第八十三話
マスドライバーがついに完成した。
ん?アッサリ完成し過ぎ?いやいや、実はマリオンズを4人張り付かせていたが、100人を超える破壊工作員を捕まえているんだから簡単に完成したとは言って欲しくないな。
全員が全員ジオンの工作員を名乗るから連邦だろう……なんて思うのは2流がすること、まぁアナハイムと宇宙引越公社だろうね。
と言うかジオンにとっても利益が大きいマスドライバーを破壊するメリットが何処にあるのか。
マスドライバーが完成したのはいいんだけど……嫌がらせに宇宙引越公社のマスドライバーより利用料を若干安くした結果、近隣の物流が一変してニューギニア特別地区に集中するようになり、当初12時間営業の予定だったの24時間営業にして予約は3ヶ月先までいっぱい、4ヶ月先も危ういという感じな盛況ぶりだ。
ぶっちゃけ宇宙引越公社の破壊工作は今も続いていることは頭が痛いが、こればかりは仕方なし。
そうそう、いつ始まるか戦々恐々としていたアナハイムの快進撃がついに始まった。
まず手始めはジオニック社が餌食となった。
技術を軒並み買われ、開発者の半数は引き抜かれて屋台骨がへし折れて資金的な意味ではないく、人材不足による経営困難に追い込まれた。
それが終わるか終わらないかの頃にツィマッド社が狙われ、ジオニック社とほぼ同じ末路を辿る。
さて、弱ったところをまとめで傘下に……と思っていたアナハイムだったが全てが全て思い通りになるわけもなく、ジオニック、ツィマッドの2社は単独経営は厳しいと判断して合併してジオマッド社という新しい会社を設立したことにより打開を図る。
アナハイムに飲み込まれなかっただけ幸いだとは思うけど……ウチに派遣されている開発、研究者は本社に帰還することなく、このままニューギニア支社を作ることになるそうだ。
オリヴァーがこちらに来たのはその調整と見届け人という役割があったようだ……が、めっちゃ楽しそうに技術談議してたけどな。
まぁニューギニア島に新しい会社ができることは嬉しいことだ。俺達の資本力だけではニューギニア島を支えることは難しいからな。
強力なライバル会社ができればブルーパプワも引き締まるだろう。
あまり無茶苦茶な業務内容だと関係者全員リアルに海に沈めると言っておいたから大丈夫だろう。偶には海の魚達に餌をやってもいいよね?
ジオンで唯一、軍需産業の中で普通に生き残れたのはMIP社だったのは意外だ。
どうやらズゴックシリーズの利益は想像以上であり、ジオニック社のゲルググなどは数こそ多かったがアナハイムにライセンス生産を任せていたこともあって利益が薄く、資本が足りなかったようだ。
ツィマッド社はもっとわかりやすく、今まで開発自体は進めていたがパッとせず、やっと芽吹いたガルバルディαは原作のゲルググのように終戦でしか活躍できなかったためである。
ただし、MIP本社はサイド3ではあるとしつつも、地球圏内……正確にはインドネシア、ボルネオ島を主軸に大規模工場を建設していて、MIP社が持つサイド3の生産力より大きくなる予定だ。
それにズゴックDに続く、新機を開発中という噂が流れているのでジオン地球領では俺達の当面競合相手となること間違いなしだ。
話は戻すがアナハイムは今のところジオンよりの方針で動いている。
理由としてはやはりご近所さんであることと、アースノイドとスペースノイドのわだかまりが解消しきれず、連邦もそれを受けていい鴨ではあってもイマイチ乗り気でない点にある。
それでもゲルググの生産で得たノウハウを活かし、引き抜いた開発者達を使い、連邦向けに新しいモビルスーツを設計しているらしい。
もしかしてハイザックフラグですか?元のデザインでは売れないだろうから変更されるだろうけど。
それでも原作ほどではないにしても地球圏への影響は出てきている。
連邦のビームライフル、Eパックを開発したボウワ社自体やハービック社、ブラッシュ社の子会社などを傘下に加えて勢力拡大中。
そうそう、ブルーパプワは晴れてサイド3にハロの輸出が正式に決定した。
コロニーには最初からお掃除ロボがいるため、そちら向きの機能は排除して完全警備ロボ化したハロとなっているが、軍事転用できることが問題だな。先に作って特許取っとくか。
ちなみにハロ工場はサイド6のコロニーに用意した。
理由は他のサイドからも注文が来ているので一々打ち上げると費用がかかるためである。
ジオンの傘下に加えたサイドはサイド3と同様、徴兵により労働力の減少により労働不足に悩まされているのでハロの需要は多く求められている。
フィッシュボーンとは違いコロンブスのような強力なライバルが存在しないため、利益自体はフィッシュボーンより上であるためライセンス生産はしない方針だ。
警備用ハロ以外にも介護用なども開発中であるが、コロニーのメンテナンス用ハロの開発は着手していない。
何故かと言うとコロニーは多くの人間の命を支えているので機械にだけ頼るのを不安に思う住民が多いからだ。
まぁウチではモビルスーツを整備させるようにしているから他人事ではないけどな。
さて、目下の問題は……
「マスドライバー増設願い、ねぇ」
「はい、今の規模では不便ですから当然の声だとは思います。いくつかの外国資本から自分達で作るから許可が欲しいと言ってきてますね」
「許可を与えても宇宙引越公社の破壊工作に遭うだけだから許可を出しても問題ないが……」
「それを知らない人達からすると私達が利権を守るために破壊工作を仕掛けたと見えるかもしれませんし、宇宙引越公社やアナハイムあたりがそういう流れに持っていくと思われます」
だよねー。
そうなるとマリオンズの派遣する必要が出てくるし……
「俺達でもう1つ作るか、方向を変えれば宇宙の渋滞も解消できるし」
「それがいいですね」
陸では荷物の渋滞が起こっているが宇宙では船の渋滞が起こっていて少し問題になっているので丁度いいといえば丁度いい。
マスドライバーで一番苦労した資材集めも今ではインドネシア(忘れてたけどボルネオ島はインドネシアで統一されてます)、オーストラリア(元々マスドライバーがあったけど戦争で、というよりコロニー落としで無くなった)、フィリピン、ベトナムなどの物流の中心となっているため簡単に揃うだろうし、最近女性の社会進出を推進していて主に重機操縦士などを育成しているのでそろそろ余裕ができてくるはずだし、2度目なのでもう少し早く仕上がるだろう。
まぁ実際問題、マスドライバーの利益より貸し倉庫の方が利益出てる段階で不健全だよねー。
「そういえば都心は高層マンションが増えてきたな」
「はい、人口増加に伴い戸建てでは森林伐採をしないといけないので耐震がしっかりした高層マンションを建設しています。売らずに賃貸ですけどね」
余談だがある種の詐欺のようなマンション部屋売りなんてのは早々に違法化して賃貸を義務付けにしている。
老朽化で改修工事するのに住人の意見を一々聞く耳なんて俺にはない、文句あるなら出て行け!が方針である。
高層マンションの並ぶ風景はなんだか密林に囲まれるドバイのようだ。
幸い日照権なんてものは無いので建てるのは楽だったらしい。
いやー政策や法律から弄れるってインチキだねぇ。
マスドライバーの増設だって政府からの依頼ってことで補助金出してもらうつもりだし。
「SFSの開発について報告が……」
今まで黙ってたアイナが発現する。
しかし俺はゲタという名称に設定したのに皆がかっこ悪いと言って原作通りSFS(サブフライトシステム)と呼ぶ……これが世界の修正力というやつなのか?!
「SFS自体はほぼ完成しましたがモビルスーツからパイロットに操縦するというシステムに問題が有ります。モビルスーツが動かせるから飛行機が問題なく動かせるわけじゃありませんから」
そりゃそうだよな。連邦はよく飛行機乗り達をモビルスーツに転換できたもんだよ。
だって航空機と戦車では操縦方法や戦略が全然違うのにな。これがZガンダムなんかだと飛行機乗りでも多少動かしやすいと思うけど。
「試験的にハロに操縦させてみましたが……やはり独立したハロでは限界があり、コンピューターを増設してはコストが上がってしまいますし……」
「わかった。パイロット操縦のものでいいからとりあえず100機作って連邦とジオンに営業掛けてみてくれ、俺達みたいな傭兵では習熟も難しいけど本職の軍人達にとっては問題ないだろうから」
「わかりました」
実は気づいてしまったのだよ。
SFSが両軍に採用されるとしよう。そうすると空を飛ぶわけだろ?そうなるとマリオンズがのるアプサラスIVの有利は隔絶としたものとなる!!
よく仮想戦記モノで空母や潜水艦が主力になると知りつつ他国に戦艦を作らせるように促したりするのと同じだな……詐欺と言われても文句言えない気もする。
アプサラスIVと言えば、ニューギニア島防衛用として追加で2機生産することにした。
「水中用モビルスーツですが設計は完成したので……どうぞ」
お、やっとできた——……あるぇ?どうしてこの世界にSEEDのグーンが??
足が短い以外は丸々グーンじゃん、もしかして転生者が身内にいる?それともザクやグフをパクられたからパクり返したのか?
「名武装はやはり水中戦ということで魚雷やミサイルがメインになりますが、予定スペックではズゴックDより高性能とのことです」
なるほど、水中では威力が落ちるビーム兵器を装備するズゴックDよりアドバンテージが強く、陸を歩くのに必要な足や関節を極力減らした上で推力の増設か、確かに水中専用として製造されている分、有利になるか。
見かけがグーンなのが唯一の不安だな。どう考えてもやられ役のイカorヒトデだし。
「なら早速製造に掛かってくれ。もしこれ実用できれば日本に売ってデータ取りして連邦に売れるかもしれん」
「そうなればいいんですけど……」
ちなみに中国にはジオンからズゴックDが販売されている。
これは俺達とジオンが話し合った結果の利権、どっちが勝ってもどっちも美味い、第三国の武器商人美味すぎる。