第七十話
連邦の外交官を迎えに行く描写はカット。だって原作にも出てこない老害っぽいし……まぁ付き添いにジャミトフがいたのは驚いたけど。
いったいジャミトフの立ち位置は今どんな位置なんだろうね。
なんにせよ非公式ながら休戦協議はスタートした。
もっともこの間にも地球圏の戦闘は激化、今まで制空圏が奪われ気味だったジオンロシア同盟(いつの間にかこういうことになってた)だったがブルーパプワがフル稼働して量産したドップやルッグンが制空圏争いでやや劣勢程度まで持ち直し、ペキンの生産工場から次々ゲルググが量産されてロシアに持ち込まれる……どうやってロシアは対価を払ってるんだろう?
協議の結果、ソロモンで決戦が行うことに同意、勝敗条件は決戦でソロモンの支配がどちらにあるのか、勝った方が休戦を申し出るなどなどが決まっていく。
俺達の要望である領土保証は——
「ニューギニア特別地区の中立国化を両国に容認していただきたい」
「「了承」」
で終わった。しかも返答は0コンマ0何秒レベルだった。
そりゃ根回ししてたからそんな複雑な話にはならないだろうとは思ってたが、まさかこれほど簡単に終わるのは予想外だ。
一応正式に関税や連邦のニューギニア島資産の扱いなど細々としたすり合わせはしないといけないがそれは必要なことなので仕方ない。
ただしジオンの地球圏内の領土保有……ベトナム、チベット、インドネシアの領土化は連邦が難色を示す、というかジャミトフも反対派だった。まぁ当然だわな。
結局は休戦協定が結ばれた段階での支配地域とその後の話し合い、という厄介事の先送りに落ち着いた。
むう、チベットは元々サハリン家の利権があるし、ベトナムはノリスの支配下、インドネシアはニューギニア特別地区の貿易ルートとして重要だし、何より他のジオン地域との繋ぐ要衝だからできればジオン側であって欲しいんだけどな。
何よりジオンはまだ新しい勢力というだけあって柔軟というか優柔不断というか、お役所仕事感が薄いから個人的にはジオンよりになっちゃうんだよな。
連邦は本当に腐敗してるからねぇ、連邦の外交官に宿泊施設が貧相だと散々文句言われたからミデアのコンテナに放り込んでやろうかと思ったが我慢した、多分新しい人(?)生で一番我慢した。
ロシアに関しては両国流れに任せ、戦後話し合うというなんともいい加減なものであるが、ジオンの利権であり連邦の利権でもあるので玉虫色になったんだろう。
後、何気なく言ったコロニーの独自建造の許可ももらえたのは意外だった。
どうせ根回ししないと通らないだろうから、話だけは今しておくかーというノリだったのにまさかそんなに簡単にもらえるとは……ちなみに予定地としてサイド5跡地、つまりL1点付近ということだが……デラーズ・フリートの拠点である茨の園もこの付近にあったはずだけど、眉なしも生きて終戦しそうだし大丈夫かね?
ちなみにどうしてこんなにスマートに決まったのか後でジャミトフに聞いてみたら連邦にサイド5を再建する余裕もなければする気もそれほどない。
ジオンは影響力を手に入れたいので再建はしたいが向こう20年は余裕が無く、取らぬ狸の皮算用だ。とは壺談。
実際俺達が認められたのは20年以内という期限が決められている。
ジオンの思惑的にはある程度土台を俺達に作らせて、そこへ楽に参入しようって魂胆なんだろうね。
それも込み込みでまた忙しくなるな。
「ではこれから世話になるぞ」
実は今までのことは全部現実逃避だったんだ。
壺やアイリーン外交官は帰ったんだ。しかしこのダルマ……デギンがニューギニア島に居着く気満々なんだよ。
ギレンに公王を譲り、ニューギニア島でゆっくり余生を過ごすつもりらしい。
しかも常時マリオンズを護衛に雇おうと思っていたようだ。
暇な時ならともかく今は忙しいから目玉が飛び出るどころか脳卒中で倒れるような金額を提示して諦めさせたがな。
せめて戦後に改めて来てくれたらいいのに、まさかこのまま居座るとか……小説版とは違いレビルを逃したってわけでもないのになんとも雑な扱いだ。
「そういえばなんて呼んだらよろしいでしょうか?」
俺の中ではダルマに確定してんだけど、公称にしたら怒られる。
「そうだな……公の場では先公王でいいだろうがこれから世話になるのだしいつもはデギンで良い。敬語も不要だ」
「そう?悪いね。いい加減肩が凝って仕方なかったんだ」
「ですね。せっかく自由になったんですから堅苦しい会話なんて嫌ですよね」
(そこまでラフになるとは思ってなかったがな)
とか思ってるようだが気にすまい、敬語or丁寧語なんて面倒なものはニューギニア島にはないのだよ。ただし俺達に対してを除く。
「しばらくはのんびりするとして、そのうち暇になるだろ。なんだったらブルーパプワで何かしてみる気はない?新たに趣味を見つけるもいいだろうけど、やっぱやりがいがある方がいいと思う。例えば人を育ててみるとか」
「そういうことをするなら公国に残っておるわ」
「いやいや、公国じゃ先公王にものを教えてもらうなんて恐れ多くてお互いろくな事にならないだろ。だからニューギニア島の民衆相手なら大丈夫だと思うわけ、正直言うとギレン総帥……今は公王か、が目立ってデギンの顔を知っている人なんて少ないだろうし」
「……前向きに考えさせてもらう」
「まぁ無理にとは言わないよ。しばらくはゆっくり休みたいだろうし……ガルマが亡くなった地にも行かなくちゃだし」
「?!わかっておったか」
わからいでか。
「ちゃんと手配する予定だけど戦後になるからその辺は我慢してな」
「うむ、感謝する」
こうして変な居候が居着くことになりました。
ゲルググ版シュネー・ヴァイス、公式名ゲルググNが登場したことにより早々にキュベレイが開発されるだろうと思ってたんだけど……どうやらジオンが、というより紫ババァが満足しちゃったようなんだ。
確かにキュベレイはゲルググNをコンパクトにして運動性、機動性を上げただけの機体だけどさ。さすがにそれは無くね?
とか思ってたんだけど、どうやら懐事情が厳しいようだ。
レビル将軍は言いました。眉なしも苦しいが紫ババァも厳しい、と。
原作より技術が進歩している代わりに資金不足に悩むジオンと連邦。主に俺達のせいです。
その代わりギレンの野望でもそうだけど資源は余ってるみたいだ。ギレンの野望だと資源を売って資金に換えたりできるんだけど、現実にそれをやろうとすると資源が二束三文で買い叩かれて大損だったりするから注意だ。
ジオンに金無し!
連邦にも金無し!
それでもロシアから金を絞ってるからジオンの懐事情は少しマシになってるみたいだけどね。
ジオンは決戦に向けてゲルググからゲルググMを量産、つまり原作で言うゲルググMからゲルググJを量産しているようだ。
一定以上の腕を持つベテランにゲルググMを供給するつもりなのだろう。
そして連邦は一足お先にガンダムTR-1をエース級パイロットに供給が終わり、目覚ましい戦果を上げていてジャミトフも鼻が高いことだろう。
機体性能的には機動力、運動性はゲルググM、継戦能力、防御力、生産性はTR-1が有利という感じか。
そして最新モビルスーツ情報も届いた。
連邦は変わりはないがジオンはゲルググの上位機体としてガルバルディαが登場、ゲルググの次世代機として期待されている。
ただ統合計画規格からは外れている新機軸のモビルスーツでありコストはお察しだが、ジオニックとツィマッドが共同開発した初めての機体であるため、コスト面は後々解消されると思われるため、これからの主軸となる可能性を秘めている。
新しいモビルスーツがジオンだけに開発されて連邦は大丈夫なのか?と思うかもしれないが、逆に言うとそれだけジムクゥエルとジムカスタムの完成度が高いということなのだ。
特にジムクゥエルは生産コストとスペックを考えれば優秀で、TR-1はジムクゥエルの兄弟機で部品の互換性が高くてエース機が低コストで作れるのはメリットだ。
そういえば、ジオニック社の技術が連邦に流れないとなるとパクリザクことハイザックは誕生しないだろうなぁ。
「そろそろゲルググの時代も終了かねぇ」
「私達も独自のモビルスーツを開発しないと置いて行かれそうです。幸いフィッシュボーンも好調ですし、水上仕様もぼちぼち、ただドップとルッグンは売れていますがやはり連邦の正規品には今一歩な感がありますね」
「そうはいっても航空機の開発は昔から行われている分野だから新規開発ってのはなかなか……それに開発チームに得意そうなやつがいないってのも問題だな」
モビルスーツは黎明期だから参入できるけど昔からある兵器はやはり追いつけない。
「それでもドップやルッグンを改修すべきだと思います」
「なら一応意見を募ってみるか」
まぁ、これからはなぜかモビルスーツを飛ばすことが流行るはずだから重要性が下がるはずだからいいんだけど……あ。
「そうだ、ドダイの設計図って確かあったよな」
「ええ、キャリフォルニアベースを落とした際に手に入ってますけど」
よし、なら一足お先にゲタの製作でもするか。
正直航空機の方が有力だと思うんだが原作では逆シャアまで流行ってたし、UCは……思い出せないけどVガンは形は違うがタイヤっぽいアレも同類だろうしな。
いや、モビルスーツの移動距離、つまり推進剤を増やしたくないし減らしたくないし無駄にしたくないというのはわかるんだけど、戦場に辿り着いた後の補給はどうする気なんだろ?
片道切符しかない航空機で戦闘したくないぞ、俺は。
まぁ多分、ゲタに乗って出撃→ゲタは使い捨てるもの→アナハイムが儲かる、みたいな仕組みなんだろうけども。
「急報だよ。連邦がハワイを落としたみたいだ」
突然現れたシーマ様、重要な事なんで教えてくれるのは嬉しいんだけど……別にシーマ様が直接来なくてもいいんだよ?
「よくハワイを落とせたな。あそこにはズゴックDやハイゴッグなどが配備されていてジオン有利だと思ってたんだけど」
「どうやら相当な数の航空機を投入して制空圏を確保した後、私達が作った水上仕様とアクアジムII、ドン・エスカルゴによる絨毯爆撃を行い、力押しで潰したみたいだ。キャリフォルニアベースの生産工場が無事だったため大量生産ができたんだろうね」
うは、また俺達のせいですか。
ハワイが落とされたということは日本どうするんだろ?あそこにジオンは駐屯してないんだけど。
「ハワイは落とされたようだけどジオンのその…水泳部が残存部隊で補給破壊を行った結果、ハワイ本島だけしか占領できていないようだけどさ」
日本、危うし。
ああ!!日本といえば!!
「バ○ダイの株を買わなくちゃ!……じゃなくて、ムラサメ研究所!」
「確か紫ババァが作ったニュータイプ研究所だったね」
「ブルーニーさんが気にしてた研究所ですね」
存在してるんだな。
半中立国みたいになってるから安全だと踏んで日本に作ったのかな?
「急いでムラサメ研究所を買収……したいんだけど、資金余裕ある?」
「アイナ連れてくるから少し待ってな」
またわけがわからないものに投資を……とブツクサ言われたけどなんとか買収できそうらしい。
紫ババァにも話を通さないといけないかな。
これで夢の強化人間部隊が……あんな精神不安定で役に立つかなぁ。と言うかニュータイプを増やせる段階で要らないような気もするけど、サイコミュの開発してもらいたいしね。