第六十四話
オデッサ作戦、原作では唯一無二の資源の宝庫であり、連邦の反撃の狼煙でもあった。
それに比べて今現在ではインドネシアという資源採掘地があり、重要性は若干下がっている上にスエズ運河防衛戦でかなり援軍を出したため、余裕が少なくなっている。
マリオンズの活躍?で近づけば蜘蛛の子を散らすように逃げていくので包囲殲滅がされないのは幸いだが敵の戦力は減らせていない。
モビルスーツの撃墜数が50程度なのが良い証拠だろう。
バラバラに行動しているように見えるマリオンズだが1小隊は常にフォローしあっているし、1小隊がピンチになれば近くにいる1小隊が駆けつけるように指揮官役マリオンがうまく指示して連携を執っている。
それは回避ができないほどの弾幕をされるとさすがにマリオンズでもどうしようもないためだ。
マリオンズの戦闘力やパターンを検証した結果、圧倒的な個の登場などが無い限りは包囲しての間断ない面射撃による撃墜がもっとも恐れるパターンであった。
陸しか適応していない上に可能な限りの追随性を向上させているとは言っても所詮は量産型のゲルググでは限度がある。
その包囲をさせないように最低2小隊が付かず離れずでフォローしあっているわけだが、そうすると敵に逃げられてしまい戦果が伸びない。
「これじゃジリ貧だな」
「機動力重視の1小隊制にしますか?」
「それだと囲まれてしまいそうだから……ちょっくら壺に通信繋いでくれるか」
「了解!」
今返事したのはコッセルだが、壺と言われてマ・クベだとわかったのはマリオンちゃんが作った愛称一覧表のおかげである。
『死神殿が何の御用かな。あなたの鎌はあまり働けていないようですが』
「その件で連絡した実はモビルスーツをお借りしたい」
『モビルスーツを、ですか。今は余裕がないことはご存知でしょう?』
そりゃ知ってるよ。
なにせ戦場の中をリリ丸とミデアで飛び回って破損したモビルスーツや撃墜されたモビルスーツ同士を何とかニコイチ、サンコイチぐらいして前線に出している現状だからな。
「どうも俺達の鎌は敬遠されているようです。こちらとしてはそれでもいいのですが、そちらは困るでしょうから、そちらののモビルスーツに乗せて戦わせようと思いいたったのですが」
『……わかりました。ノーマルのゲルググですが3機都合つけましょう』
「代わりにOS書き換えしてジオン鹵獲カラーにしたジムクゥエル4機を渡しておきます」
『そういう代価が支払えるなら先に言ってください。では、お願いします』
壺さんとの通信が切れる。
これでマリオンズと悟られずに戦えるだろうから戦果は多少マシになるはず。
「という訳でゲルググを受け取った後にナンバーズを1小隊回収して乗り換えだ」
コッセルから威勢のいい返事が返ってきてリリ丸は方向転換を始める。
モビルスーツの受け渡しは順調に終わった……が、なぜか壺さんが登場。
「よろしければもう1人派遣してもらえませんか?黒海で水中戦が激化しまして、有利に動いていますが予断を許さないのが現状です。ズゴックDを提供しますのでお願いできませんか」
「……報酬は」
「もちろん追加で用意しますよ。でないとキシリア様に叱られますからね……とはいえ、資金は厳しいですから既に旧式と言えるか品物ですがモビルアーマー、アッザムとグラブロ、ザクレロの設計図でどうでしょうか」
アッザムはギニアスが作った物とは別設計のジオン製ミノフスキークラフト、グラブロは潜水艦、ザクレロは拡散メガ粒子砲か……
ただ、壺さんから不穏な雰囲気を感じるのが心配だ。
明らかに使い潰す気満々、しかも原作では青秋桜と同じ切り札である核まで用意しているだろう。
俺達は大丈夫かもしれないがブルーパプワ艦隊は悲惨な結末になるのは明白。
……まぁ、核を使う場合マリオンちゃんズがなんとかしてくれるだろう。
「わかった。契約成立だ」
ただし乗るのはマリオンちゃんだけどな。
ジオンのパイロットスーツのマリオンちゃんなんてレアだよな。着ようと思えば好きな時に着れるがそこはスルー。
条約に違反してる気がするけどこっそり乗るから大丈夫だ…多分。
マリオンズは傭兵家業の際はマリオンちゃんが素顔を晒す前に着ていたパイロットスーツと同じ物を着用しているのでマリオンちゃんかマリオンズか見分けが付くのは俺ぐらいである。
「では先払いをしておきますから頑張ってください」
設計図を貰い、すぐに俺達の本体にバックアップしてギニアスへ送るように手配する。
余談だが俺達の本体には今まで手に入れてきた技術の詳細や設計図が保存されていてブルーパプワに何かがあったとしても人材以外はどうとでもなる。
『ではよろしく頼む』
『初めての実戦ですね。頑張ります!』
そういうわけでマリオンちゃん初陣を飾る!
とは言っても水中戦なんでリリ丸に乗る俺達は観戦できないけどね。
ノーマルゲルググに乗り換えるという策は見事的中、専用のゲルググよりは緩慢な動きとはいえ油断しきっている連邦はマリオンズに順調に狩られている。
戦果は開始30分で航空機の割合が多いとはいえ150に到達して次々落としてる。
Eパックの導入により継戦能力が上がったので補給の回数が減ったのは本当に大きい。
もしかしたらムーバルフレームよりEパックの方が革命起こしてるんじゃね?
リボルバー拳銃がジャムらない自動拳銃になった気分だな。人間の武器なんて使ったことないけどさ。
ノーマルゲルググで戦闘していると降伏も少なくなった。
そりゃそうだな、マリオンズだとわかってないんだから命がけの土下座戦法をするには躊躇して当然だ。
「マリオンちゃん、そっちの調子はどうだ?」
『マ・クベさんが言ってた通り水中戦はこちらが有利ですね。それに以前鹵獲したズゴックDとは違いビームカノンがEパック仕様になってて使いやすくなってます』
「水中で使えるほど集束したビームがEパック化ができたのか、やるなジオン」
『問題は対空や陸上ならともかく水中では魚雷より射程が短くなりますから使いやすくなってても普通の兵士には使い勝手が悪いみたいです』
「そうか……戦果はどうだ」
『着いてからあまり時間が経ってませんからまだ10機程度です。水中戦はシミュレータしかしてませんから難しいですね』
地上戦はシーマ様達と実機で何度か模擬戦をしていたからマリオンズは圧倒しているのだ。
まぁ後でマリオンズに反映されるから次回からは楽になるはずだから我慢してもらおう。
「頑張れマリオンちゃん」
『アイサー』
防衛戦1日目が終了。
結局途中でノーマルゲルググに乗ったマリオンズの正体がバレてしまい、マリオンズと識別すると降伏するようになった。
結局460機ほど撃墜と120機ほどの降伏がされた。
降伏されると捕虜の安全の確保やほぼ新品のジムカスタムなどが手に入るせいで効率が上がらないんだよなぁ。
どうも逆焦土作戦を行われているくさいな。
焦土作戦ってのは侵攻してくる敵に自分達の施設や兵站を利用されないように破壊していくことを言う。
そして逆焦土作戦というのは俺が考えたもので、わざと味方の損害を出して捕虜や鹵獲に時間を取らせる傭兵の俺達にはなかなかキツイ策である。
今まで捕虜を殺したことがない俺達を信用しての作戦だろうが、連邦兵士を養うのに苦労している。
そこで壺さんと協議をした結果、俺達は移動することとなった。
移動する先は……ジブラルタル。