第九十九話
結局ベアッガイ人形の販売することに決定。
まぁ少しでもブルーパプワのイメージアップになれば御の字、イメージアップに繋がるなら多少の赤字も飲み込むぜ。
ブルーパプワはやはり軍需産業がメインだからな、死神の陽炎……というか俺やマリオンちゃんズが有名過ぎて恐れられてるんだよなぁ。
気持ちはわかるが無意味に怖がられるのも問題だ。
「そういえば以前から進めていた移住者専用都市計画の第1段階が完成したそうですよ」
「おお、やっとか。随分掛かったな」
「オーストラリアからの移住者だけでなく、各地から移住者が多く集まったので当初の計画より大規模になってしまったようです。本来の計画的に言うと3段階目ぐらいですね」
そんなに集まってるのか。
「ニューギニア特別地区では怖がられている私達ですけど連邦やジオンでは割りと人気があるようですよ」
「マジで?」
「はい、どうやらネットで私達のことが話題になっているようで、それによると私達の関わる戦争は結果的に死者が少なく、税や悪法を柔軟に是正する姿勢などが好評価されています」
裏で汚い法とか敷いてるんだけど……民衆が気になる法ってのは所詮金が絡むものが多いってことだな。
まぁ基本的に企業に関係しても民衆には関係するのは少ないからな……一部以外は。
「このまま人口が増え続けるとは思えませんけど、もし現在の半分ほどの人数が増え続けたとすると5年もしない内に食糧問題や住宅地問題が発生する可能性があるらしいです」
「……え?総合食料自給率(カロリー計算)400%超えてたここで食料問題?」
もっとも偏りがありすぎて実際は輸入品に頼ることも多々あるけども……それでも食うに困らないここで食糧問題って……マジか。
住宅問題はわかりやすいな、自然保護の関係で開拓できる面積がないんだから。
「はい、あまりに緩い移住条件な上に税も安く、仕事もあり、治安もよく、何より自由な時間を満喫できると子育て世代からお年寄りまで幅広く人気があるようです」
「まぁそれなりに努力してるからな」
日本から得た報酬で自然を崩さないための養殖技術や耐震技術などを手に入れたり、伝統工芸品の技術を継承してもらったり(これは日本側にめっちゃ喜ばれた)、現金ももちろんたんまりもらったが新しい産業を起こせる技術を手に入れたことによってブルーパプワの多様性がアップした。
産業が増えれば従業員が、仕事が増える。仕事が増えれば金増える!
「このままだと物価が上がることが予想されます。移住条件を厳しくするか、食糧や住宅問題を解決しないとあまり遠くない将来破綻する可能性があります」
そうか、ニューギニア特別地区の風潮ではそこそこの賃金で休み一杯という感じだが、もし物価が上がるとそこそこの賃金じゃ満足できなくなる可能性がある。
そうなると仕事の日数が増やすか賃金を上げることになる……つまり不況の兆しが見えてくるわけか。
これは結構ガチで解決せにゃならんな。
「んー……コロニー建設でどうにかなる問題な気もするが」
「移住してくれれば問題ないでしょうけど、そう簡単に地球を離れて離れてくれますかね?」
確かに、簡単に移民してくれるなら連邦も始めから強制移民なんてさせないよな。
「その辺は移民優遇政策でもしてみるか……って言ってもコロニーができないことには取らぬ狸の皮算用だけどな」
「ですね。それに移民があまりうまくいかなくても農業コロニーとして利用すれば、食糧の確保は問題なくなるでしょうから問題の半分は解決できますよ。民衆に格差が生まれるでしょうけど」
現在のニューギニア特別地区は貧富の格差は極端に差がある。もちろん富豪代表が俺達だ。だが一部の富豪層を除いた平均を出すと格差は殆どない。
そのため、物価が非常に安定している。
逆に言えば極端な贅沢品や激安商品などがあまり目を向けられないというのも事実だけどな……おかげで商売の幅が狭い狭い。
「高層マンション化を進めるしかないか……いや、他の島々の開発も視野にいれるべきか?」
「建築関係の会社がほとんどニューギニア島にあるのでコストが結構かかりますよ。エネルギーも供給不足になりそうですし、流通も大変ですよ」
「建築やエネルギー関係は俺達の利権が広がると考えれば問題ないだろ。幸い日本から得た利益はそれを可能にする金額をもらえてるしな」
「まぁ、そうですけど」
「流通はマスドライバー目的で集まる他企業に協力させよう。俺達の強みは税が増えれば俺達も大きくなることだからな」
そう、俺達はブルーパプワが儲からなくても国が儲かれば問題ないのだ。
国を抑えてるんだから税が増えれば、それだけニューギニア特別地区が富、結果的に俺達に返ってくる。
例えば、高層マンション建設補助制度というものがある。それは政府に申請、審査を受ければ一部建設費用を国が負担してくれたり、固定資産税や譲与税の減税、免税など優遇される制度だ。
もちろん、俺達は申請、審査はオールパスだからウッハウハ、他企業は厳しめで利用は難しい制度となっている。
こんな優遇政策してるから企業主からは嫌われるんだけど、仕事は適度に回しているので今のところ表立った反発はない。
元々それほど大きい企業とかないからなんだけどね。
ただ、制度の規模は国力で決まるので多少他企業にも美味しい思いをさせないとね。
「なるほど、現在の物流は水運が主流ですからそれを一部現地で消費しようというわけですか」
「ああ、消費する人がいて倉庫街を構えれば勝手に流通してくれるだろうさ」
「では早速シーマさんに伝えてみますね」
俺達は思いつくままシーマ様に伝えて、シーマ様から官僚達に伝えて検討させ、問題なく利益が出ると踏んだら実施するという流れが基本だ。
概ね俺達の意見は通るが、国家予算が都合つかない場合は見送られることもある。
「そういや農家が人手不足だって話もあったな」
「はい、ブルーパプワの規模拡大で雇用を増やしているため農家……いえ、農村の人手不足が深刻化しているようです」
「……農機具の最新型にして効率化は……」
「不可能です。既に他企業によって行われているようですがそれで現状なんだそうで」
ふむー、どうしたものか。
移住民は賃金が高い傾向にあるため、ブルーパプワに就職することが多いので農業に従事させるのは難しい。
となるとニューギニア特別地区の原住民を農業へと向かわせるべきなのだが……
「ゆっくりのんびり農業ワークと銘打って補助金を出すか……」
「と言うより、そもそも私達が十八番があるじゃないですか」
「ん?」
「ハロですよ」
「農業用ハロか……コロニーでは既に無人管理システムがあるから不可能じゃないか」
農業コロニーの便利な点は天気の安定、害虫が発生しない、つまり無農薬栽培などが強みではあるが何よりの強みはほぼ全てが全自動、機械化されていることにある。
人間が携わるのは機械のメンテと農作物の良し悪しの見極め作業程度だ。
地上ではエネルギー供給の面や機械の通る道の整備、天候による作物の安定した成長が不可などの要因で現代より多少進化した程度の機械しか導入されていない。
その点ハロだと道の整備などは不要なので多少はハードルが下がる。
問題はOSだが——
「またアムロとメイが喜びの涙を流しそうだな」
涙が流せる間は大丈夫だろう。
それに平和利用だからアムロも嬉しいだろう。対人戦ハロの開発時はアムロが嫌がってたからなぁ。
ちなみにアムロとメイではプログラマーとしてはメイが上、設計やアイディアではアムロが上という印象だ。
付き合ってたりするのかと思ってたら、そんなことはなかったようだ。
なんというか……ライバル関係で今は恋愛感情はないようだ。アムロは金髪さんに思春期しているようだし……さすがにフラウと付き合う展開はなかったらしい。
この情報が何処情報かというとハロ情報だな。
脳波観測ができるハロに死角はないのだ。
1ヶ月が経ち、中国の激戦は変わらず、日本は中国へフソウを売り出した。
日本の兵器の特徴で素人も使いやすいというのもあり、かなり好評価を受けているようだ。
ついこの前まで敵だったのにのん気なものである。
そのおかげもあって日本は戦争特需により好景気に突入、フソウをガンガン作ってガンガン売って儲けている。
それはいいんだけどさ……クーンを中国に売ろうとしたら日本が抗議してきた。
中国水泳部が強化されること日本にとって死活問題なのはわかるけど俺達も儲けさせろよ。
そもそも半月前から日本がクーンの買いを渋り始めたのが事の発端なんだからさぁ……まぁ中国に売らなくてもまだニューギニア特別地区の水泳部が貧弱だからそちらに売ってもいいんだけど、商機的には中国でしょ。
「そこんとこどう思うよ。総理」
『しかしだね。まだ中国と和解も休戦もしていない以上水軍強化をされると困ります』
「言いたいことはわかる……が、こちらも商売だからなぁ。日本が買ってくれるというなら問題ありませんけど?」
『誠に遺憾ながらそんな予算は今の日本には……』
この堂々巡りを始めてもう10分、そろそろ打開策、妥協点を言えよ。
こちらが上の立場ってことわかってないのか?そういう妥協は弱い方から切り出せよ。
「それで総理のご要望はなんなのかな?こちらとしては中国側に参戦して統一、日本に侵攻って方針でも問題ないんだけど」
前世の故郷だから酷い扱いはしたくないんだけどさ、日本の政治家が苛つくのは現代と同じだよな。
ぶっちゃけ故郷サービスで俺達だけが得をしようとは思っていないんだけど損はしたくないんだよね。
『日本企業をニューギニア特別地区に誘致させていただきますので——』
「却下だ」
日本の企業なんて入れたらニューギニア特別地区の企業が衰退するだろうが。
「日本の造船技術と医者2000人の派遣、日本国内で治安維持ハロの導入、BL規制の強化(本命)で手を打とう」
『……しばし、検討させていただきたい』
「日本は決めるのに時間が掛るから期限を決めさせてもらう。今年中に決めろ」
ちなみに現在0081年11月30日なんだけどね。
『……わかりました』
年末に日本から全てを受け入れるという回答が来た。
よっしゃ、これで露骨なBLは規制してやんよ。