横カールのマリオンズ、アフロのマリオンなどなど。
髪はもちろんだが目の色まで赤、青、黄色、ピンク、黒、白、銀などカラフルになっている。
肌も病的な白さからガン黒まで。
「で、なんでマリオンちゃんはなぜそのまま?」
「どうやら分身体だけしか変化できないようです…あ、でも髪の毛は伸びるようになったようですよ」
マリオン分身隊はキャッキャッキャッと楽しそうに色々している。
「んー、とりあえず13姉妹で通すか?」
「どこの妹貴人ですか」
アレは13人の妹だけどな…メディアによって違うんだっけ?
「しっかしこれはどう見ても」
プルクローンだよなー髪や肌の色を変えても輪郭や体格、身長、胸の大きさは変わらない。繰り返す胸の大きさは変わらない。
「イッテェ!」
「ニュータイプのレベルも上がってるようですね。何を考えてるかなんとなくわかりますよ」
「だからって全員で殴らんでも」
本来ならSD化していても俺にダメージはそれほど通らないはずなんだが、マリオンちゃんの膂力はトンでもないんでかなり痛い、それが+13人分も追加されれば俺、瀕死…変な趣味に目覚めそう。
「それはおかわりということですか?」
「決してNO」
マリオンちゃんズが一斉に拳を握る光景はちょっとトラウマになりそうです。
「それでマリオンズはやっぱりマリオンちゃんと同じように不死身?」
「はい、基本は変わりませんね。でも解除ではなく、死んだと判定された場合は24時間は出せないようです。それと分身体解除は私達の本体から20mの範囲でしかできないようなので注意してください」
つまり撃墜される!と思って実体化を解くって言う小技は使えないわけか。
「そういえばマリオンちゃんってモビルスーツの操縦は…」
「したことありませんね」
トレーニングしないとな。
マリオンズには書類仕事を任せ、俺達は宇宙引越公社の本社であるキャリフォルニアベースに向かっている。
モビルスーツ操縦訓練をマリオンズにさせなかったのは、あくまでマリオンズはマリオンちゃん本体の情報に基づいて分身を作っている。
マリオンズがいくら経験してもマリオンちゃんの経験が増えるわけではないのだ。
感覚共有もテレビチャットをしているような感じらしく、もしそれで経験になるなら俺達自身が戦った経験でマリオンちゃんは強くなっているはずなのだ。
…まぁマニュアルを読んだだけでシローと五分な戦いをしてたがな。
誘致で失敗してジャミトフ経由で改めて話し合い(脅迫)をしたんだが、それでも折れなかったのでマスドライバーを片っ端から叩き壊して廻ろう…と思ったがジャミトフに止められた。
理由は仮にも特別地区を任せるなら武力行使にばかり頼っていては評判が落ちる、とありがたいお言葉をもらった。
それで本音は?と聞くと、大事な金蔓——お得意様であり、政治界にも多大な影響力を持つ云々とテンプレな回答をいただいた。
ここでジャミトフの影響力が落ちるのも色々と困るので穏便にすまそうと思い至ったわけだ。
とは言っても?俺達は俺達なわけで、合法的なやり方なわけがない。
まぁそもそも穏便に取引を行おうとして断ったのはあちらですし?
「ではマリオン先生、お願いします」
「うむ、苦しゅうない」
それはなんか違うだろ。
ハッキング技術がなぜか優れている俺達は宇宙引越公社の本社にアクセスを開始3分で設計図をGET、ただし設計図があっても建材の素材が分からないので関係ある各会社を廻らなくてはならない。
なかなか面倒な仕事である。
ちなみにだが軌道エレベーターの方が現実的だと思ったんだけど、よく考えたら俺達の拠点はニューギニア島、地震が多いところなので土台部分が壊れて軌道エレベーターが空から降ってくる…なんてのは悪夢なのでマスドライバーにした。
マスドライバーも広い土台がいるんだけど、建物が倒壊するぐらいの被害なら許容範囲だろ。
打ち上げた荷物が降ってくること無いし、何より軌道エレベーターだと戦争や内乱で巻き込まれて破壊されそうだしな。