第七十七話
「赤い彗星詐欺って長いよな。赤い詐欺でいっか」
「それだと赤い鷺みたいですよ」
それでもいいかな?
いや、クロサギとかシロサギの親戚でアカサギってのもアリか?短くなったし。
「哀れだな、紅い稲妻」
コッセルだけは赤い詐欺の味方だったらしい。
「3度ほど共に戦ったことがあります。もちろんシーマ様もご一緒に」
「なるほど、赤い詐欺もシーマ様も突撃機動軍だったんだからそういうこともあるか」
(と言うか以前ブルーニーが第13独立部隊と共に宇宙に上がってきた時に一緒だったのだが……もしかして俺達が一緒だったのに気づいてないのか?)
今、なんでこんな意味もない話をしているかというと、両軍小休憩に入っているからだ。
お互いビーム撹乱幕を散布してミサイルの打ち合い合戦、という名の盛大な無駄遣い。
モビルスーツが護衛してれば簡単には当たらないっての……と思ったが偶にムサイが当たってるんだよねぇ。
いやほら、旧式ムサイって迎撃能力低いじゃん?モビルスーツの護衛だけでカバーできるほどは優秀じゃないからねぇ。
ノイエ・ジールを1機落としたことが契機となっての小休憩、無駄遣いと称したミサイルだが補給と軍の再編成の多少の邪魔には成功している……がミサイルを消耗してまでする意味があるかは微妙だと思うんだけど。
本来なら連邦はノイエ・ジールが減ったんだから更に攻勢を仕掛けるのが正しいんだけど、これまで無理をしたことが祟ってこれ以上攻めたら自壊していくので仕方なく後退、ジオンもノイエ・ジール落とされて士気が落ちてるので後退した。
「そういやペキンの様子はどう?」
「ペキン、というより中国は「日本を滅ぼせ!日本人は皆殺しだ!」と煩いようですけど今のところ防衛に成功しているようですよ」
うは、さすが中国、連邦になっても反日教育してんのかよ。
何百年経とうとこういうのは変わってないらしい、ということは韓国も変わってないだろうね。
「ただし、広大な土地のため何処かは破られると思って間違いないでしょう。中国は人口が多く、現地兵を集めやすいですが質が悪いようで規律を守らない上に戦力的にはジオン兵の半分にも満たないというなかなか扱いづらいようですけど」
……いつの中国人ですか?
まぁそれは置いとくとして、ペキンはソロモン決戦より規模こそ若干小さいが死闘を繰り広げているらしい。
どれぐらい死闘かというとマリオンズがいるからとチベットやベトナムの守備隊を引き抜くぐらい切羽詰まっているっぽい。
ドップやルッグンは作れば作るほど売れている。
ブルーパプワの工場をフル稼働させれば1時間でドップとルッグンそれぞれ15機が出来上がるが、出来上がり次第輸送されているはず。
ちなみにソロモン決戦が始まって5時間で、日本侵攻が決戦開幕から1時間後、ペキン攻防戦が始まったのは日本侵攻から2時間後、つまりペキン攻防戦は実質2時間行われている。
フル稼働に移行したのは日本侵攻を聞いて直ぐらしいので4時間、つまり120機のドップとルッグンが売れたことになる。
と言うか精密機器の塊である偵察機兼戦闘機のルッグンがドップと同じ速度で生産されるっておかしくない?と思うが出来るもんは出来るのでしかたない。
「ノリスさんからドップ、ルッグンの追加注文が来てますが……」
「いや、これ以上出来ないからフル稼働なんだろ?」
「はい。さすがにこれ以上は無理です」
だよな。
んー、なんか打開策は……よし。
「マリオンズをインドネシアに派遣、これでインドネシアの守備隊も引き抜けるだろう?」
「わかりました。ノリスさんに伝えてみます」
マリオンズは善意で派遣(無料)しているのでペキンに直接派遣はしない。
ソロモン決戦ではマリオンズ参加は禁止されたが、地球圏の戦いにおいてはその範囲外なので参加させられるんだけど……ジオン地上軍にそんな資金がない。
いや、正確には違う。
正確には『連邦の死神の鎌戦争不参加依頼をキャンセルするだけの』資金がないのだ。
俺達はジオン利権が欲しがってるのわかってるからジオン攻略作戦に参加ではなく、不参加依頼が来たわけだ。
この依頼にはジオンの報酬が一定以上の場合キャンセルすることができる。
その金額は……ヴィエーチルの20機相当の国債だった。
眉なしの裁可があれば解除できただろうけど残念ながら眉なしは前線指揮中で、時間は掛かったがなんとか連絡できたらしいが眉なしは地球に興味なしのご様子。
そりゃ地球にジオン領土なんて多くあっても維持するための労力や連邦との必要以上の外交問題となるのは目に見えてるから重要視しないわな。
もしくはいい加減本国すら経済危機なのに地球の面倒までとか無理!と思ったのかもね。
見返りは大きいだろうけどねー……欲張っても連邦に勝てる気がしないんだろう。
そういうわけであくまで俺達は普通の商売と契約違反ギリギリのボランティアぐらいしかやれないんだよ。
契約内容に『自己防衛による戦闘は自由』が含まれてて良かった良かった。
え?揚げ足取り?気のせいだ。
さて、ソロモン決戦第2幕が始まりましたよ、と。
ただし、面白みはない。
ノイエ・ジールも生乳も第13独立部隊も切り札、いや鬼札?だからか今回は前面に立てない。
つまりモブVSモブの戦いが繰り広げられるわけだ。
数で攻める連邦と熟練した腕で戦うジオン。
本当に予想通りの戦いであり、そんなに目新しい物はない。
切り札をまだ隠していたりすると面白いんだけど……連邦は補給の中になかったらもうないかな?あったらノイエ・ジールが1機沈んだ段階で切ってるはず。
ジオンは……ソロモンの中に何かある可能性もあるけども……ドズル死んだ時かビグ・ザム隊が強襲に成功した時に切ってると思うんだよな。
あ、そういえばビグ・ザム隊、結構被害を出しながらもなんとか合流できたよ。
おかげで艦隊の被害が減ったけど……Iフィールドも絶対ではないとわかったようで護衛艦の時ほど前線に出してない。
そういえば、見慣れて今気づいて凄く今更感があるけど名脇役と個人的に思うジムカスタムが量産されて主役として戦っている現状って……良い光景だなぁ。
不遇の量産機ゲルググ(Mですけど)も活躍してるし、この宇宙世紀はいい宇宙世紀だ!
まぁ本当の不遇機体ギャンは影も形もないが……あ、もしかして壺さん、原作通りアムロと戦ってないよな?もし戦ってたら壺さん死んでるぞ。
どう考えたってアムロ操るNT-1フルバーニアにギャンじゃ対抗できない……はず?
地味な戦いが1時間ほど経過すると連邦の補給部隊が到着。
ほぼきっかり6時間、つまりこれから6時間毎に補給部隊が来る可能性があるわけか。
これはジオンのピンチ。
モビルスーツの増援自体はそれほど多くないが整備や補給のペースが向上したのは痛いだろう。
まぁその補給部隊10隻のうち8隻がフィッシュボーンだったというのはなんとも言えないがな。
ひょっとするとこのまま定着してくれれば……と思うものの、多分定着しないだろうね。
だって戦時末期の今だから安かろう早かろう悪かろうが通じるが、平時ともなればハイコスト機の需要が高まるからな。
それの代表はZに出てきたガルダだろ。
アレってものすごい高級機なんだよな、イメージではミデアの上位機にしか思えないけど。
もっとも平時ともなれば貿易船としての本来の役割に戻るだけか、そんなに欲張ってもろくな事にならない。
「完全オリジナルなフィッシュボーンが活躍してると嬉しくなりますね!」
「そうだな。基本的に模造品しか作ってないから新鮮な気分だ」
「モビルスーツもオリジナルを出したいです!そして食べたい!」
そういや最近は残骸ばっか喰ってるから味がイマイチなんだよな。
しかもなにか特化した性能が無い限り進化もしない、センサーは若干良くなったのはなにか良い素材が混ざってたのかもだが、逆に言うとその程度でしかない。
会社でザクレロを作らせて喰えば拡散メガ粒子砲が手に入るかもしれないな……3機ほど作らせるか。
それとノイエ・ジールの残骸を狙ってたんだが……ソロモンに回収された。
さすがに機密度が高いせいか放置ではないらしい……残念、だがマリオンちゃん占いには『焦らず待てば汝、与えられん』とあったからそのうち食すこともあるだろう。
「お、先に札を切ったのは連邦か」
補給が到着して勢いに乗ったのか第13独立部隊が前線へ。
たった3隻の艦なのだが突入した戦場の敵はアッという間に陣形崩壊して、どんどん各個撃破されていく様は戦略視点で見ている指揮官からすれば悪夢以外にないな。
ひょっとするとアムロには新しい異名が付くかも?いや、第13独立部隊自体に異名が付く可能性があるな。
3隻のペガサス級……3隻の木馬……三角木——ゲフンゲフン。
そしてそれに対応するのは新旧合わせてのニュータイプ部隊だ。
ララァやクスコ、アスナなどのビット、ファンネル持ちは学習したのかニュータイプ、もしくはそれに準ずる者にはビットやファンネルは使用せず、周りにいるオールドタイプが操るTR-1に狙い、シャアを始めとするモブニュータイプが操るゲルググMが連携してアムロ達を——
「あれ?明らかに時間稼ぎしてるよな」
「みたいですね……もしかしすると推進剤を切らすのが狙いでしょうか」
フルバーニアは燃費が悪いのでそれを狙っている可能性はたしかに高い。
後、シャアとセイラとアムロが何やら戦闘しながら話しているような気がするが……なんかろくでもない会話をしてる気がする。
「ん?よく見るとTR-1の数が増えてね?」
「本当ですね。誰が……え?フラウさん?」
マジで?!