第九十二話
韓国軍参戦は第二次世界大戦のイタリア軍参戦と同じような感じだと思う。
中国(ドイツ)勝てそう、勝ち馬乗っとけ、的な。
そしてやられてm9(^Д^)プギャー的な?
どういう意味かというと韓国軍が参加したことによって連邦が動いた。
日本対中国はジオンが絡んでいたため、経済的に余裕がない連邦は深く介入することを避けて放置政策をとったのだが、韓国は違う。
日本は報復という大義名分があり、中国は反発して戦争という形になった。
話し合いで解決しなかったから戦争という形になったが、当事者だった。
しかし韓国は全く関係ない第三国が私利私欲のために侵略行為を行うというのは連邦は容認せず、日本に援軍を送ることを決定した。
そしてこれがティターンズの初仕事——
「ということでいいんだな。ジャミトフ」
『うむ、私としてはアフリカのジオン残党を片付けたかったんだがな』
実のところ援軍にティターンズが来ることになったのはコーウェンの策略らしい。
戦力から考えると中国軍の方がティターンズより数倍多い。つまり負ける公算が高く、引き分けでも辛勝でも勢力は削れ、発言力は下がるというパッと聞いた感じ穴のない策だ。
同時に連邦の威信が下がるというデメリットを考えてないあたりがコーウェンは所詮軍人だということだろう。
「そっちは俺達に任せてくれれば平和裏に宇宙なりジオン地球領なりに送るよ」
『考えておく、それで中国の日本軍はどのような様子だ』
「ん?それはそっちで確認できるだろ?日本に協力するようになったんだし」
『政府というのはどこも自分の不利になるようなことは言わんものじゃ』
「信用出来ないと」
『そこまでは言わんが実際問題前線と安全地帯での印象では差があるからな』
ますますごもっとも。
「色々複雑な戦況だが、一言でいえば幸先短し、ってところか」
『ふむ、やはり数が違いすぎるか』
「その通り、アプサラスIVが制空圏(何度も言ってるので以下略)どうにかなっているが……何より日本軍の数が少ないからな。揚陸に成功して陸地を確保しているのが奇跡だな」
民衆に押されて戦争なんてやるもんじゃないな。
いや、軍備を充実させてたら中国はもっと充実してるからある程度早い方がよかったのか?
『その奇跡を成立させておるアプサラスIVがなんとも心強い。やはり死神の鎌が乗っておるのか?』
「ああ、アレが普通のパイロットなら会社も安泰なんだけどな」
もっともあの強さの兵器が溢れていたら俺達は駆逐されるだろうけど。
『それは世も末だろう。韓国の方の事情も知っておるか』
「俺が知ってる範囲だと対馬に出撃した韓国軍の航空部隊はアプサラスIVによって壊滅、在来韓国人の邪魔され一部上陸、占拠されているがどうにかなりそうだって話だ」
『ふむ、そちらは情報通りか。大韓民国最大のミスは大義名分を用意しなかったこととアプサラスIVが対馬に配備されているのを掴めなかったことだな』
恐らく過去に政府の腐敗(現代でも船が沈んだ時色々あったな)で耐え切れなくなった軍部が軍事クーデターを起こし、しばらく独裁政権を樹立してまた悲惨なことになり、それが倒れてからは軍隊に忌避感が根強く生まれたとか何とかって宇宙世紀の教科書に書いてあった。
そのせいで韓国軍は日頃そんなに士気は高くないらしい……んだけど相手が日本となったら話は変わる。
今こそ豊臣秀吉の悪逆を倍にして返す時!とか、植民地にされた怨みを思い知れ!とかなんとか言って国をまとめあげたわけだが……お前ら、いつの話をしてるんだ??と思ったのは連邦も同じだったらしく呆れたとのこと。
とにかく、軍が冷遇されていたせいで練度の低下を招いた結果がこんな形で現れたわけだ。
………………ざまぁw
『と言うてもティターンズはアジアやオーストラリア方面にはおらん。とりあえずチベットから出撃することになるから中国を挟撃する形になる』
「……それって各個撃破されるだけじゃないですか?」
今まで黙って聞いていたマリオンちゃんのツッコミ。
確かに日本軍より規模が大きいティターンズだが、それでも中国軍より小さいのだから危惧するところはわかる。
『どうやら中国軍のモビルスーツ部隊のほとんどは上海に集めておるようだから、手早く雲南省と四川省を制圧する』
「そうすればこちらの圧力が減る……か」
『うむ、こちらも実戦経験が豊富とは言えんからな。別に行動した方が混乱も少ないだろう』
「わかった。しばらく揚陸地で引き篭もって——」
ん?上海沖で待機してる艦隊から連絡?
『死神殿!至急救援に来ていただきたい!ズゴックD隊は文字通り全滅、クーンも3桁を切ろうと——』
「わかった。すぐ行く。なんとしても保たせろ——そういうことだジャミトフ」
『うむ、健闘を祈る……必要もないかの』
「なら俺達からは蒼い死神の加護を……なんてな」
『それは心強い、むしろ本物の死神が逃げて不老不死になってしまいそうだな』
半分ならできなくはないぞ、とは言わない。
もしグリプス戦役が終わって生きている、俺達側に立っていたなら若返りも考えんでもないけど。
とりあえず、急いで艦隊へ。
マリオンちゃんのニュータイプ能力は伊達ではなく、随分離れている艦隊も把握することが出来る。
艦隊自体はなんとか損害はないようだがモビルスーツ部隊は報告された通り酷い有様だ。
補給物資は艦隊が管理しているため、艦隊が撃墜されれば影響がでる。
敵の気配は300、全てズゴックDのようだ。
ズゴックIIはまだそれほど生産されていないんだろうな。
しかしこれだけの差があってよく保ったな。
クーンが優秀なのか、日本兵が優秀なのか、中国兵が無能なのか……俺達的にはクーンが優秀だったらいいんだけど。
「さて、ファンネルは出力と収束率の関係で使えないが……」
「多目的ランチャーのおかげで魚雷が発射できるようになったのは心強いですね」
「本当にな」
一応メガ粒子砲も使えるが減衰率と命中率がなぁ……最近の水陸両用モビルスーツは機動性、運動性が上がってるから距離があると俺達でも当てられないのが難点だ。
現場に到着。
とりあえず敵はまだ俺達に気づいていないようなので燃料消費は気にせず乱射、乱射、乱射。
当たればよし、躱されればクーンが倒すだろう。
クーン達と挟撃するように攻撃をして半分は藻屑となったが俺達の後方からおかわり、つまり援軍が来た。
本当に嫌になるほど数が多いな、しかも今度は3機のズゴックIIが混じってる。是が非でも食べてみたい。
半数になったんだから日本軍に任せれば……と思いたいがクーンの数は既に82機、ズゴックDは300から148機になったが以前日本軍不利なので仕方ないのでクーン部隊と合流するようズゴックDを蹴散らしつつ突破、俺達が指揮を執る。
「艦隊を逃がせば楽なんだろうけど陸にいる部隊が干上がってしまうからな」
「アプサラスIVも補給が無ければただの鉄塊ですから」
普通なら揚陸地に物資を蓄積する基地を作るんだが、そんなことを現状でしようものなら猛攻にあって焼かれるだけだろう。
少なくともティターンズが攻めこむまでは無理だな。
「残るクーン部隊に告げる。よく戦い、守った、しかし戦いはまだ続く。逃げたい者もいるだろう。しかしここを逃げれば陸にいる同胞が腐った酢豚共の餌食にされる。戦え、更に戦え、今はそれが使命だ……しかし死ぬことは味方に負担を掛けることになる。だから早々死ぬことは罪だと思え」
『『『おう!!』』』
無茶を言っているにも関わらず、返事がいい。
日本人は良くも悪くも自己犠牲を美徳としている部分がある。それは命が安い下士官にとって幸せなことであり、不幸せなところだろうな。
「前衛は俺達が務める。クーン部隊は抜けてきた敵を叩け、補給を忘れるなよ」
『『『ハッ!』』』
マリオンズもこちらに来るように言っているが揚陸地防衛と補給で手一杯だそうだ。
もう2、3人連れてくれば良かったか?……あ、忘れてた。
「リリ丸聞こえるか」
『感度良好、ミノフスキー粒子散布が疎かになっていて通信良好です』
まぁだからジャミトフとも連絡が取れたんだけどな。
アプサラスIVが制空圏を確立するとミノ粉を散布する部隊がいなくなるので結果的にミノ粉が薄くなるようだ。
「黒い三連星とゼロ・ムラサメを出せ」
『了解しました……ゼロ!早く出撃せんか!ウルトラロボット大戦やってるから少し待て?よし、鉄拳制裁だ!!』
……やはり中の人の影響か、スパロボ(のパクリだけど)が好きらしい。
と言うか自爆しそうで心配だ。
「私達より多少劣りますけど、彼らならこの程度の戦場で死ぬことはないでしょう」
「この程度って……援軍合わせて400機にもなってんだけど」
「でも練度は低いみたいですよ」
あ、本当だな。味方同士がぶつかってあたふたしてるよ。
明らかに運転時間足りてないだろ。
まぁ一斉に魚雷発射されるだけでも脅威だけどな!!
「撃つべし、撃つべし、撃つべし」
片っ端から迎撃していくがやはりファンネルが使えないのは辛いな。
回避したら艦隊に当たるようなものもいくつかあるし……というかクーン部隊はよく回避している。
今俺達の手に持っているのはビームライフルではなくマシンガンで、しかも水中仕様の弾を開発させたお陰でビーム兵器より何もかも良くて水中装備はこれ以上ないかも?と思うほどだ。
バズーカは趣味じゃないんだよなぁ。
『『『黒い三連星参上!』』』
『俺も忘れるなよ』
「来たか」
黒いクーン3機と灰色のクーンが現れる。
余談だがブルーパプワで開発されたクーンなのだが実はニューギニア特別地区で配備されているのはこの4機以外に6機しかなかったりする。
ほとんど日本に買われていったから配備されてないんだよなぁ。
「お前らに任せるのは大体察しているだろうが艦隊の防衛だ。1隻沈められる度に減俸だから覚悟しろ!」
『了解!行くぞタルタロス!エロース!』
『『おうさ!!』』
なんとも豪勢な名前だよな。
神統記でカオスから生まれた神が揃ってんだから。
『任務了解。直ちに開始する』
うん、そう言うことはなんとなくわかってた。