第百四話
連日の徹夜が祟ってか、偶に意識が飛ぶ。
「——士」
前に意識を取り戻した時はTR-1がキュベレイ化していた。
幸いユニットの方には手出ししてなかったが……ガンダムタイプのキュベレイとはこれ如何に。
「アレ———」
その前は触手を魔改造していた。
日頃あまり細かいことは気にしない質なのだが、今回のは色々とやってしまった感がある。
プル達は嬉しそうだった(アレン主観)からいいか。
「————博士っ!」
その前はミソロギアになぜか無駄に自然感溢れる人工さが殆ど無い滝ができていたな。
プル達は喜んでいたから無駄にはならなかったが場所と労力の無駄になった。
ミソロギアはまだ全領域を使うには至っていないがプル達の働きによって第1段階として5%(大体19平方km)が居住可能領域となっている。
コロニー内を壁で仕切ることで本格的な生活と簡易的な生産設備が整った。
まだまだ満足できないがな。
「——レン博——」
それにしても先程からうるさいな……はて?私は一体何をしている?
「アレン博士!起きろ!!」
「私は寝ていない。ただ考え事をしていただけだ」
「ほう、私のこの状態を見てもそう言えるのだな」
「……斬新な格好をしているな」
シャアの右上半身が白い液体で汚れ、残った手足と腰を触手に縛られている……新たなプレイか?
「貴様が寝ぼけて触手で襲ったんだろうが!」
「記憶にございません」
「それで誤魔化せると思っているのか」
「秘書が勝手にやったことだ」
とりあえず政治家の常套手段で誤魔化してみる……が、明らかに誤魔化せていないな。
ちなみに白い液体の正体は触手を魔改造して付け加えられた精え……ではなく、トリモチの1種だ。
寝ぼけて作った割には良い出来で、触手の先端に実弾は重い上に打撃を与えたりするのに使うと暴発する恐れがあることから断念していたのだが、トリモチならば重さは多少あるが火薬を使わずにそれ相応の制圧力があるので問題はない。
だからプル達は喜んだのだろう。(繰り返すがアレンの主観、寝不足によるニュータイプ能力の誤作動)
それにしても、さすがに当たればどうということはないと日頃から公言しているシャアでも生身ではそうはいかないようだな。
「酷い目にあった」
「私も白く汚れた男の姿など見たくはなかった」
「その言い方はやめろ」
とりあえず片付けが面倒だった……触手に中和剤も内蔵させるか?しかしそうなると重量が問題になる。難しいところだ。
「ところでこの艦のクルーは人見知りが多いな。ほとんど会うことはないし、偶然会っても常にヘルメットで顔を隠している。それに艦を動かすにはクルーが少ない気がする」
「クルーに関しては私個人の人脈で雇っている関係で身元が割られると面倒だからだ。アクシズでの私の立場を考えてもらえばわかるだろう?」
事前に用意していた言い訳を並べておく。
もちろん実際はクローンであることを知られないようにするためだ。
「クルーが少ないのはこの艦は実質私1人で運用できるからだな」
「なんだと?!……まさかこの艦はサイコミュで操縦しているのか?!」
さすがシャアだ。察しが良いな。
「さすがアレン博士だ。容易に私の想像を上回る」
「ふん、バトルジャンキーの想像を上回っても嬉しくはないが、コーヒーぐらいは入れてやろう」
ハマーンとの合流ポイントに向かっている道中、面倒なものを捕捉した。
「あれはドゴスギアか」
「ふむ、この思念波……あのニュータイプか」
「アレン博士、わかるのか」
「シャアも月であっているはずだ」
「あの時の艦か……ん?あの時、アレン博士は居なかったはずだが?」
「それでどうする。相手は……おや、戦う気はあまりないようだな。どうやら様子を見に来たらしいぞ」
「……もしそうならば無用な争いは現状避けるべきだろう。。アレン博士、アーガマに連絡を」
「繋いだ」
通信越しにアーガマの艦長、ブライト・ノア、シャア……クワトロ・バジーナ、そして妙に態度がでかいルナリアンの使者、ウォン・リーで話し合った結果、相手がこちらに仕掛けてこない限り、こちらも様子を見ることになった。
念のため、第一戦闘配備にはしておくことにした。
「私も——」
「認めん、クワトロ・バジーナはここに居てもらおう。その代わりこちらの戦力を貸し出す」
人質としてここにいる以上戦闘に出させるのは論外だ。
まぁこちらとしても無用に戦力を貸し出したくはないのだがな。