第百二話
サクッと捕虜引き渡しは終了した。
それにより水と空気、推進剤の備蓄が増え、戦闘で消費した物資と差し引いても黒字となった。
あちらの司令官は太っ腹だったおかげだな。計算してみるとサラミス級3隻とアレキサンドリア級(の予想)の余剰分がきっちり揃えられていた。おまけで時限爆弾なんて付録まであったが1分で分解したので特に気にしない。
水や空気に毒や推進剤に不純物が仕込まれていないか検査をしてみたが、さすがにそこまでは仕込んでなかった。毒は処理が面倒だったので無くてよかった。
ただ、ガンダムタイプのパイロットがコクピットから出す際に目覚めてプルシリーズの腹パンで重傷にしてしまったのはまいったな。
捕虜虐待をするつもりはなかったのだが……プルシリーズにはもう少し手加減を覚えさせ……たら今度はこちらが痛い目を見そうだ。
うーむ、さじ加減が難しい。そもそも殺し合いで手加減するのは圧倒的格上でないと確実にできるというものではない。
まぁ、重傷と言っても肺が破裂した程度だったのでプルシリーズの治療用に保存していた肺を移植しておいたので肺活量が4倍程度になっているかもしれないが細事だな。
そんなわけで問題も特に起こらず、ミソロギアへと帰還した。
では、今回の戦果を解析しよう。
サッと調べただけだがバーザムというのはなかなかいい機体だ。
目立ったの特徴はないが、外付けオプションによる拡張性、汎用性に優れている。その上、赤いザクもどきことマラサイと比べると性能こそそれほど差はないがコストパフォーマンスに優れている。
正直、MSという兵器は現行の技術ではオールドタイプのパイロット用……つまり汎用兵器としては限界が近づいているように思える。
これ以上のMSを開発を行ったところで大半のオールドタイプでは操りきれない機動力、運動性となってしまう。
そうなればMSそのものの高性能化ではなく、新たな技術の開発になるだろう。
例えばIフィールド、艦やMAの一部に導入されたミノフスキー・クラフト、新たな耐G機構なりスーツなど……いや、それでもオールドタイプどころかニュータイプでも反射神経や動体視力には限界がある。
だからこそ人間という生物自体を強化せねばならない。だからこそのクローン技術だ。
「……そうか、プルシリーズが触手を使えるようになったのだから触手に操作させることも可能になったか」
今まで人間は腕が2本しかなかった。しかし触手によって実質的に4本以上になった。
私が起こす謎のアッティスを意思だけで操縦する方法の解明ができればいいのだが、今のところプルシリーズが意思だけで動かせたことは1度としてない。
ガンダムタイプ……正式名はガンダムTR-1ヘイズル・アウスラ、ギガンティック・アーム・ユニットというらしいが、こちらは予想通りジオングの技術を応用したもののようでその痕跡が見て取れる……しかし、どうやらジオングのデータは中途半端にしか手に入れることができなかったようで、それを証拠に幾つかジオングに劣る部分がある。
「ハマーン専用機には触手操作前提のものとすればもっと規格外のものにできるな」
ノイエ・ジールやアレン・ジールのように大型化したMS……まぁあれはMAだが……は射撃管制の半分ほどをシステムに頼っている。
あれらが大型化しているのは動力や出力、Iフィールドなどによる大型化もあるが、その戦闘能力を活かすためのミノフスキー粒子対策がされた高性能なコンピュータも大型化する要因の1つでもある。
先程も言ったが人間には2本の腕しかないので操作するにも限度があったが触手はそれを解決する糸口になるかもしれない。
……なぜかハマーンが烈火の如く怒っているイメージが脳裏に過ぎったが、これも細事だな。
「問題は時間か」
アクシズがもうすぐやってくる。
そしてエゥーゴとの同盟が結ばれようと決裂しようとどちらにしても忙しくなることは間違いない。
そうなれば私も自由な時間は少なくなるだろう。
それに新兵が多いアクシズが本当の戦場に立った時、どうなるかわからない。そのため、ハマーンが前線で戦うということも可能性としてはある。
何よりタカ派、この場合武断派というべきか、武断派というのは武功こそ最高の誉れだと勘違いするものがいる。であるならばハマーンが前線で戦って武功を上げることは求心力を得るのに必要なことでもある。
野蛮人の人気取りも大変だな。一体いつの時代の人間だと言いたいところだが、人間は1000年、2000年経ってもそう簡単には変わらないということだな。
「……ミソロギアの改修は後回しにするか」
ハマーン専用機の開発、これが急務だ。