第九十五話
中国三大都市である上海を日本軍が占領してから1ヶ月。
日本では厭戦感情が育つ……のだが戦争はなかなか終わる様子はない。
民衆の一部が戦争を止めたがっても、日本全体の意思は勝ち戦でいけいけゴーゴー状態なので終わらせることが難しいようだ。
中国はもっとわかりやすく、日本ごとき小国に負けるなんざ認めん!という感じ戦争を止める気がない。
韓国は早々に敗戦したわけだが、日本が攻め込むなんてことはない。
ぶっちゃけ韓国はいらない子だからね。どちらかというと日本国内に入り込んできてる韓国資本を締め上げる形で経済制裁を加えている。
日本と中国は知らない間に『連邦&ティターンズ&ブルーパプワ』のアースノイド派と『ジオン&アナハイム&ロシア』のスペースノイド派(一部を除く)による代理戦争と化してしまったわけだが、故郷がそうなってしまったのはちょっと複雑だけどガンガンクーンが売れて笑いが止まらない俺が言えた義理ではないが。
もっとも一番喜んでいるのはロシアだな。
連邦から脱退したことで経済が滞りがちになっていたが中国にモビルスーツを輸出することでなんとか持ち直している。
もちろん連邦は苦々しく思っているがこの戦争特需が無くなればすぐ音を上げるだろうという見積もりなんだとか。
ティターンズが占領した四川省は、三国志で言うと蜀、劉備が皇帝となった地、つまり……陸戦がし辛い。
SFSを導入するティターンズはそれほど苦もなく進攻することができるがSFSが堕ちれば孤立してしまうので四川省に引き篭もっている感じ。
逆に中国軍は追い返そうにも攻めること自体が困難で様子見。
まぁそれでも日本軍は助かってるんだけどな、中国軍が分断されてるから。
そんな情勢の中、俺は海底で多数沈んでいる食材を貪り食いながらギニアスと連絡をしている。
「クーンの改修案を見たが……実弾兵器だと継戦能力が問題だな。軽量化で対応できないか?」
『軽量化と言ってもな。弾自体を軽量化なんて不可能、核融合炉の小型化はそれこそ国家予算級の予算と世代交代するに近い時間が必要だろう。となると——』
「新しい装甲材を考えるか、機体そのものの構造を変えるかだな」
原作知識的にはガンダリウムα、β、γなど(γ以外どんな存在か知らないけど)とムーバブルフレームのことだ。
問題は色々あるけどな。
『それはもう改修じゃなくて新規開発だろう。それにそういう基礎技術の研究は私達では難しいぞ』
そう、開発とは研究された素材を活かす、つまり応用技術なのだ。
新しい素材を求めるには研究する必要があるが研究員というのはブルーパプワにはそんなに多くない。
ジオン公国のザクが超硬スチール合金を採用したのはそれが適しているからでもなければ、コストパフォーマンスのためではない、新しい装甲素材を研究する人員が不足していたからだろう。
まぁ軍事利用できる冶金技術は国家機密である場合が多いから情報を入手できなかったんだろうな。
実際、ガンダム登場以降チタン・セラミック複合材でモビルスーツを開発しているのが良い証拠だ。
「ドムIIやヤマトの技術を応用できそうか?」
『応用自体は比較的簡単なのだが問題はテストを行わなければならないから商品化までに時間が掛る』
「それはいただけないな……仕方ない、とりあえず提出されていた改修案で進めてくれ」
『わかった。それでアプサラ——』
「以上だ」
アプサラスはしばらくIVだけ生産してればいいんだよ。
IIIが1機ぐらいあれば便利かな、とは思うが今のところ新しいものは必要がない。
ソフトが優秀過ぎてハードが多少劣っていようが中国みたいな殺戮が行われるだけだからな。
それはハイスペックであるヤマトが相手でも変わらないという段階で準次世代機ではどうにもならないということだ。
あるとすれば……Zぐらいにならないと無理じゃね?単機飛行能力持ちじゃないとモビルスーツは相手にならない……あ、でもビームライフルの威力が上昇すればアプサラスIVのサイコミュ式可動砲の威力では相殺できなくなる……のか?
そうなるといくらマリオンズが優秀でも蜂の巣にされて終わりだよな。
とりあえずビーム出力の向上も検討するか。
なんにしても……アプサラスIIIとIVのミックス機なんて作る気はない。
巨大モビルアーマーなんだから特化型にしておいた方が無難だって言ってるんだがどうもギニアスのアプサラス愛には届かないようで困る。
「それにしてもズゴックIIが花咲ガニとは……美味なり!」
「カニの宝石箱や〜」
「ノーコメントだ」
「ブルーニーさんが冷たい!」
「体温無いからね」
「核融合炉が暖かいですよ?」
「おっと一本取られたな」
なんてほのぼの。
そろそろコミケの季節なんだが……今年も中止するか会議中らしい。
戦争中だからこそお祭りで盛り上げよう派と戦争中なんだから不謹慎だろ派で日夜紛糾しているっぽい。
フラウは狂乱状態らしく、定期的に鎮静剤を投与されているらしい……これが強化人間の副作用なら救いがあるが素であることがなんとも……腐食されると困るからちょっと日本政府にお願いしてみようかな。
腐食は日本国内だけにしてもらいたい。
「最近上海でレジスタンスが活発化しているようで、日本軍が地味に痛手を受けているようです」
「んー、ハロを導入するにしても兵士達の脳波が不安定なせいで誤射、誤認してしまう可能性が高いんだよなぁ」
「兵士さん達は人を殺してしまっているため犯罪者と同じような脳波パターンが出てますからね……でしたら立ち入り禁止区域で都市を囲みハロをバラ撒けばいいんですよ」
「なんという人海戦術、しかし有りだな。金はめっちゃ掛かりそうだけど」
「そこは私達の関与するところじゃありませんよ」
「だな」
日本政府と上海占領軍両方に打診をしてみると……まさかのGOサイン。
どうやらハロの値段と日本人兵士の値段を比較すると100:1というのが主な理由だ。
他にも誤認捕縛0%、巻き込み捕縛3%というのも導入要因の1つだろう。
という訳で……1000m上空のミデアからハロの空中散布します。
「俺達の多目的ランチャーにこういう使い方があるとは思わなかったな」
「ですね。ハロを生産するのが1秒掛からないって凄いと思います」
多目的ランチャーから次々ハロが飛んでいく……ちなみに1000m上空から落ちてもハロは壊れません。
羽?耳?を羽ばたかせて減速、多少速度があっても大丈夫。なにせフラウに蹴られても大丈夫なんだから。
燃料が減っていくが海底食材で増えた量よりは少なく終わる予定だ。
「なんだか種まきしてるみたいですね」
……たわわに実る稲穂……のようなハロ。
うん、嫌だ。
巨峰ハロも却下だ。
「これで少しは平和になればコミケも開催されるかもな」
「あの腐臭漂う魔界にそれほどの価値があるとは思えないんですけど……」
いやー良かった。本当に良かった。
マリオンちゃんが腐らなくて本当に良かった。
「ガス抜きも必要ってことさ」
「そういえば日本の聖地巡礼ツアーが組まれてるらしいですよ。鷲○神社とか」
……まぁそれはいいんでない?
いや、ほら、4コマだし、ギャグアニメだし、マッハドリルだし。
「意味が分かりません」
「巫女服最強!」
「こんな感じですか?」
「グッジョブ!」
くそ、衣装が好き勝手できるの忘れてた。
次は、けい○ん!の緊張しまくりのボーカルのゴスロリ衣装で!
「こんな感じですか」
マリオンちゃんテラカワユス!
……なんか話がグダってきてる気が……気のせいか。
「良し、永久保存——」
「してはダメです!生で見せてあげますけど保存は却下です!誰かに見られたらどうするんですか」
言い回しに少しエロさを感じたのは俺が思春期だからか?生徒会役員だからなのか?!
<上海郊外・レジスタンス>
「上海に荷物届けるだけで金がたんまり貰えるなんて楽な仕事アル」
「でもかなり危険な仕事と聞いたヨ」
「中国で危険じゃない仕事はないアル」
「それもそうアルネ」
楽で安全な仕事は上の奴らが掻っ攫っていくアル。そのうち家族諸共殺すアル。
それにしても誰もいないアル、この辺の農村はいい隠れ場だったはずアル。
「なんだか妙ヨ。誰もいないなんてどういうことカ」
「俺がわかるわけないアル」
トラックの速度を落として慎重に進むネ、日も沈んできたしライトを消さないと目立つヨ。
「ヒャアァ!な、なんか動いたアル!」
「なに!人だったアルカ?!」
「い、いや、なんか目みたいなのが光ってたヨ。じ、地面に近かったから人間じゃないと思うネ」
こんなところに動物カ?
「しかも転がってたネ」
「転がるってなにアル」
意味わからんこと言うなヨ。
「お、おい!前、前!」
「うるさい……アル……ネ……何アルカ、コレハ」
目の前に広がる丸い物体、それは——
「なんでバロがこんなところにいるネ?!」
「しかもとんでもない数アルヨ!」
何にしても逃げるアル!
「アイヤー?!なんでバロがトリモチ撃ってくるネ!」
タイヤがトリモチで動けなく——ちょっと待つネ?!ドアまでされると出れないヨ!
レジスタンス活動は物資の補給がなくなって急速に沈静化した。
良かった良かった……と思ったら今度はデモ活動が頻繁に起こるようになった。
自分から喧嘩売っておいて負けたら文句を言う、プライド無いのかね?
日本軍はモラルが高いのか、根性がないのかわからないが鎮圧行動はせず、今のところは行く手を阻むだけ。
仕方ないので俺達のランチャー製ハロじゃなくてブルーパプワ製ハロを投入することにした。
ランチャー製ハロは戦争用なので殺傷能力が高すぎる。ブルーパプワ製ハロは治安維持用なので安全だ。
もっともランチャー製ハロは殺傷能力云々以前に敵味方が判別できないんだから使えるわけないか。
「これで日本にも利権確保できたらいいなぁ」
「無理だと思いますよ?先進国は治安をロボットに任せるのに抵抗をかなりあるというアンケート結果が出てますから」
そうなんだよなぁ。
後進国にはそこそこ受け入れられてて、アフリカなんかは治安維持用ハロは結構売れている。
まぁ暑いから人間が仕事するのが嫌なだけかもしれないけどな。
そういえば鎮圧用兵器がトリモチなせいで髪の毛が抜けるって苦情が来てたが、それのせいじゃないよな?
宇宙世紀になっても万人に効く毛生え薬はないからな……ありえるかも?
「でも良かったですね。コミケが開かれて」
「だな。最近フラウが核武装の開発を叫んでたからな。一体何に使う気だったのか……」
「日本に核……皮肉過ぎますよ。それ」
現代日本でこんなことが発覚すれば計画段階でも大バッシングだ。
「ブルーパプワで社員から多数の休暇願いが出されましたが……これは……」
「言うな」
「40%もの社員が——」
「言うな!!」