第71話
紫ババァがムラサメ研究所を手放すのをめっちゃ渋られた。
仕方ないんで連邦が日本に侵攻したら売ってくれるという方向で着地、紫ババァのくせに生意気な。
それとジオンが無理やり軍を駐屯させようとして日本が少し態度を変えた。
ジオンに全く協力していなかったが事態が事態なので妥協して即席の補給基地を提供することになったらしい。
別に日本がジオンに擦り寄ったわけではなく、無理やり駐屯させられるよりは……と脅しに屈した結果……というのが表向きだが、本当は終戦が間近だという情報を手に入れてジオンがアジア圏に影響力を残しそうだから少し点数稼ぎをしたかったのが本音だろうね。
ちなみにだが日本にお掃除ロボットルン○ならぬお掃除ロボットハロを売りだしたところ、そこそこ売れている。
ル○バと違ってハロは掃き掃除、水拭き乾拭き、布団たたき(干すは不可)、洗濯、ゴミ捨て、整理整頓、レシピをインプットすれば料理まで出来るのだ!……あれ?お掃除の範囲超えてる気がする?
ただ、早速ペキンでお掃除ロボバーローなるものが出回っているのが悩みの種だ。
さすがペキン、汚い。
ジオンに取り締まるように厳重に注意しておかなくちゃな。
あまり酷かったらジオンに損害賠償支払わせるから覚悟しとけよ。
「お掃除ハロのおかげで都市部は清潔になりましたね。ポートモレスビーの清掃会社がほとんど倒産しましたけど」
手を抜かない、サボらない、費用が安い、というお掃除ハロに押されて清掃会社はブルーパプワの傘下の会社以外はほとんど潰れたが現在は好景気で仕事は腐るほどあるから就職には困らないだろう。
それに仕事が雑過ぎるんだよなぁ。
ニューギニア島は俺達が参入する前まで11%の失業率だったが現在は8%まで改善しているし、今月末から始まるマスドライバー建設で更に改善するだろう。
その後は宇宙需要で農業や水産業の一次産業、木工などの二次産業が活発になるから戦後不況は乗りきれるはず。
そういえばエレーベーターロケットは大気圏脱出時の負担がスペースシャトルのそれより軽いので宇宙旅行が以前より更にお手軽になり、ニューギニア島ではブームになっている。
戦時中なのに脳天気なもんだな……まぁ好景気中はこんなもんかもしれん。
逆にサイド6からの旅行者もいる、というかサイド6からの旅行者の方が多い。
ニューギニア島は自然観光地としてはかなり有力だからスペースノイドからすると未知の体験だし、ジオンとの戦争が始まってからサイド6に逃げ込んだ連邦高官やその親族達も地球が恋しくて訪れることもあるそうだ。
「ああ、そういえばサイド5再建の件でコロニー公社からクレームが来ましたよ。連邦出資なのにうるさいですね」
他企業の利権を奪い過ぎてるか?でもコロニーに関しては連邦が許可出したんだから連邦に言えよ。
「アナハイムに送ったスパイからの情報では宇宙利権に手を出そうとしてるブルーパプワを敵視する流れになっているようです」
サイド5の再建は色々難儀しそうだ。
「あ、そういえば朗報ですよ。ユーコン型潜水艦が3日後ぐらいに完成するそうですよ」
「まだ5月なのにか?予定では早くて6月と聞いてたが……」
「どうやら倒産寸前の造船会社を幾つか吸収したことで完成が早まったようです」
不良品、欠陥品じゃなかったらいいんだけどね。
5月末、マスドライバーの建設を開始してニューギニア島が賑わっている中、それは始まった。
「とうとう始まったか、ソロモン決戦」
ジオン側はドロス級空母が4隻、グワジン級大型戦艦6隻、チベ級ティベ型巡洋艦12隻、ムサイ級巡洋艦は数えるの面倒大体50隻ぐらいか?補給艦に関しては省略。
連邦側はペガサス級強襲揚陸艦グレイファントムっぽい艦が3隻と……うーん、マゼラン級とサラミス級が混ざっててわかりにくいが合計で150隻、艦載能力がある艦がどれだけいるかわからない。実質空母扱いのコロンブス級宇宙輸送艦は相当多いが150隻くらいか?
それと両軍の補給艦、臨時空母としてフィッシュボーンがそれぞれ50隻がいるのはアイナの営業力の成果だ。
そしてジオン側には俺も知らない不明艦が4隻いるのも不穏だ。
ちなみに俺達は死神の陽炎すらも参戦禁止なので遠く離れて観戦中だ。
「開戦、か」
まずは両軍艦砲射撃。
目を引くのは不明艦だ。先頭付近を走るドロスの前、つまり最前線で盾になるように配置され、当たれば欠片も残らないようなメガ粒子砲の雨が不明艦に降り注ぐ……と思ったんだが。
「メガ粒子砲が拡散した?もしかしてIフィールドを搭載した護衛艦か?!」
メガ粒子砲では揺らがない、それに対して連邦はミサイルの雨で対抗。
しかし護衛艦という役割上……やっぱりか、ハリネズミのように機関砲が配置されていて激しい弾幕を張る。
連邦の艦砲射撃は圧倒されるが護衛艦により安全なタイミングで攻撃を仕掛けるドロワの砲撃に手を焼き、その脇にはグワジンやムサイ、宇宙砲台などが着実にダメージを与えていく。
もちろんジオン側も無傷ではないが艦砲射撃はジオン有利……開戦前にはこんなこと誰も予想もしなかっただろうな。
「こうなると連邦から白兵戦を挑むしかないか」
連邦から間合いを詰めてモビルスーツ隊が出撃。
ジムカスタムが一番数が多いというあたりで連邦の本気度がわかる。
次に多いのがジムキャノン、そして次がTR-1ヘイズルというなんとも豪華な布陣だ。
ジムクゥエルが一番少なくてジムキャノンの護衛を務めるようだ。
そしてそれに呼応するようにジオンもモビルスーツ、モビルアーマーが出撃する。
ゲルググMとゲルググの数が五分、ゲルググキャノンとザク改キャノンが同数ぐらいで20部隊ずつぐらい、ガルバルディαが20機以下、そして……護衛艦から——
「ノイエ・ジールか!しかも4機とか大盤振る舞い過ぎるだろ!」
しかもカラーからするとガトー、シン・マツナガ、ジョニー・ライデンかな?シャアかもしれないけど……そして1機だけ武装が違うな……あの見かけは——
「ファンネル……いえ、エルメスのビットをそのまま使ってるようですね。ということはニュータイプ専用ノイエ・ジールでしょうか、パイロットは……この感覚、ララァさんですね」
なんという悪夢。
もしかして護衛艦はノイエ・ジールの補給艦としての役割もあるのか?
実弾装備が少ない連邦はノイエ・ジールに有効なダメージは与えられない。
連邦はノイエ・ジールの圧倒的な強さに陣形が崩れ、混乱状態となりつつあったがTR-1ヘイズルがノイエ・ジールと戦い始めると後方支援のジムキャノンの砲撃と艦砲射撃でララァ以外は互角に戦い、足止めに成功したのでなんとか立て直しを図っている。
ただしララァを止めるには至っておらず、近くで暴れている赤いゲルググMはシャアだろう……がフォローして勢いは断然ジオンだ。
そしてもう1つ新たな戦場が生まれたようだ。
連邦の切り札の1つ、ソーラ・システム。
衛星軌道上で配置を始めていたのだが、ペキンのジオンが察知してゴモラが慌ててザンジバル3隻と偶々通りかかったブルーパプワのフィッシュボーン(格納庫仕様コンテナ)を言い値で買い取り、妨害部隊を打ち上げて派遣した。
いやー、偶然って凄いね。本当に……うん、本当に偶然だよ?
そしてソーラ・システム防衛、破壊戦が開始された。
ジオン側はザンジバル3隻、フィッシュボーン5隻、ゲルググ33機とザク改キャノン15機。
連邦側はマゼラン2隻、サラミス10隻、コロンブス8隻、ジムクゥエル70機。
数では連邦が圧倒的なのだが不安要素もある。
それは……マゼランに乗って指揮しているのがゴップとリードという最悪最低のコンビだったのだ。
<地球連邦・ソーラ・システム護衛軍旗艦>
「それにしても楽な任務だね。リードくん」
『は、はい。しかしジオンはまだ地球に勢力を残しているのですが、だ、大丈夫なんでしょうか』
「地球のジオンは西ロシア戦線に集中しているとエルランくんが言っていたので大丈夫だよ」
『そ、そうですか』
突然警報が鳴り響く。
「一体何だね。このうるさい警報みたいなのは」
『ゴップ大将!敵です!ジオンが来ました』
「ハッハッハ、何を馬鹿なことを言ってるんだね。衛星軌道上はほぼ私達が抑えて——」
『しかし敵が——モビルスーツ隊を早く出撃させてください!』
「全くリードくんは働き過ぎ——」
配置していたミラーパネルがはじけ飛び、護衛のサラミスも1隻沈むとやっと事態が飲み込めたゴップ大将が出撃命令をだす。
「モビルスーツ隊をすぐに出せ!!は、早く敵を倒すんだ!!」
「先に艦砲射撃を——」
「いいから出すんだ!」
本来砲撃能力があるのはザンジバル2隻しかいないのだから砲撃だけである程度どうにかなるはずだったのだが無能というのは戦況を悪くすることに関しては有能なのだ。
「モビルスーツの半分を護衛につけろ」
「わかりました。ソーラ・システムの護衛に——」
「馬鹿かキサマ!私の護衛に決まっているだろう!」
「…………」