第九十八話
宇宙世紀版オペレーション・メテオ、撤退戦中。
さすがに国の中枢、軍隊がワラワラと……来ない、なんで?
散発的にドップブースターがちょっかいを出してくるがそれだけで、ほとんど素通り状態。
んー……何処かに戦力を結集して一気に来るのかもな、俺達に中途半端な軍勢は意味がないから。
その時は俺の活躍だ!
うん、なぜか妨害をほとんど受けずに海まで到着。
しかも出迎えに日本海軍まで来ている……どゆこと?
混乱している俺に全てを解明する情報が流れてきた。
どうやら今回の強襲は日本政府から現政権の対抗勢力にリークしてあり、それの乗じてクーデターを起こしたとのこと。
なるほど、日本政府が珍しく外交で活躍したと申すか。
現代のクソな外交()からは考えられない強かさだ。TPPなんて巨大地雷を無理やりアメ公に踏まされそうな現代の日本政府とは大違いだ。
郵政民営化よりもTPPの方が露骨な地雷なのになんでそんなに踏まなくちゃいけないのか……というかアメ公、日本に粘着し過ぎだろ。
それはともかく、現在日本のリークのおかげで親日派が有利に権力掌握に走っている。
他にも共産後継派と新生中華派がいるらしいが共産党本部の消滅で混乱していて一歩遅れ、親日派に押されている。
もしこのまま親日派が政権奪取すると、この戦争も終了かな。
「……俺の活躍の場が無さ過ぎるだろ!!」
という叫びに誰も応えることもなく、対馬に到着、吸収を縦断して沖縄へ移動、そして上海に入った。
ゆっくり3日掛けて帰ってきた。
そして……なんというか……虚しい。
「よ、良かったじゃないですか、アプサラスも欠けることもなく帰ってこれましたし」
「そりゃそうなんだが……」
「それに強襲というものはこういうものですよ。反撃の機会を与える強襲、奇襲は失敗も同然です」
ますますごもっとも、だがこの虚しさは埋まらぬ。
ちなみに本来の『強襲』の意味は陣地や要塞を力押しすることらしいから俺達がやったのは奇襲が正しいらしい。でもそんな細かいこと誰も気にしないよな。俺は気にしない。
「くそ、こうなったら家出してやる!」
「宇宙にハネムーンですね!ちなみにハネムーンの由来はミツバチが巣を分けることからです」
へー……ってそんな豆知識いらんから。
俺、この戦争終わったら宇宙で中二病的秘密基地を作ってやるんだ。(死亡フラグ…いや失敗フラグか)
「それにしても戦ってないからイマイチ実感がないが……ヤマトを喰ってから身体がよく動くな」
バーニアが良くなったとかじゃなくて、関節の動きが良くなった気がする。
ステータスには特に追加がないが何か効果があったんだろうな。
ちなみにヤマトの味は醤油ラーメンだった……日本のソウルフードはラーメンって言いたいのかね。
個人的には梅干しとかあまり好きじゃないけど納豆とか豆腐、味噌汁とかの方が納得できるんだけどな。
「そういえばHDDの容量とかメモリーとかも増加してますよ」
うーむ、やはり科学の進歩は速いねぇ。
ミノ粉の影響を受けないようにする手間を考えたらこれほど高スペックにするのは費用がかかりすぎて……って絶対コレのせいで日本が傾きかけてるんだろ。
兵器はハイエンドにするのが基本にしても明らかに過剰スペックだべ。
「これで新しいゲームがダウンロードできます!」
「今度は何をする気だ」
「邪剣伝説とかどうですか?」
聖剣伝説のことか?聖剣伝説のことなのか?!
それは置いておくとして、日本政府からの情報では共産党本部にいた国の上層部全て葬ることに成功したとのことだ。
事前に共産党本部で会議をすると情報があり、だからその日を狙って強襲したわけだが敷地から逃げれば良かったのに核シェルターに逃げ込もうとしたようだが間に合わず幹部は全滅。
中国は大混乱して派閥争いを開始、日本は親日派にこっそり援助を行っていて日本との戦争どころではないんだってさ。
親日派が政権を獲得した暁には上海を日本から買い戻す、という形で賠償金を10年に渡って支払うことを約束しているとのことだが……中国人の約束がどの程度信用できるかはわからないけども。
ただ、共産後継派はロシアを後ろ盾にしようと画策しているようだし、新生中華派は連邦と接触しているようだ。
なんだかまた戦争の様相が変化しつつあるな。
一時期は連邦派の日本vs反連邦派の中国だったのに今度は日本派中国vsロシア派中国vs連邦派中国という三国時代の到来か、歴史は繰り返されるというのは本当かもしれないな。
「中国人同士の争いって怖いですね。青龍刀でしたっけ、まだあんな物が現役なんて」
いやー確かにアレはさすがにどうなんだろうな。
槍とかトンファーとかで殺し合いってモビルスーツでの戦争より血生臭いっての。
もちろん銃火器もあるんだが、一般人はそんなもの持っていない場合がほとんどだからなんだろうけど……なんで家に青竜刀やら槍やらがあるのかは謎だ。
宇宙世紀で何やってんだか。
「地域愛が強すぎる中国人は他地域に厳しすぎると聞いたことがあったけど、これは本当に酷い」
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというが、一族皆殺しとかが本当に起こっているというのはなかなかに衝撃的だ。
その過激さに日本軍もドン引きだ。
そして一番平和なのが上海というのはなんという皮肉かね。
日本政府は親日派にローエンド化したヤマトを用意しているらしく、その名前はフソウ。
まぁわかりやすい名前だよな。ただ、勘違いしないで欲しいのは戦艦扶桑ではなく甲鉄艦扶桑が由来なんだってさ。
どんだけ古い船の名前付けてんだよ、とツッコんだら「中国にはこれぐらいでいいだろう」だってさ。
中国の反日もだけど日本の反中国も結構だよな……日本人からすれば中国の反日教育をやめて、もっとマシな国になればな!という思いがあるんだろうけど。
ヤマトのローエンドはゲルググMとそう変わらないぐらいの性能らしいが、値段はゲルググMより安価ってのが売りらしい。
日本は中国から金を巻き上げる気満々だなぁ……経済そんなにヤバイの?
さて、次に気になるのはジオンの内乱だよな。
最初の衝突はもちろん随分前に終わっているんだが、ジオン地球領にはほとんど情報が入ってきてないらしく細かいことがわからないとか。
面倒なんで直接紫ババァに問いただした。
元々紫ババァには戦うつもりはなく、仕掛けてきたのは眉なしの方なんだとか。
こういうのはどっちも相手のせいにしたがるんで聞き流す、戦闘自体は紫ババァの辛勝らしいが事後処理、つまり駆け引きでは眉なしに敗れて予算が削られ、軍を若干縮小しなくてはならなくなったと嘆いていた。
紫ババァも苦労してるんだな、自業自得だろうけど。
もし紫ババァの言っていることが事実なら眉なしが紫ババァを疎ましく思い始めたということだろう。
原作では眉なしは紫ババァなんてアウトオブ眼中だったから、目障りになるぐらい勢力を拡大した紫ババァは頑張ったんだろうね。
もっとも後ろにいるアナハイムを疎ましく思ったのかもしれんが。
そして荷物をまとめてアクシズに引っ越そうかしら、とは紫ババァ談…………えーっと、ハマーン様の活躍の場を奪う気ですか?
いや、シャアがアクシズに行ってるかわかんない現状ではあの凛々しいハマーン様になるとは限らないけども……なんか釈然としないのは俺だけではないはず。
とは言ってもグラナダが惜しいようでまだしばらくは行かないようだけどな。
つまり内乱は小さい衝突で終わったわけだ。
ハローウィンが終わった頃、本格的に中国が割れて戦い始めたので上海は日本軍だけで守れると判断し、俺達との契約を打ち切った。
実際は俺達の契約金があまりにも莫大なので節約モードに入っただけっぽいけどな。
その代わり追加で対人戦用ハロの注文が来たのでウッハウハだけどな。
ついでに上海沖の散歩権を許可制だが確保、これでまだまだ眠る食材を喰うことができるな。
ニューギニア特別地区に帰還するとまずアムロに会いに行く。
「アムロ、正直に答えてくれ。フラウを日本に幽へ——強制移住させようと思うんだが」
「是非お願いします」
どう思う?——と続けようとしたんだがアムロが被せて返事を寄越した。
うん、やっぱりそうだよな。一番の被害者はお前だもんな。
「よし、早速手配しよう」
「何か手伝えることがあったら言ってください。ブルーパプワに来てからフラウの進化には恐怖しかなくて……」
……うん、アムロも苦労してたんだな。
「そのせいか最近ドムのスカートの中が気になって——」
「それはただの思春期だ」
酸化すんじゃない!ここはガンダムさんの世界ではないんだ。
さて、最重要案件も片付いたし、次は開発部に顔を出しとくか。
「というわけで顔を出してみたが……なんじゃこりゃ!」
「アッガイのデータが埋もれて、それを見てビビッと来たんですよ!」
「メイ……これはお前が作ったんかい?」
「はい!モビルスーツマスコット化計画第1弾ベアッガイです!」
なんでこんなネタを……いや、あってもいいとは思うけどさ。なんで開発者がメイかね?
「これの後続もあるんで期待してください」
いや、どう考えてもベアッガイIIIだよな?
まさかフリーダムアッガイじゃないだろうな、さすがに。
「ちなみに標準ポーズはこんな感じです」
「……」
まさか体育座りまで再現されるとか、もうゴールして……いいよね。
「これ作る予算は……」
「廃品の利用してるのでほとんど掛かってませんよ」
怒るに怒れないってこういうことを言うんだろうね。
軍需産業の格納庫にこんなのがあったら色々と疑われるだろ、正気とかやる気とか。
「ぬいぐるみも用意してますよ!」
「そこまでするか?!」