新しくメイ・カーウィンというメンバーを迎えた俺達はとりあえずサイキッカーとしての能力検証に乗り出した。
「まずは不健康極まりない生活をしているギニアスでこっそりヒーリングを実験だな」
「怪我に効くのは大体わかりますけど病気や不摂生に効くのかどうかは重要です。私達には関係ありませんが」
そう、実はサイキッカーの能力って俺達自体に恩恵ってほとんどないのよ。
例えばヒーリング、燃料の消費で回復する身体な俺達には無意味。
例えばテレパシー、ミノ話が既にある。
例えばサイコキネシス、唯一若干意味があるがそもそも俺達の本体は何かを動かすのにそれほど不便はない。
「まずは使用条件だな。事前にわかってることはあるか?」
「分身体も使用可能、布1枚ぐらいなら問題無いですがある程度直接触れないといけないことぐらいでぐらいでしょうか」
「分身体もできるのか」
とりあえずマリオンちゃんが顔見せしたので改めて個々に挨拶、という建前で行くか。
「という訳でよろしくお願いします」
「ああ、改めてよろしく頼む」
マリオンちゃんが握手を求めると当然ギニアスもそれに応える。というか無視なんてしようものならビームサーベルの錆にしてくれるわ!
だからって馴れ馴れしく触るようならビームライフルの的にしてくれるわ!
握手をした瞬間にギニアス自体が光っているように見えるが……本人や他の人間は気づいていないようなので俺と恐らくマリオンちゃんのみが見えるのだろう。
「おいおい、これは……」
顔色が良くなる程度ならともかく、明らかに若返ってないか?
アンチエイジング効果なのか、はたまた文字通り若返っているのかはわからないけどな。
「擬似不老の可能性あり、か」
これは要検証だな。でもこれで次に挨拶に行く先は決まったな。
「挨拶回りってのはいい心がけだと思うけど、なんだか不愉快なのはどうしてだろうねぇ」
ヒーリング効果を年寄りで検証を……とか思ったからだろうか。
そうだとしたらニュータイプの素質があるかも……まぁ女の勘というのはニュータイプに匹敵するような気もする。
「ストレスが溜まる立場ですけど、これからもよろしくお願いします」
「改まってそう言われるとなんだか照れくさいね」
「照れる歳か————」
今のは俺が悪かった。だから拳を下ろしてください、お願いします。
それにしても……シーマ様が4歳ぐらい若返ったぞ。
寿命が伸びたのかどうかまでは結局わからないままだが、シミュレーターの成績が格段に良くなっているあたりアンチエイジングではなく、本当に若返ったんだろうね。
「これってちょっとやばくね?」
「やばいです。こんな効果があると知られれば世のお金持ちやババ……ゴホン、お年を召された女性方に狙われちゃいます」
「金儲けもできるだろうけど、絶対面倒事になるよな」
「下手をするとジオンと連邦、サイド6も敵に回すことになります。私達は負けないでしょうけどブルーパプワは……」
「しばらくは内密にしとくしかないか。まぁ幸い俺達が喋ることなんてまずありえないから安心といえば安心か」
「ギニアスさんとシーマさんが若返ったことで色々問題が起きそうですけど……しらばっくれるしかないですね」
こうしてヒーリングは封印することになった。
それと短時間にも関わらず燃料消費がビームライフル5発分と同等というのはちょっと厳しいかもしれない。
幹部や準幹部、それを補佐する人間に挨拶回りして自分の部屋に帰ってきた。
続いてテレパシーの実験。
「テレパシーの仕様は?」
「相手を名前と顔を知っていることですね。アドレス帳みたいに一覧で表示されてますし検索機能付きでしかもイメージでも検索できるんですよ。更に個人送信やグループ送信、全体送信が選べます。現在位置も細かくはないですけど表示されるんですよ」
ケータイみたいだな。
「じゃあまずは俺にやってみてくれ」
「了解」
ミノ話との違いを検証。
『こんな感じですけど、どうですか』
「あまりミノ話と変わった感じはしないな。強いて言えばステレオとモノラルみたいな違いだな」
『送信しかできないのも不便ですね』
「ケータイが使える状況ならいらないな」
『つまり緊急時でも無い限りニューギニア島内では使うことはありませんね』
「そうだな……ってそろそろ止めてもいいぞ」
「これを有効的に使うためには幹部の皆さんに能力を教える必要があります」
受信側が知らなかったら精神病棟に押し込められるだけだな。
……おお、24時間ずっと囁き続ければ発狂間違いなしじゃないか、暗殺が楽になるな。どっちかというと社会的暗殺だけど。
「またとんでもないことを思いつきましたね。それで問題なのはアドレス帳に載ってるのはサイキッカーとして目覚めた後に知った人しか対象じゃないみたいですけどね。ただ以前から知ってる方は顔を見るだけで良いみたいです」
改めて顔合わせをする必要があるということか。
「通信映像でもいいのかね?それだと難易度は下がるけど」
「試してみますか」
テキトーに選んだモブに通信を入れて、テキトーに話をして終了。
「どうやら通信越しでもいいみたいです。分身体からも次々追加されてますね」
「巨大なメモリーの無駄遣いな気がするがな」
「カテゴリー分けができるみたいなので分身体に整理させておきましょう」
選ばれた分身体ナム。
「さて、試しに誰かにテレパシーを送ってみるか……よし、最近出番——ゴホン、会ってないケンタッキーにしよう」
「なんでサンダースさん……まぁいいですけど」
『やーい、お前のカーチャンアフロ〜』
……もう少し何かなかったのか?
それは置いといて、なぜか俺まで聞こえてるぞ。
『な?!だ、誰だ!!』
「あ、テレパシーを使った後の数秒はあちらの声も聞こえるんですね。ブルーニーさんは近くにいたのでわからなかっただけみたいです」
「みたいだな」
「あれ?ブルーニーさんにも聞こえたんですか?」
「なぜかな、まぁデメリットがあるわけでなし、いいとするか」
「ですね。次はサイコキネシスの検証ですか」
「とりあえずこの部屋にあるものでやってみて」
そういうとすぐになぜかビームサーベルとシールドで完全武装しているクマのぬいぐるみが俺を襲う。しかもご丁寧にビームサーベルを振り回して。
「何だというのだ。俺に怨みでもあるのか!」
「イエ、ベツニ」
めっちゃ棒読みだし。
反撃すると粉砕しそうなんでただただ回避、こんなヘンテコな武装をしていてもマリオンちゃんが大事な物なのだから。
「おや、落ちたな」
「物を動かすのは2分が限度なようです。それと動いているブルーニーさんも拘束できませんでしたし、針の秒針も止めれませんでしたから動いている物は干渉できないみたいです」
何気に俺で実験されていたらしい。
動く物に干渉できないのかー……残念、どこかの電子世界でイナバウアーみたいな躱し方を流行らせた某映画の主人公みたいに銃弾を止めれるかと思ったんだけどな。
「使い慣れればもうちょっと時間は伸ばせそうですけど」
「せいぜいコンテナを運べるぐらいだろ」
「後、有効範囲ですけど視界外は不可、視界内でも100mぐらいだと思います」
「……使えねー」
「ですねー、最後のパワーアップだったのに残念です」
もっとも今のままでもチートくさいからバランス的には丁度なのかもしれん。
それに何やらコンプリートボーナスなどというフラグもあることだし、前向きに行こう。
「ところでそんなに嫌ならこの武装も外したらいいだろ」
「……一応ブルーニーさんが作ってくれたものですから」
マリオンちゃんがデレたー!って結構いつもデレてくれてるか。
1ヶ月経過。
連邦はとうとうオデッサ作戦を決行された。
キシリアとの約定通りマリオンズ10人を投入する。
しかし今までとは少し違っている。
それは機体だ。
「ついに完成したかNT-2、改めBPN-01ヴィエーチル」
新しくNT-2を製造するには費用が足らなかったので、連邦から報酬としてもらったNT-2をデザイン変更したモビルスーツなので中身は丸々NT-2のままだけど……そのうち完璧に独自で開発する予定だ。
デザインは……まぁぶっちゃけ機動新世紀ガンダムXのラスヴェートが蒼くなっただけなんだけどね。もちろん原作のようにフラッシュシステムや飛行なんてできないけどな。
これがマリオンズやシーマ様、ガイアなどのエース機とすることになっている。
もっともシーマ様やガイアにはNT-2ではキツイだろうから内容を新しく設計したものになる。
ちなみに死神の陽炎のモビルスーツデザインは傭兵部門はジェニス、警備や治安部門ドートレスになる予定。
もっともしばらくはジムクゥエルやカスタム、ゲルググなどがメインだけどな。
まだ1機しかないヴィエーチルはマリオンズの指揮官役が乗る。
そういやラスヴェートとヴィエーチルの違いは武装にもあったな。
ラスヴェートはビームライフルとビームサーベルとシンプルな武装しかなかったが、ヴィエーチルはガンダムMK-IIのような外付けのバルカンポッドが付けられている。
他にもビームサーベルは従来の背中ではなく、腰に収納されていて、防御力向上のためにシールドも装備されている。
ゲルググより少し武装が豊富になったな。
余談だが頭部のバルカンポッドは以前買収したブリッツ社やラッツリバー社が作った物だ。
「せっかくの初陣だが未だに後方待機している指揮官機まで辿り着いたモビルスーツはいないんだよなぁ」
「大体は他のマリオンズに刈り取られてますからね」
今回はキャリフォルニアベースの次に大舞台であるオデッサなので俺達もリリ丸から観戦している。
戦況は連邦有利……マリオンズの周り以外は。
オデッサ防衛にマリオンズが参加することが連邦は知っていたようで、多方面からの侵攻によってマリオンズの被害を最小限に抑えようという考えらしく、それは今のところ成功している。
どんなに強くても10人しかいないマリオンズでは戦術的勝利は簡単にできても戦略的勝利には時間が掛る。
補給や整備などが必要だし、何よりほとんど戦わずに後退してばかりで戦果が薄い。
「どうも防衛側より侵攻側の方がナンバーズは有利なようだな」
「今度から依頼は考えて請けないとですね」
「とは言っても防衛側の方が依頼したいだろうから困るよな」
ん?何か受信したな。
『故郷に帰ったらB・Bと結婚するんだ!だから死ねない!』
『おい、やめろ!それは死亡フラグだ!』
『でやあああ!必殺———ゴホッ、ハーッハーッ、僕は……僕はねーっ……———』
『無茶しやがって』
なんか色々間違ってる気がするがクロ…じゃなかったミケル南無。