第六十二話
特殊オプション: EXAMシステム(マリオン・ウェルチ)
マグネットコーティング
憑依
ハイドロジェット
電磁波吸収塗料
アンダーグラウンド・ソナー
ミノフスキー粒子散布
ミノフスキー粒子体(マリオン・ウェルチ)
ミノフスキークラフト(低)
ミノフスキー粒子体(ブルーニー)
サイズ変化
マリオンちゃんニュータイプ占い
サイコミュ
ニュータイプ(カツ級)→(シドレ級)
マリオンエディッタ(目、髪、肌)
マリオン分身の術(満年齢と同数だけ)
サイキッカー(マリオン・ウェルチ)能力:ヒーリング、テレパシー、サイコキネシス
特別ボーナス:低燃費
コンプリートボーナス:あるオプションが満たされた時、解放されます
いきなりで悪いんだがステータスだ。
今までの吸収で付いた特殊オプションからすると数は少ない、がそれに優るとも劣らない超能力の発現があったようだ。
マリオンちゃん個人の能力だからステータスに載らないと思っていた(実際ニュータイプは掲載がない)がどうやら吸収で手に入れた能力は載るようだ。
「とうとう私、超人になっちゃいました」
「本体を吸収したのに人間に成れなかったのは意外だな」
「多分私が望んでなかったからでしょうね。人間だとブルーニーさんと一緒にいるのはきっと辛いですし」
「マリオンちゃん……」
「ブルーニーさん……」
コンコンッとノックされるがそれに対して俺は「ここはトイレじゃないぞ」と返すと今度はゴン!ゴン!ゴン!と無礼なノックに変わった。
国際マナーとして2回のノックはトイレの確認、3回は知り合いの家を訪ねる時に行うものなので知らない人は覚えておいて損はない、面接なんかの時にも有効かも。
「入っていいぞ」
「失礼するよ。頼まれてた幹部会議の準備ができたよ」
「あいよ」
わざわざシーマ様が伝えに来なくてもいいのに。
ブルーパプワの幹部はブルーパプワ筆頭アイナ、調整役兼死神の陽炎指揮官シーマ、艦隊指揮官コッセル、開発部筆頭ギニアスのことを指す。
準幹部の場合は死神の陽炎警備部筆頭シロー、警備部筆頭補佐ケンタッキー、死神の陽炎部隊指揮官兼教練筆頭ガイア、後は民需筆頭というモブもいるがそこはスルー。
最初は死神の陽炎と警備部を分けてたんだけど、同じモビルスーツを扱うのに別経理ってのは色々面倒だったので統合した。
ニューギニア島の治安維持は両方から出してるので尚更だ。
それにどこかの帝国の陸と海が仲悪いなんてことになったら目も当てられない。どこかはあえて言わないけど。
俺達はサイド6で6日間滞在して輸入品の選定や関税の打ち合わせ、情報収集など諸々の用事を終わらせてニューギニア島に帰還した。
目の前の利益という餌につられて早期宇宙進出を決めたがリリ丸の輸送能力だけでは問題がある上に黒字になるとはいえ、利益追求はすべきなので輸送費削減のため解決策が議題だ。
無計画って怖いよね。
「それでギニアス、なにか良い案はあるか?」
「……ザンジバル級の往復で利益が上がるというなら燃費の良いミノフスキークラフトを付けたカーゴシップを作り、コンテナにブースターを取り付けて宇宙へ飛ばし、待機しているフィッシュボーンでキャッチするというのはどうかな。計算上はザンジバル級で運用するより4分の1ぐらいの費用で済むはずだ」
「じゃそれ採用、開発費はある程度認めるが生産性と安全性重視で期日は1ヶ月以内だ」
「ふっ、4日で仕上げてみせるよ」
なんとも心強いな。
「ついでにメガ粒子砲も…」
「いらん」
なぜカーゴシップ、簡単にいえばただ荷物を浮かして上昇させ続けるだけのリュックに武装が必要なのか。
「簡単に決まったな」
「それだけの利益があるですよ。報告書を読みましたが、マスドライバー施設を作って運用すれば1年と掛からず元が取れるという計算が出てます。まぁ今回は特殊な事情が重なってのことでしょうが、半額になったところで2年以内ですから」
「なるほど、こういう仕事には疎いが凄いことだけは分かる」
アイナがこの中で唯一こういう話に疎いコッセルにレクチャーしている。
あの海賊然としている見かけで艦隊指揮官にして艦長なもんで事務仕事は結構出来るんだから違和感しかない…が、計算はできても運用にはピンと来ないらしい。
「ナンバーズの方は調子がいいみたいだな」
「それに関してはコッセルから聞きな」
「調子が良い、悪いで言えば断然良いですが強すぎることと降伏すれば命は保証される上に仕事を紹介してくれるという噂が広まっていて降伏する者が後を絶えません。今回の依頼では撃破100機、降伏したことにより新品で260機のモビルスーツ、ダブデが1、ギャロップ2を鹵獲に成功し、ダブデはマニュアルに沿って売却しました」
「土下座大流行ですね!流行らせたのは私ですけど」
(((流行らせたのはマリアだったのか)))
「これからは民需は宇宙へ、軍需は地球で、というのが大体の方針だが……今回手に入れたゲルググを20機、ジムクゥエルを20機ほどサイド6に売却するか」
「その前に連邦とジオンに認めさせないと」
おっとすっかり忘れてた。
「ああ、そうだった……シーマ様、任——」
「だが断る」
「なん……だと?!」
まさかのジョジョネタ。
いやシーマ様に限ってそんな……ないよな?
「いい加減忙しいのにあんなタヌキや老害と渡り合うなんてゴメンだ。それに奴らにはあんたから話した方が通りやすいさ」
ですよね〜。
脱走兵ではないけど脱落兵だからジオンとは顔合わせしづらいだろうし、連邦は殺し合いした相手だしな。
そういう意味ではアイナも同じだから頼めないし、コッセルは向いてない。
ギニアスは……
「開発以外する気はないぞ」
ですよね〜。
「わかった。根回しはこっちでやっとく……他に議題はある?」
「ああ、そういえばこの前紫ババァに派遣されてきたという小娘が来たんで隣の部屋に待たせてあるがどうする?始末するかい」
なんでいきなり殺す提案するかねぇ。
そして紫ババァって…キシリアはシーマ様より年下だろ、ってツッコんだら怖いから言わないが。
それと小娘?……ああ、(作者が書き)忘れてたな。
「いや、俺達がキシリアに取引を持ちかけて得た報酬の1つだ。連れてきてくれ…あ、その前に本題を話しておく」
「今までの話が本題じゃないのか」
「あれぐらいのことなら幹部を集めるまでもないだろ。では真打ち、マリア…いや、マリオンちゃん!どうぞ!!」
マリオンちゃんが勿体ぶるようにゆっくり顔を映さぬヘルメットの首元に手を掛け、ロックを解除。
そしてヘルメットを完全に取り払う。
「颯爽登場!銀河美少女!!マリオンちゃん!」
「「「……」」」
4人は今まで謎のベール(笑)に包まれていたマリアが突然素顔を見せたことに驚いたのか、それともいきなりの痛々しい紹介に唖然としたのかは分からないが口をあんぐり開けて一時停止中。
「またそんなネタに走る……」
「別に好きじゃなありませんけどね」
「なら、なぜそれをチョイスした」
俺的には銀河美少女ってのは間違ってないと思うけどさ。
「そ、それでマリア…いえ、こちらは偽名でマリオンというのが本名なのでしょうけど…その…いいんですか?」
元々素顔を晒さないのは自身の命や身内を狙われたりするから、という名目だったためアイナはそれを心配してくれているのだろう。
「問題ない」
「外道ポーズとらない。ハイテンションすぎるだろ」
「だって結構窮屈だったんですよ?ちょっとぐらいハッチャケちゃうのも仕方ないんです」
もうちょっと違うハッチャケ方すればいいものを……
「フルネーム、マリオン・ウェルチ。出身は既に無いコロニーなんでどうでもいいとして、前までは以前のシーマ様とあまり変わらないぐらい貧乏でした。そして辿った道もほとんど同じですね」
「じゃあマリオンはジオンに居たってのかい」
「はい……あ、経歴は調べない方がいいですよ。なんか意味がわからない経歴になりますから」
そりゃそうだ。
マリオン本体は意識不明で入院してるのに、蒼い死神である片割れの正体がその意識不明のはずのマリオン・ウェルチだとすれば同時に2人存在することになるからな。
マリオンちゃんが偽者扱いされるか、マリオン・ウェルチが実は意識不明ではなく極秘任務か何かで極秘裏に動いていた…とか憶測を呼びそうだな。
「そう言われれば知りたくなるのが人情ってもんさ」
「そうですよね。調べるだけならいくら調べてもらってもいいけど、明確な回答はできませんのであしからず。私はマリオン・ウェルチの前に蒼い死神であることは間違いありませんからその辺を誤らないでくださいね?」
なんとも微妙な雰囲気が漂う……が、その空気を変えようと動いたのは先ほどもショックから立ち直るのが早かったアイナだ。
「マリア…じゃなくてマリオンさんがこんなに若いとは思いませんでした。お幾つ何ですか?」
「アイナさんも若いじゃないですか、ちなみに私は今年で14ですね」
「ハッ、こんな娘っ子にジオンや連邦がやられてるなんて思いもしないだろうね」
「確かに」
「若いとは思っていたがアイナより年下とは……戦争とは罪深いものだな」
その戦争に使う道具を嬉々として作ってる奴がそんなセリフを言うんじゃねーよ。
「ところでブルーニーの中の人はいつ顔を出すんだい」
「中の人なんていない!!」
「その発現は私に対しての挑戦と受け取っていいのかね」
とりあえず、その工具は置いて話し合おう。
人間は話し合いができる素晴らしい生き物だろう。
「話し合いだけで解決しないから戦争が起こるのさ」
そんな正論聞きたくない。
少し騒いで件の少女を招く。
「メ、メイ・カーウィンです。よろしくお願いします!」
機動戦士ガンダム戦記LostWarChroniclesのキャラクターさんですね。
俺もあんま知らないんだけど、確かソフトエンジニアの天才とかいう設定があったようななかったような……二次小説でしか知らないから実力はこれから示してもらおうかな。
ダイクン派ということは覚えていたので反乱分子だから簡単に引き抜けるだろう……と思ったらキシリアはどうもギレンから政権を奪ったらダイクン派を取り込んで掌握しようと思っているらしく、結構渋ったので——
「ダイクン派が突撃機動軍に潜んでると口を滑らすかも〜」
と心にもないことを口にすると心良く寄越してくれた。
いやーキシリア様はお優しいお方です。
それにしてもシャアの正体を知った上で顎で使ってたのにはダイクン派をまとめさせるためのカードだったのかもな。
まぁそんな都合は知らんがね。
自己紹介もほどほどに仕事を考える必要が……ないか。
「システムエンジニアとして優秀と聞いてるから監視巡回捕縛用ロボット『ハロ』の開発に協力してもらおうか」
「が、頑張ります!」