第三十一話
――訂正――
二十九話で霧隠れの里との国境の部隊が行方不明になったという話がありましたが
雨隠れの里の間違いでした。
戦争というのは突然始まるものなのだと学んだ。
第3次忍界大戦……とまでは言わないが少なくとも戦の狼煙はあがった。
きっかけは年明け早々に行方不明となった部隊が帰ってきた……具体的には発見したことだ。
拉致され情報を抜かれた程度なら即戦争ということにはならない。ならば何があったか。
行方不明となった部隊を発見され、保護される……だが、そして拠点に帰り着いた時に悲劇は起こった。
行方不明だった部隊は複数であり、発見されたのも複数箇所で、拠点も複数の場所に分かれていた。
そして――その行方不明者だった者達は――爆発した。
爆発の規模も結構なものだったらしく、死亡した者も20人を超え、負傷者はかなり出ているらしい。
不幸だったのは発見した者達は中忍以下、しかも中忍は戦時を経験しておらず、更には感知系の忍が遠方の探索に出ていたため不在だったということだろう。おそらく敵もそれを狙ったのだろう。
経験の浅い忍を発見の確率が低い場所に配置していたらしいので敵にそれを読まれたのだろう。
人間爆弾による宣戦布告とはやってくれる。
おかげで血気盛んな忍だけでなく、温厚な忍や一般市民まで戦雲に満ちている。
敵はよほど戦争をお望みのようだ。
そして皮肉なことにこの人間爆弾によって犯人が割れた。
どうやら第2次忍界大戦時にこの手の技が得意な忍がいたそうで、その者のチャクラパターンと合致したそうだ。
そしてその忍は……砂隠れの里の忍だそうだ。
「……騙すつもりなら新人を使えばいいのに」
「そうだな」
もっともなことを言う夕顔に肯定する。
夕顔の言う通りにやられた場合かなり特定するのはかなり難しかっただろう。それこそ忍らしく諜報合戦が繰り広げられていただろう。
「それにしても砂隠れか……」
砂隠れの里と戦うとなると……いや、砂隠れの里に攻勢を掛けるとなるとかなり厳しい戦いを強いられることが予想される。
まず第1に地形、第2に気温、第3に経済にある。
地形……元々守勢が有利なのはいつの時代の戦においても基本だ。
気温……砂隠れの里はその名の通り砂、つまり砂漠に近い環境であり、それによって昼夜の気温差が激しく、他里の忍にとっては重い重い足かせとなる。
そして経済……忍の世界は個人の力が物を言うため現代のように金で殴り合うようなものではないのでそういう意味では経済への依存度は低い。ならば何が問題かというと戦争とは始めるのは容易いが終わらせるのはかなり難しい。
そのハードルを下げるのが経済……つまり、金だ。
それ相応の血と賠償金、これが報復戦争の収め方だと勝手に思っている。問題は砂隠れの里の経済状況だ。
他国、他里の情報は軍が忍であるため防諜はしっかりしている……というよりしっかりしていなければ里として成立できない……のだがそこは忍の里最大勢力の木ノ葉隠れの里ということもあって学校や書物にもある程度の情報が載っている。
情報操作もされているだろうがそれでも貧しい国、里であることは間違いない。
そこに隠された力が存在したとしても木ノ葉隠れの里が求める見合った賠償金を支払う能力などないだろうし資産、資源も少なそうだ。
つまり、この戦争――
「……最初から負けてる?」
「その通りだ」
そう、木ノ葉隠れの里はどんなに圧倒したとしても被害が出て、その被害を補填する何かを得られる宛がない以上、負けが確定しているのだ。
更に言えば砂隠れの里は雨隠れの里の向こう側であり、遠征する必要があるというのも頭が痛い。
「泥沼化するだろうな」
だからといって報復をしないわけにはいかない。力に関わる組織というのは嘗められるとおしまいとは言わないが、不利益が生じる。特に牽引して仮初でも平穏を保つ木ノ葉隠れの里が嘗められるなどまた戦国時代に舞い戻ってしまいかねない。
戦争を……殺し合いをするからには勝利したいが何をもって勝利とするのか。
「私程度が考えたところでどうにかなるわけではないがな」
前線からの情報が降りてきた。
砂隠れの里から過激な宣戦布告を行っただけあって万全の態勢で待ち受けたらしい。
「宣戦布告した側が待ち受ける……嫌な予感しかしない」
そして戦況はこちらの優勢なんだとか。
「明らかにおかしいぞ」
矛盾だらけだ。
宣戦布告したのに待ち受ける、しかも強固な備えを用意し、しかもそれでこちらが優勢……考えられるのは――
「砂隠れの里自体が囮で本命は別に存在する?」
自分の推測通りなら……汗が止まらない。
なら本命はどこだ。
砂隠れの里の反対側、つまり東側が1番効果的だけどさすがに連携を取るとなると色々と問題が出てくる。
物理的距離があれば協力関係という意識が薄くなり、参戦の約束すら守られない可能性を考慮しなくてはいけなくなる。
となれば距離が近く、力を持つ組織……そこまでくれば自ずと答えが出てくる。
「土の国……岩隠れの里か」
ここに至ってこの推理を誰か……具体的にはそれなりに発言力があり、私の言葉に耳を傾けてくれる人に話をしておく必要があるのではないかと思う。
誰かが気づいているならそれでいいが、もし気づいていない場合――
「大変……なんて言葉で収まらないような事になりかねないぞ」