第七十六話
ルナツーとソロモンの距離は足が速い普通の船なら1日で到着できる。
1個艦隊での移動なら2日、2個艦隊なら3日……という風になる。
つまりルナツー〜ソロモン間の距離があまりないので補給はそれほど時間が掛からないということだ。
そういう意味ではソロモン〜ア・バオア・クー間の距離も同じなのだ。
しかし元々の組織力、国力の差により連邦に劣るジオンは長期戦になれば不利なのは間違いないが短期戦の要であったノイエ・ジールの運用率が下がり、それも難しくなってきた。
とは言ってもジオンが嫌がる消耗戦が繰り広げられるだけで連邦が勝てる……この場合ソロモンを落とす……要素はあまり多くない。
何より艦を修理する能力がある拠点が間近にあるのは大きい。
実際中破した護衛艦の修理がされていて、そのうち復帰することだろう。
「つまり泥沼だな」
「ですね。両軍共に決定打を欠いてますから」
とはいえ、ソーラ・システムやノイエ・ジール級の戦術、戦略級兵器がポンポン出されたら俺達が安心してみてられんがな。
全体の戦況的には互角、連邦の無茶なEパックの打ち出しによって補給スピードが早くなったため、多少補給面が改善?されたおかげだが……たまに推進剤が切れて動けなくなったりするのはご愛嬌。
他にもマシントラブルがあったりとこんな指示をしたレビルに現場の人間から怨嗟が聞こえているだろうか、ニュータイプじゃないから無理か……ん?そういやレビルも一部ではニュータイプって設定があったな。
もしそうなら今頃吐き気が止まらんだろうね。
さて、戦場全体はほぼ膠着状態なので激戦区をピックアップ!
もちろんトピックスは——ガトーショコラ&赤い彗星詐欺VS白いアッ、熊!の戦いだろう。
巨大モビルアーマー2機が小さいモビルスーツ1機に翻弄されるその光景は滑稽。
アムロは最初からノイエ・ジールの相手になるように出撃したのかバズーカを装備していて、お菓子と詐欺師はなかなかやり辛そうだ。
お互い初めて戦うので強さが分からず、ガトーが有線式アームで貫こうと飛ばしたのだが悪かった。
それを余裕で容赦なく切断するアムロに、1つの武器を失ったガトー。
ガトーもそれで敵は並大抵の敵でないと気づいたのかここからは慎重に戦うようになる。
この時はアムロ側にはセイラ達がいたのだが、ガトー側にケリィやカリウス(だと勝手に俺が思ってる)達が現れて今も激戦を繰り広げている。
まだ大尉であるガトーだが腕前はやはりエース、アムロに圧され、バズーカを数発喰らいながらも耐え凌いでいた。
そこへ強敵の匂いでも嗅ぎつけたのか赤い彗星詐欺が登場。
最初はセイラ達に前回の借りを返すように戦っていたのだがガトーが協力要請を出したようで、アムロと戦うようになると五分、いやそれでも若干アムロ有利で戦いを進めている。
ガトー達が不利な理由はアムロが強いからもあるが元々ノイエ・ジールはビーム兵器をメインにしているため同機同士の連携は良くないためだと思われる。
お互いのIフィールドでビームを消しちゃうことがしばしばあるわけよ、しかもあのデカさだから接近戦なんてできるわけもない。
「おっと、ここでバトンタッチか」
「本物の赤い彗星とずっと私に怯えてる失礼なララァさんですね」
ニュータイプ専用ノイエ・ジール、原作風に言うとノイエ・ジールIIプロトタイプ的なそれはビットが使えるだけでそれほど差があるわけではないが、シャアはアムロと何度も戦ったことがあるし、アムロと戦う上ではモビルスーツの方が戦いやすいだろう。
そしてシャアとの連携が上手いララァであるからいい勝負ができる。
実際シャアはアムロと互角で戦い……いや、よく考えれば経験的にはシャアが上まってないとおかしいんだけどさ……ララァのサポートでNT-1フルバーニアは肩や脹脛(ふくらはぎ)などが融解させられている。
どうもビットはエルメスのものと同じと思っていたが機動力がエルメスのビットよりいいようでアムロも苦戦しているようだ。
それに対してアムロはバズーカ装備でありシャアやララァにはその攻撃は見切られて効果が薄くて替えの武器が欲しいだろうね。
そんなところへセイラ達に生乳部隊が襲い掛かる。
セイラと生乳って書くと色々やばいな……じゃなくて両軍のニュータイプ、ここに集結。
ゲルググN2機はもちろんだが、ガルバルディα25機、ゲルググ20機と随分増量されている。
まぁ、第13独立部隊に差し向けたようだけど、周りはジムカスタムがフォローしているので全部と戦う必要はないのだがゲルググN2機に限って言えばその周りにいるジムカスタムに対して圧倒的な強さを示す。
やっぱビットやファンネルは格下の相手には絶大な効果を発揮するな。
<絶賛激戦中のアムロ・レイ>
「くっ?!いい加減しつこいぞ、シャア!」
『それはこちらの台詞だ。ララァと静かに暮らすために撃墜数を増やしてボーナスを稼がねばならんというのに!』
「庶民じみてるぞシャア!」
『私は自由に生きると決めたのだ。そのために貴様は邪魔なのだよ!』
「勝手な言い分を!」
と言うか僕に何一つ関係ない話ばかりだな。
それにセイラさんのことは放置でいいのか?セイラさんは随分気にしてたようだけど。
『大佐、私が稼ぎますからお気遣いなく』
『しかし、アムロの相手ばかりではしんどい——面倒なのだが』
『頑張ってください!大佐は頑張ればできる子だと信じてます!』
できる『子』って……そんなことでいいのだろうか。
『それとセイラは嫁にやらん!』
「僕、一言もそんなこと言って——」
『ニュータイプとは便利なものだな』
「プライバシー侵害だ!」
『そういうなら証拠を見せろ!』
く、屁理屈を……と、言うよりまだセイラさんと付き合ってるわけじゃないんだけど。
「そんなにお金を稼ぎたいならブルーニーさんのところで働いたらいいだろう」
『あ、蒼い死神の下で働くだと——ララァ!』
『いや、いや……いやぁ!』
『しっかりするんだララァ!』
え、これって僕のせいなのか?
もしかしてさっきから遠くで苛立って怖い気配が感じるが、もしかしてマリアさんの気配か?そうなら後が怖すぎる。
あの絶望的な、心が折れそうなプレッシャーはもう浴びたくない。
僕、この戦いに勝ったらブルーニーさんのところで就職するんだ。と言ったらセイラさん達に「無駄に死亡フラグ立てるな!」って怒られたっけ。
未だに死亡フラグが何なのかはわからないけど……フラグってプログラミング用語なんだけど、なにか関連性があるのかな。
『良くもララァを!』
「いや、僕何もしてないよね?!冤罪反対!そもそもそのマスクが不審者で職質掛けられるほど怪しいくせに冤罪なんて!」
『こ。このマスクは父の形見……』
「セイラさんが『兄さんが変態になってしまった』と嘆いてたんだぞ」
『ぐふっ』
「お前が載ってるのはゲルググだろ」
あ、そういう意味じゃないのか。素で答えてしまった……恥ずかしい。
「それに僕は終戦後、ブルーニーさんのところから内定をもらったんだけど……」
『何?!貴様まで死神の応護を受けるというのか』
「『まで』?他に誰かいるのか?」
『大佐、もうアクシズを……地球に落とすしか……』
『何を言っている!そんなことできるはずが』
アクシズってなんだろう。
なんだろう、アムロとシャアとララァが凄くカオスな空気になってる気がする。
ここでビッグニュース!まさかの赤い彗星詐欺さんの乗るノイエ・ジールが撃墜されました。
T3隊と戦闘中にノイエ・ジールが動作不良を起こしてしまい撃墜され、赤い彗星詐欺さん死亡……かと思ったら、しぶとく脱出して味方に拾われてた。
ちなみにノイエ・ジールが撃墜された時ガトーさんは号泣したそうです。
ノイエ・ジールを失った赤い彗星詐欺さんは予備機として用意されていたゲルググMで出撃……更に赤い彗星詐欺としての異名が知れ渡ったとか。
動作不良が起こったのはやはり護衛艦が減り、整備能力の低下は痛かったんだろうね。
ただし、ノイエ・ジールの数が減って補給がしやすくなったという面もある。
「とは言え、ノイエ・ジールが堕ちたことによって兵士達の士気低下と動揺が広がってるようだな。しかもスカーさんが死んだ時と同レベルか」
「アレだけ派手な活躍をしていたらそうでしょうね。今まで2交代でローテーションしてましたが、これでノイエ・ジール1機に掛かる負担が増えますね」
「ああ……それに忘れてはいけないのはパイロットのことだ。今までは余裕があったから休憩できていたから良かったが、これからは疲労が増々だからひょっとすればひょっとするぞ」
アムロが落とすものと思ってたが、まさかT3部隊に落とされるとは……さすがティターンズに選ばれたエリートor精鋭達、まだ19歳など若いのによくやるな。
そういえばT3部隊はエリートで精鋭を教育するための部隊なんだそうで、将来部隊を率いて戦うような階級を目指すそうだ。
ティターンズより先に生まれたが目的はある程度同じだが若干変わってるのはバスクが死んだからなのか、それともやはりティターンズより先に作られたからなのか。
他のTR-1も活躍が目立つので恐らくTR-1はシリーズ化されるだろうね。
うちでも生産させてくれないかなぁ……連邦製の製品だから多分思った以上には簡単だろうけど、それでも難しいだろう……ジャミトフ次第か。
これから戦場が大きく動くだろう。