第九十四話
「そういえば中国の戦力があまりにも多いと(読者も作者も)思うんだが……ジオンが生産拠点にしていたとはいえ、万を超えるモビルスーツとか無理があるだろ……その辺の理由知ってるか?」
「えーっと、大体でしたら」
さすがアイナ、頼れるやつだ。
マリオンちゃんが居なかったり、こんな身体じゃなくて普通の人間だったら横恋慕してたぜ。
「まず一番取引があったのはジオン公国です。独立戦争終結すると同時に経済の活性化に丁度良かったジオンと日本に怨まれて防衛と脅し用に戦力を欲した中国が噛み合ったようです」
「なるほどねぇ」
「ちなみにブルーニーさんは知らないようですから言っておきますが、中国は自然大国です。ですからジオンに自然素材を売り、それでモビルスーツを購入しました」
俺達がサイド6でやってる貿易と同じか。
ん?そういえばサイド6以外のサイドでは貿易は薄利多売になるので難しいと報告があったけど……まさかこれのせいか?
「中国は特産物が多いのでサイド別に出荷しているようです」
やっぱり中国のせいか。
「それとズゴックDに関しては……言わなくてもわかると思いますが、その多くはジオン地球領、正確にはMIP社が販売したものです」
そりゃ、俺達とMIP社が話し合って決めたことだから知ってるよ。
ブルーパプワは日本に、MIP社は中国に水中戦力を独占するってことで話がついた。
「ただし、中国側はMIP社だけに頼っているわけじゃありません」
「ん?ジオン公国か?」
まぁ意外ではないけど、いやむしろ順当か。
「いえ、ロシアです」
「なるほど」
ロシアかぁ、ちょっと盲点だったわ……それにしてもロシアがズゴックDの設計図を持ってるってどういうこと。
「MIP社はジオン地球領や中国だけでなく、ロシアにも進出しようとしているようです」
「とりあえず中国があの大量なモビルスーツの入手先はわかった。しかしそれだけの予算、よく確保したよな」
「連邦自然保護法を無視した伐採や狩猟を行って補っているみたいで、絶賛禿山&死体の山量産中です」
中国人は自然を敬う心はないのかねぇ。
せっかく水が綺麗なのに。
「もちろんそれだけでは足りません。国債の発行を増やして補っていますし、必要以上に民衆に日本を恐れさせて寄付まで集めています。打てる手はなんでも打ってますね」
「そこまで戦争したいのか……」
「と言うより中国は戦争したくなかったみたいですよ」
ん?それなら大人しく幼女殺しの犯人を引き渡せばよかっただろうに。
「中国は昔から身内を恐れて皆殺しにしてきたせいでしょう」
つまり、日本に媚びを売るようなことをすれば仲間()に排除されるわけか、中国は大変だな。
「証拠はありませんが中国の富豪が何人か死んでますし……」
こわ、めっちゃこわ。
地獄の沙汰も金次第とは言うけど、地獄に行く原因が金ってのも因果なもんだな。
「それでも資金が危なくなってきて考え出された最終結論は……簡易モビルスーツもどきだったようです」
「……なんだその意味不明なものは」
「鹵獲したものを解析した結果わかったんですけど、一部のモビルスーツは二足歩行ができず、ホバー移動……しているように見えるように足裏にキャタピラ、腕は関節はなくライフルを構えた状態で固定されたものが多数見つかっています」
……もしかしてアレか、随分動きが悪いモビルスーツがいるな、とは思ってたけど……なるほど、つまり——
「ハリボテか」
「それで間違いないかと、ちなみに旋回すると転倒するようです」
それってもう戦車の方がマシじゃん。
あの何もしてないのに爆発したのはそのハリボテだったのかもな。
「威圧にはなるようですから」
ああ、確かに続々と出てくるモビルスーツの姿は日本軍のパイロットにトラウマとして根付けそうだ。
それに戦車は市街戦に弱いか。
「製造費は廃品回収に使っているボール2機分ぐらいになるようね」
安いなー……ってかもしかして核融合炉積んでない?ボールは燃料電池で動いているのは周知の事実。
それとそう変わらない値段なんてありえないだろう。
「とは言っても10000機ほどは正規のモビルスーツですけど」
「連邦ですら集めれそうにない数をよく揃えたもんだ」
「今言った数は陸上戦力の数で、水陸両用戦力も含めると5000ほど追加されますね」
……現実離れした数過ぎるだろ。
「ズゴックDもハリボテ化されてまして、ハンド武装省略や陸歩行不可、接近戦用のクローは関節強度不足で使用は1度きりなどなど」
もしかして中国軍はダチョ○倶楽部みたいに、お前いけよ的なことしてるように見えたのって、ただ単に打開策がなかっただけか?!
通りで少数の日本軍水泳部が中国軍水泳部に負けなかったわけだ。ということはクーンが得た実戦データも半分は当てにならないと思ったほうがいいだろうな。
日本軍水泳部は数の関係と機能性の違いでズゴックDが前衛、クーンは後衛を務めていたためズゴックD同士が削りあったと考えられる。
そうなるとクーンvsハリボテズゴックDだった可能性が高くなる。
「ハリボテ込みで30000近い人型兵器がいたということになりますね」
「改めて聞くと酷いな……ティターンズの侵攻を阻んだザク改もハリボテだったりするのかな」
「いえ、どうやらあちらにいたモビルスーツ部隊は富豪達が協力して揃えた私兵のようで、中国軍の全戦力が日本軍に振られたようです」
全戦力って……豪快なのかアホなのか、でも日本軍の戦力から考えると陽動とかする余裕がないからそんなものか。
それにしても私兵ねぇ、中国は規模が違うに。
「私兵とはいいましたけど、内容はジオン地球領から雇い入れた傭兵ですから実力は本物だったみたいです」
「もしかして中国軍が数の割に練度が良かったのは……」
「ジオン地球領が中国に教導隊を送り込んだ成果ですね」
むう、戦闘に参加できると浮かれててその辺の情報を疎かにしていたな。
まぁ俺達も日本で教導隊を派遣してたから……ん?
「その私兵のザク改の中にニュータイプがいた??」
隠れたニュータイプがいるという可能性がないとも言えないけど……なんだか気になるな。
もしやシャアか?ララァか?もしそうならキシリアが探してもわからないというのは納得だけど。
「探りを入れてみましょうか?」
「いや、マリオンちゃんのプレッシャーをそこまで広げたら生物大移動が起こりそうだからやめとこう」
マリオンちゃんのプレッシャーは全生物に共通で、建物内で解き放てばバ○サン要らずである……ご近所の猫や犬まで逃げてしまうが。
ちなみに木や植物も逃げるように成長するのを確認済み。
マリオンちゃんズがその気になれば国ぐらい簡単に崩壊させれることが立証されたわけだ。
「これでまたしばらく戦争はないかな」
「ブルーパプワにもう少し余裕があれば中国に攻勢を仕掛けて領土拡大を提案したんですけど」
「さすがにニューギニア特別地区だけで割りと手一杯だし、ジオン地球領のことだってあるし、チベット進出、コロニー建設もそろそろ本格化する……領土を増やすなんて無理だな」
「そうですよね」
本当にアイナがアグレッシブすぎる。
ジオン地球領を込みにすると地球圏内の国面積順位10位以内に入るだけでも十分だと思うんだけど……コロニーも入れたら別だけどな。
「最近軍需産業に投資し過ぎですから今度は平和産業に投資してください」
「そうだな。クーンのバージョンアップが終わればニューギニア政府に配備するし、アプサラスIVを4機ぐらい作れば、国防自体はいいだろうから……うん、マスドライバーも調子がいいみたいだな」
「はい、欲を言えばもう1レーンあれば完全に需要を満たすんですが、現在のままでも今のところは問題ないと思います」
マスドライバーの護衛に付けているマリオンズからの報告では宇宙引越公社はまだ定期的に破壊工作や嫌がらせを仕掛けてくるらしい。
レーンの上に石を置いたり、支える柱に塩を掛けたり……やってることが地味過ぎるだろう。
こういう奴らは経費削減のため、宇宙で低酸素状態で仕事をさせている……偶に気が狂ってしまうのは玉に瑕だけど。
爆弾を仕掛けたりなどの悪質なものは今まで通りムラサメ研究所か新米兵士の人殺し処女を散らすなどに有効利用している。
「それにしても……仕方ないとはいえ産休が多すぎだろ」
「子沢山応援政策の反動ですね。女性の社会進出を推進しながら子沢山は無理がありますね」
そうなんだよなぁ。
仕事を覚えた頃に妊娠しちゃうんだよ、大体。
幸い若い頃から就職を意識した教育を施してるから戦力になるのに短い期間で良くなってきているの助かる。
後、子沢山応援政策が撤回される前に作っておこうなんて考えている人も多いようだ。撤回される予定なんてしばらくないんだけどね。
「とりあえず日本から医者でも誘致してみるか、施設投資も考えにゃならんけど」
「長寿国日本からお医者さんですか、いいですね」
「そういえばフラウの様子はどうだ?」
「え?」
「え?」
何そのリアクション、なにかあったわけ?
「フラウさんのこと聞いてないんですか?」
「聞いてないな」
「フラウさんは韓国軍と戦うために対馬にいたんですよ」
あれ、俺はムラサメ研究所に送ったはずなんだけど。
「ムラサメ研究所で強化プログラムを施されたんですけど、それを全て打破してしまい研究員全員が投げ出しちゃったそうです」
「……貴腐人はバケモノか?!」
「逆に腐敗の拡大が確認されて危険物処理(臭いものには臭いもの)して封印処理(見ないふり)を施したようです」
なんの解決にもなってねー!
「それで韓流ブームが気に入らない!!と叫んで韓国と戦っていたそうです。一応死神の陽炎に属していることになっているので良い収入にはなりました」
「その代わり腐のパワーがレベルアップしてそうだけどな!」
もういっそ韓国に殺されてれば安心できたのに……出身国だから日本に肩入れしたけどよく考えたら掛け算文化を滅ぼすなら中国か韓国に協力すればよかった。
それが世界のためだった気がする……中国にも掛け算文化が伝播したらと思うと……うん、ちょっと軽くコロニー落とししたくなるな。