第六十一話
支社の経営内容は貿易、軍需産業、民間軍事会社(傭兵のことね。聞こえが悪いから変えたんだ)、廃品回収業の4つを支柱にしていくつもりだ。
本社との違いは廃品回収だけか…まぁ俺達が廃品を作って廃品回収という究極のマッチポンプしてるからやっぱり変わらないか…な?
廃品回収業…俗にいうジャンク屋の作業用重機はリリ丸で持ってきた魚介類やニューギニア島の主産業である4C(コプラ、コーヒー、カカオ、銅)の銅以外を加工した物などの売上を宇宙でサポートユニットとして活躍するはずだったボールが大量に余らせている連邦から安く買い叩いたので近日中に営業を開始するだろう。
ちなみにコプラってのは植物性油の原料になり、マーガリンに使われたり石鹸やロウソクにもなる。他にも絞ったカスなどは餌にしたり肥料にしたりとなかなか特産品だ。
それらの商品を小売業者に卸したんだけど…飛ぶように売れた。卸値なのにボッタクリのような値段で。
リサイクルショップで15枚1000円の皿を買ってオークションに出したらウン十万円で売れたような感覚と言えば想像がつくだろうか。
どうもザビ家やサイド6の連邦高官が地球産の物を買い漁っているようだ。
計算してみたのだがリリ丸で運んだのに結構利益が上がるっぽい……どんだけ連邦は暴利してんだか。
リリ丸はフィッシュボーンやコロンブス級のように少数で動かせる船では無いため赤字が出ると踏んでたんだが、戦時特有の物価上昇とも考えられるがいくらなんでも高すぎるだろ。
この時はまだ知らなかったんだけど、キャリフォルニアベースを受け渡し期間あたりから地球周回軌道でそこそこ大きい戦いがあったんだってさ。
その戦いでアムロがシャリア・ブルを落としたそうだ。
そういえば軽く流してたがシャリア・ブルが死んだ戦いがどういったもんかわからないままだったな、俺達の情報網が貧弱だしブレインも少なすぎる。
シャア率いる、シャリア・ブル、アスナ・エルマリート、ララァ・スンの4人がホワイトベース隊と激突。
普通に考えたらホワイトベース隊の死亡フラグじゃん?
ただしそれはホワイトベース隊のアムロ以外がヘイズルに乗ってなかったらな。
ティターンズはホワイトベース隊を取り込みたいようだね。こうなるとアムロは軟禁されずに済むかも?
そして追い打ちにセイラを始め、ハヤト、カイがNT-1フルバーニア仕様に対抗して作られたゲルググJフルバーニア仕様を操るシャアと『若き彗星の肖像』に出てきたシュネー・ヴァイスのドムではなくゲルググにした機体を操るララァを抑える大健闘をした。
どうもニュータイプレベルが原作以上っぽい。
そのおかげでアムロはジオングのシャリア・ブルとララァが乗るゲルググ版シュネー・ヴァイスと同じ機体に乗るアスナを追い詰め、アスナが倒されそうになったところをシャリア・ブルが庇って戦死したらしい。
アスナェ…原作でも散々だが、こちらでも散々っぽいな。
とりあえずの勝利を得た連邦だったがホワイトベース隊以外の戦いはクスコ・アルとサイクロプス隊、シン・マツナガが暴れたことによって大勢はなんとかジオンの有利っぽい。
そして地球周回軌道上での小競り合いは未だに続いていて、地球の企業は戦争に巻き込まれるのが嫌で物資がサイド6に届かないそうだ。
そこまでして地球産というブランドが欲しいか……
「こりゃ軍需産業以外でも儲けれそうだな」
「問題はリリ丸しか大気圏脱出できないことですね」
「ジオンからザンジバル級借りれないかなー」
「虎の子のザンジバル級をそう簡単に貸してくれるわけ無いじゃないです」
そもそもミノフスキークラフトを装備させないといけない段階で微妙だけどな。
「ブルーニー様、マリア様、少将と連絡が取れました」
「わかった」
『『メイド萌え〜』』
まさかこの目でメイドを見ることになるとは……俺、前の世界じゃメイド喫茶すら縁がなかったからなぁ。
サイド6の市長はなかなか粋なサービスをしてくれる。でも未成年(マリオンちゃん)には色々と悪影響が……今更か。
案内しているメイドさんのボンッキュッボンの三番目を見ていたらマリオンちゃんから俺の身体が軽く浮く程度のボディブローをもらってしまった。
嫉妬ですか?大好物ですよ?NTRは嫌いだけど。
大丈夫、俺はハーレムなんて興味ないから。
通されたのは重要な通信を行う時に使われる特別仕様の通信室だった。
いいなぁ、こんな立派な設備はブルーパプワにはまだないんだよ。
どうしてもの場合は官庁まで借りに行くことにしている現状が惨めで仕方ない。
「こうして会うのは初めてだな。知っているだろうが私はキシリア・ザビだ」
「ブルーパプワ会長、ブルーニーだ」
「同じく副会長マリアです」
通信相手は紫ババァことキシリア・ザビ少将、小説版だと24歳という……老け顔過ぎるだろう。
「前置きは好かんから単刀直入に聞くが私に何のようだ」
「ニュータイプを寄越せ」
「……何の冗談だそれは」
「あいにく冗談を言う相手は選ぶぞ」
「……」
「死んでさえいなければどんな状態のものでもいい」
「……」
「もっと言えば……意識不明のまま眠り続けるマリオン・ウェルチでもいい」
「……その者は確かEXAMシステムを開発している最中に事故で植物状態になったのだったな。EXAMシステムに何らかの関係があるのか」
EXAMシステムにマリオンのデータを複製したことを知らないのか、もしかしてクルスト博士はブラックボックス化したのか?
「EXAMシステムとどういう関係があるかは知らないが、俺やマリアと波長がよく合うから選んだだけだ。彼女はここにいるんだろ」
そう、フラナガン機関にいるニュータイプとは別に感じた気配。
それはマリオン・ウェルチ、マリオンちゃんの本体とも言える存在の気配だったのだ。
「……」
「それで返答は」
ギレンの野望なんかだとYESかNOかの選択肢が出てるだろうなぁ。
「条件がある。死神の鎌と呼ばれる13人のオデッサ防衛の参加してもらいたい」
「……人数は10人、自由裁量権と補給の負担、敵兵器合計1500の撃破で依頼完了としてもらえるならOKだ」
「いいだろう。マリオン・ウェルチの引き渡し手続きは明日には——」
「今日だ」
「……わかった。その代わり確実に受け渡しするためにブルーニー本人が受け取りに来て欲しい」
「ああ、わかった」
商談成立、紫ババァも心なしかホッとしているように見える。
「蒼い死神とはこれからも仲良くしてもらいたいものだな」
「つまりドズル閣下とは別に、だな」
「そう受け取ってもらって構わない」
「わかった。これからもよろしく頼む」
本来ザビ家が一枚岩ならスカーさんを通して依頼して来るだけでいいはずだ。
つまりキシリア派に付かないかというお誘いなわけだ。
まぁ派閥争いに関与するつもりはないから金額と仕事内容が気に入ればどちらの依頼も請けるけどな。
こりゃ戦後は本格的に内乱祭りだな。
シャアがどう動くか知らんが、もしニュータイプ部隊がキシリアに付くとギレンも苦戦するだろうなぁ……もっともキシリアは戦争に勝ててもその後に連邦に政治や外交面で負けそうだけどね。
「さて、マリオン・ウェルチを受け取りに行くか」
「あードキドキします。まさかこんなに早く会えるなんて」
「自分に会えるってのも色々とおかしいな」
「おかしいのはブルーニーさんが存在し始めた頃から変わりませんって」
「それもそうか」
早速マリオン・ウェルチが入院している病院へと向かうと既に準備されていたようでカプセル型ストレッチャーが1つあった。
カプセルの中には眠るように横たわっているマリオン・ウェルチ、やはり俺達が存在していることによって目覚めることはない…か。
「マリオンちゃん、一応確認だけど同族嫌悪とか大丈夫か」
「ええ、なんともないです。むしろ、え?これが私?みたいな感じで違和感があるぐらいですね」
EXAMシステムのマリオン達にはそこまで反応しなかったのに生のマリオン・ウェルチでその反応…完全にモビルスーツ化してるな。
「とりあえずリリ丸に収容するべ」
「これで私の素顔が大公開ですね!」
「大後悔にならなければ——ぐぼほぉ!」
先ほどのボディブローどころじゃない威力のストレートパンチを受けてブースターもホバーも吹かしてないのに水平に飛ばされたぜ。
「もう……ずっとヘルメットしてるのも飽き飽きしてたんですから少しは汲んでくれてもいいじゃないですか」
「風呂に入る時に被るしっとマスクを見てると趣味にしか見え——」
リリ丸の一室に無事運び入れることができて一安心。
船員達が「何処から掻っ攫って来たんですか?」なんて言うからちょっと通信合気道の訓練相手をしてもらった。
「でも良かった。私が無事で」
「そうだな。素性がバレる前に回収できて本当に良かった。これで懸念は俺達の食糧事情だけとなったな」
「ですね。でも……この私はもう目を覚まさないんでしょうか」
そう言ってマリオンちゃんがマリオン・ウェルチの顔を撫でた——その瞬間、突如として目を眩ます光に覆われる。
「マリオンちゃん!」
やばいやばいやばい、もしかしてマリオンちゃんがマリオン・ウェルチに取り込まれたか?!
「私は大丈夫ですよ。本体はどうやら私達と共に居たかったみたいです」
「融合…したのか?」
「はい、ニュータイプとしての能力も結構凄いことになってますよ。ここから地球圏余裕ですしルナツーも感じます…あ、アムロくん発見」
ああ、凄いことはわかる。
なにせ、俺が尻込みしそうなプレッシャーが襲いかかってるんだからな。
今頃アムロも化け物級のプレッシャーに押しつぶされそうになってるだろう…過剰反応して殺されなけりゃいいけど。
「マリオンちゃん、前のレベルぐらいまで抑えられるなら抑えてくれ。一般人には猛毒すぎる」
「別に一般人なんて興味ないですけど分かりました」
すぐに以前のレベルまで落ち着いてくれた。
俺でもかなりキツイな。
俺に敵意がないから平気だけど、なにか強い思いがアレば洗脳できるレベルだ。
細かい能力は次回。