第六十七話
核ミサイルを撃った後ジオンはオデッサを放棄したので俺達も依頼完了としてニューギニア島に帰還。
オデッサ敗北はジオンにとっては予想されていた事態の1つで大きな混乱はないようだ。
地上で残されたゴモラ達はゲリラ戦を仕掛けながらも戦線をゆっくり後退させて最終的には中国まで縮小する……予定だったのだが、予定外のことが起こっているようで……
「ロシアがジオンと歩調を完全に合わせたか」
「そのようだな。ロシアはジオンの一部として技術提供を受けて独立する気……があるかどうかは知らないが少なくとも簡単に連邦に復帰する気はないようだな」
ノリスから手に入れた情報をギニアスから聞いている。
ロシアはそこそこ工業力はあるものの食料の自給率は寒さゆえに低い。
それでも人口は多くて兵士には困らないので軍備拡大を行い、ジオンからゲルググを購入したり、技術提供されたザク改キャノンなどを製造しているらしい。
せっかくなんでブルーパプワも営業を掛けて航空機の受注を勝ち取っていた。
フライマンタなどの連邦製の機体は会社にそっぽ向かれて困ってたみたいで喜んで大量発注してくれた。
Eパックはオデッサ方面が撤退したことによりペキン製が流通し始めたのでブルーパプワの生産数は減らして他の生産に割り当てた。
それにしても核ミサイルを平気で使ったジオンによく味方する気になったもんだ。政治的判断か、連邦への怨嗟かは知らんけど。
こうして巨大な壁ができたことにより連邦の足は西ロシア近郊で泊まることとなる。
まだ脆弱なロシア軍ではあるがジオンも参戦することにより、油断できない戦力になったのは間違いない。
俺の計画ではマスドライバーのある日本、中央ロシア、中国は連邦に渡して将来できるニューギニア島のマスドライバーでジオンが使える宇宙への道を握ろうと目論んでたんだが……これは厳しくなったかもしれん。
「いざとなったら爆破するか?いや、連邦に破壊してもらうのもありか」
「ブルーニー、忘れてるようだが宇宙引越公社の影響力はアナハイムと同じぐらいあるからな。破壊工作なんて手伝ってもらえるわけ無いだろう」
あ、そういやそうだったな。
なら自分達でどうにかするしかないだろうけど……
「さすがに直接マスドライバーの破壊はやめておいた方がいいだろう。今までとは違ってバレれば民衆まで敵に回すぞ」
「それは厄介だな」
確かにインフラの破壊は民衆にとっても分かりやすい悪だからなぁ。
組織なんかを敵に回すならどうとでもできるが民衆にそっぽ向けられると会社が成り立たなくなる。
仕方ない、成り行きに任せるか。
「そうそう、マスドライバーの建造費が見積もりより随分と安くなりそうだ」
「お、良い報告だけどコストカットがそんな簡単にできるもんなのか?」
「宇宙引越公社とブルーパプワではやり方が違うからね。公社は委託建設しているのに対してブルーパプワは全て自前で行う——ことも大きいがやはり天下りの負担や水増し請求なんかが積もりに積もって結構バカにならない金額になってるようだな」
おおう、自浄作用という言葉はこの世界にないのか?!
いや、現代社会でも似たようなものか?最低賃金すら守らない会社がゴロゴロしてるからな。
その点ブルーパプワは給料が安いがその代わり家族寮から独身寮まで完備して3食昼寝付き、もちろん保険完備で週休3日、有休は無いけど指定病院で診断書貰えば有休扱いだ。
最初は日本みたいに24時間働けますか?的な方針にしようと思ったんだけど、ニューギニアの人の気質が金を稼ぐことより日常を大切にしてるようなので給料より福祉重視にしてみたらウケたので良かったと思う。
おかげで社員の数を多く雇用できて、ニューギニア島の失業率を下げる手助けになっている。
まぁ、そもそもニューギニア島自体がそれほど裕福ではなく、自給自足に近いので金にそれほど執着がないんだろうね。
あ、オーストラリアからの移住民は割りと働き者で高給取りが多いが、最近原住民に引きづられるように契約を変えていってる……まぁ辞めなければどちらでもいいんだけどね。
開発者達はほとんどマッドっぽいからブラック企業くさいけど。
ちなみに俺やマリオンちゃんズの給料って実は超少なかったりするが特権自体が給料かな。
「それで見積りは?」
「これだ」
んー、確かに安いな。
問題はマリオンちゃんズ専用のヴィエーチルを優先すべきか、マスドライバーを優先すべきか、だよなぁ。
マリオンちゃんズ全員の分のヴィエーチルとマスドライバーだとマスドライバーの方が安く済む——んだから考えるまでもないか。
「マスドライバーを建造するだけの資源は貯まってる?」
「ああ、既に準備してある。後は場所を決めて、GOサインさえあれば半年後ぐらいには完成するだろうよ」
「場所か……」
ニューギニア島なら関連設備やインフラを整えるのに短期間で済むだろう、問題は北側に向かって作りたいところだが北側は太平洋やオーストラリアのプレートが存在しているため津波の被害が怖い。
だからと言って南側はオーストラリアに向かって荷物を放り投げることになるし、連邦と戦争する際には真っ先に狙われる。
他の島だと地震はともかく、インフラを整えるのに重機から持ち運ばないといけないし、輸送費が結構バカにならない。その代わりに地域活性化にも繋がり、島という性質上防衛もし易い……って最後のはニューギニア島でもそう変わらないか。
「要検討だな」
「場所が決まり次第、建造できるように製造できるものは製造しておくとしよう」
「ああ、頼む……そういえばザクレロ、アッザム、グラブロのデータ解析はどうだった?」
「ザクレロの拡散メガ粒子砲は射程を改善すればなんとか使い物になりそうだ。アッザムはあまり実入りがないな。アッザム・リーダーはいらんだろうし、ミノフスキークラフトは今更だろう。一番成果となっているのはグラブロだな。ニューギニア島の防衛に使えるだろう?」
解析結果は俺の思惑と一緒か。
「ああ、他はおまけでしかないな。ただ、そのままでは使い勝手が悪そうだから小型化をしてくれ」
あんなデカイモビルアーマー、いい的だからな。
「リサイズか、どの程度だ?」
「潜水艦に乗せれるぐらい、だ」
「……モビルスーツサイズにしろ、と。それはもう1人乗り用の戦闘潜水艦じゃないか?」
「良かったな。ギニアスが新しいジャンルの開拓者になれるぞ」
「そう言われれば燃えるがね。ああ、またテリーに怒られるな」
「ご愁傷様」
「主に君のせい——いや、やはり自分のせいか」
ほとんど趣味でやってんのに俺のせいにされても困る。
さて、今までの会話にマリオンちゃんズの誰も入ってこないのは実は全員宇宙に上がってるからである。
俺は置いてけぼりだorz
サイド6支部で警備業を本格化させようと思ってマリオンちゃんズ全員を出張させたんだ。
本当は俺も付いて行きたかったけどニューギニア島に俺かマリオンズが残らないといらないちょっかいを出される可能性がある。
そして俺は1人残るだけでマリオンちゃんズが出張に出かけるならと苦肉の策で残ることを選んだのだ。
付いて行きたかったけど!!
マリオンちゃんズは警備員候補生達の教導するために宇宙に上がっている。
予定ではマリオンちゃんズ1名に対して2名の警備員候補生がつき、宇宙戦闘の訓練に明け暮れることになる。
本来はマリオンちゃんズがやるような仕事ではないが、他の死神の陽炎の社員も警備業や治安維持に日夜追われていて、手が空いていないので仕方なしである。なんとも贅沢な教導だ。
「マリオンさんが居ないと寂しいですか?」
「ぜ、全然寂しくねぇし!……ってアイナとメイか」
「こ、こんにちわ」
む、なんだかメイの態度が固いな。
俺、何かしたか?
「もう随分慣れたようだな……アイナ」
「って私ですか!メイちゃんじゃなくて?!」
「冗談だ。メイも慣れたか?」
「は、はい……(貴方の見掛け以外は)」
何か不穏な思いを感じたが、まぁよかった。
「報告書ではハロの製作は順調なようだが」
「あ、はい。最初は誤認捕縛は30%ほどでしたが現在は10%を切るようになってきました。救難救助用機能も追加しようとしたんですけど、予算を大きく上回ってしまったのは残念です」
「それは別のハロを作るから……いっそアウトドア用ハロとして売り出すか、巨大化して荷物を収納させて」
「それいいですね!ついでにドリルも——」
「いや、それはいらんだろ」
まぁ穴掘り機能と考えれば遭難した時に使えなくは……ないか?
「じゃあ自爆スイッチを——」
「絶対入りませんね」
「だな」
「えー」
えー、じゃありません。そんなもの付けてどうする。
「じゃあせめて動力を核融合炉で——」
「どの辺が、じゃあなのか、どの辺が、せめてなのかわからんけど核融合炉の必要性が何処にあるよ」
「メガ粒子砲搭載するとか?」
「アウトドア用だって話は何処いった」
それじゃGジェネのハロじゃないか?メガ粒子砲はなかったような気がするけど。
と言うよりメイ・カーウィンってこんなキャラだったか?もしかして暗黒面(マッドサイド)に落ちてる?
「パイルバンカーも捨てがたいですよね!」
「そんなもの捨ててしまえ」
ギニアスよりダメなマッドな気がする。
ギニアスは実用性があるけどメイは快楽犯くさい……開発に関して天才なのはギニアスも認めているんで才能は間違いないんだけどねぇ。
「あと、ブルーニーさんも分解できれば問題なしです」
「俺を殺す気か!」
「むう、ちょっとだけでいいですから、先っちょだけ、ネジ1本だけでも」
「アイナ、この子怖い」
「蒼い死神でも怖いものはあったんですね」
そりゃあるよ。台所の茶光りするやつとかな。
やつ対策用にトリモチ弾を常備してるぐらい苦手だ。
いやー、だってさー……俺の身体に住まれて繁殖されたりしたら……うお、想像しただけで、そんなことしないはずの背筋がゾクゾクッとしたぞ。
「そういえばブルーニーさんの機体にはサイコミュが搭載されてるんですよね?」
「ああ、そうだが……つつきたいのか?」
「はい!あ、あとファンネルをハロに替えませんか?」
どこのハロ・ビットだよ。