第三十七話
小さい私を30体ほど……ネズミに変化していた小さい私が鳥に襲われるというトラブルがありながらも生み出して、草隠れの里に放った。
ただ、問題が発生した。
「暇だ」
任務だと気合を入れていたのだが、このやり方の情報収集だと私達自身は暇になってしまったのだ。
「草隠れの里の雰囲気もあまり戦時という感じがしませんね。一応結界は張っているようですけど最低限のもののようですし」
そもそも草隠れの里は木ノ葉隠れはもちろん岩隠れにも大きく劣り、今や主戦場となってしまった雨隠れよりも国力に劣る。
ならなぜ草隠れはこの群雄割拠の時代に存続できているのかというと外交の賜物という評価らしいが……私見では外交のみではないように見える。
実は草隠れの里は医学、特に薬学に秀でている。つまり、医学の提供で中立を保っているのではないか、と私は考えている。
ただ、隠す必要があるような情報ではないのに秘密にする意味がわからないので間違っているかもしれない……が、麻薬みたいなものはさすがにないと思うが禁忌に触れるような薬などあったりしそうで怖いな。
「ヒカゲ、異常はないか」
「ないわ。それにしても野宿って楽しいものね」
私達は街に入らず野宿で過ごしている。
これはいらぬリスクを負わないための選択だが、正直に言えば女性が2人いるので初任務で野宿は避けるべきかとも考えたのだがその当人達からそれを否定された。
「キャンプ、キャンプ」
無表情だが、誰から見てもわかるほどウキウキな夕顔。
子供らしい一面が見れてほっこりする。
「たまには人混みのない場所で寝泊まりするのもいいと思います。飽きたり限界が来たら街に向かえばいいかと」
そしてヒカゲはおそらくだが、人間不信、人間嫌いに陥っているのだろう。人が多いといつもはお嬢様然としている彼女だが、この時の表情は闇を感じる笑みを浮かべていた。猫かぶりというわけではないのだろうがやはり思うところがあるようだ。
少しはケアができるといいのだが。
しかし、本人が気にするといけないので言わないが片目であるため死角があるとはいえ白眼の警戒は反則と言ってもいいレベルだ。
障害物が多い場所や奇襲方法である地中や水中まで見ることができる上にその視認距離は500mを超える。
死角となっている部分は私の影分身を配置して補う必要があるがそれでも十分以上の活躍をしている。
「ではお先にお風呂行かせてもらいますね……覗かないでくださいよ?」
「これでも婚約者がいる身なのでそんなことをするつもりはない。ついでに夕顔も一緒に行っておいで」
「わかった……覗いていい」
「……」
またいらないことを覚えて……その元凶であるヒカゲを睨むと、慌てて夕顔を引き連れて風呂場に向かった。
ちなみに露天風呂は私が開発した忍術で作ったものだ。
暗部に所属が決まった時にこういう野宿も想定して便利そうで簡単な忍術をいくつか開発した。
他にも簡易濾過(水を操って異物を沈殿させる)と洗濯機、ドライヤーと乾燥機の代用など生活忍術と言えるような忍術も実現。
おかげでここのところ私は夕顔とヒカゲの2人の髪や洗濯を乾かす役目ばかりをしている気がする。
こうやって開発する分には火遁は応用力がないなと改めて思った。火はどれだけ弄っても火なのだから当然といえば当然だが……血継限界あたりがあればもっと違ったことができるのだろうがそれは考えても仕方ないだろう。
「さて、寝床を作っておくか」
快眠は任務遂行能力、戦闘能力に直結する。ならば寝床を整える忍術の開発も当然している……のだが、問題は相手が岩隠れの里であることだ。
本来比較的安全とされるのは岩や地中などなのだが、それは相手のテリトリーで過ごすようなもの、無謀以外の何物でもない。
水中というのも考えたがそちらは常時チャクラを使用する必要があるため不向き、空の上……論外。そして私的にはもっとも有力な素材は木なのだが……木遁は特別難易度が高く、今の所私が使える目処は立っていない。というか一部では木遁は血継限界だとあったがどのあたりが血継限界なのだろう。
ああ、私の血継限界(?)の影に関してはアニメか漫画だったかにあった影に物を収めることが未だに実現できていないので人間なんてもってのほかだ。
というわけで忍術では寝床を構えるのが難しいので自ら用意する必要があるのだ。
「ん、これはいい感じの木だな」
先程も言ったが木遁は血継限界である。そのため木そのものを使った奇襲をされる可能性はかなり低いので基本的に木の上に寝床を作ることにしている。
……もしかして忍者が無意味に枝から枝へ飛び移って移動していたのは土遁による奇襲を防ぐためなのか?