第百十話
ソロモン攻略作戦。
アクシズとエゥーゴが共同で行う初めての作戦が進行中だ。
急遽組まれた同盟であることも考慮してエゥーゴの人員はほとんどジオン残党で構成されている。
そのかいあって一部の相性が悪い者達以外は不和は起きておらず、順調のようだ。
アクシズの戦力は旗艦でハマーンの乗るグワザン、ザンジバル級1隻、チベ級1隻、ムサイ級5隻、MSは総数82機も投入されている。
エゥーゴはアイリッシュ級2隻、サラミス級2隻、MSの総数26機。
両軍合わせて艦艇12隻、MS108機ということになるわけだが……比率がアクシズの方が大きいが代価としてサイド3を公式的に領地と認めることを考えれば些細なものだろう。
ちなみに私達はアッティスで同道している。キュベレイIIは8機艦載、プルシリーズを最低限の8人が戦力だ。
ミソロギアには護衛として最近ロールアウトしたキュベレイII3機を加えて16機、鹵獲してプルシリーズに合わせた改修を行ったバーザム5機とマラサイ3機、TR-1、ドム、ザク、総数27機とプルシリーズ27人と、後1日後にプルシリーズが新たに3人ロールアウトされる者達を護衛として残した。
なぜ護衛部隊の方が数が多いかというと……事は単純にして面倒なことで、ミソロギアを狙う敵がいるのだから当然といえる。
ただし、これだけなら事は単純明快なのだが……敵というのがアクシズという味方であるはずの者達だから面倒なのだ。
なぜアクシズがミソロギアを狙うのか、それはわかりやすく言うとすぐにでも可住地を欲しているからであり、私達の研究データや戦力を徴発するためである。
特に切実なのが可住地だ。
ソロモン攻略が上手く行けばサイド3を領地とできる。しかし、それも確実ではない。
以前にも言ったがミソロギアは完全修復すれば可住人数2000万人、アクシズの人口が賄える。そんなものが目の前にあって、しかもそれが一個人の所有物ともなれば手を出さないという保証はない。
例えハマーンからの命令があったとしても、だ。
ハァ、これが連邦なら上意下達である程度安心できるのだがなぁ。ジオン公国だったらなら所属するザビ家の言葉なら連邦より信用できる。
しかし、辺境出身者と敗戦貧困民の集まりであるアクシズは信用できない。
アクシズにガトーやカリウスが残ってくれたならある程度安心できただろうが、残念ながらそちらはソロモン攻略作戦に参加している。
発言力が小さいが情報源と使えそうなイリアもハマーンと共に行動しているためあてには出来ない。
これだから困窮者は困る。
一応スミレにミソロギアの指揮を任せたのでプルシリーズの苦手な交渉事に関してはどうにか対応できるだろう。
更にプル、プルツー、プル3の3人もミソロギアに護衛として置いてきたので戦闘では負けるとは思えないが、心配ではある。
正直、個人で力を持ち過ぎたという自覚はある。
それを危険視するアクシズもわからなくはない。
だからといって徴発……いや、もし行動を起こしたとしたらハマーンへの言い訳として偉い方のいつも通りの手段(罪をでっち上げて始末する)を見過ごすつもりはない。
まぁ、これはあくまで私が思い描いた最悪のシナリオを警戒しての対策であって、確定したものではない。
「何もなかったら私が臆病者であったというだけで済むからいいのだがな」
ソロモン防衛部隊がソロモン宙域に展開したのを確認した頃、ミソロギアから通信が入った。
『ミソロギアが攻撃を受けました』
「……ティターンズか」
『……いえ、一応アクシズに合流しようとしていた同志、という話です』
ジオンの残党……という体のアクシズの悪意だろうな。
「事情の把握ができたということは捕虜がとれたか」
『はい』
「私が帰るまで何としても活かしておけよ」
『わかりました。それで戦闘データとこちらの損失ですが——』
残党を名乗る者達はムサイ級3隻、パプワ級3、コロンブス級1、MS40機という明らかに残党というには規模が可笑しい戦力だった。
ただし、さすがに最新機を使うと足がつくとわかっているのだろう。皮肉なことに私が設計したゲルググと同等の機動力まで引き上げたザクF型改が主力だったという。
ミソロギアがアクシズの所属であることを通達しても接近を止めず、通信にも応えず、防衛ラインまで近づき、戦闘となった。
幸いだったのは目的がミソロギアであるため、直接ミソロギアを狙うということを行わなかったことだろう。
終始、MS同士の戦いとなり、それに勝利し、艦隊には逃げられたもののMSの撃墜数は30機にもなったそうだ。
こちらの被害はバーザムが中破、キュベレイII4機が小破、2機が中破、1機が大破という私達が経験した戦いの中で1番の被害となった。
幸いなのがプルシリーズに重傷者こそいるが戦死者がおらず、重傷者も戦線に復帰できる程度のものであるということだ。
「キルレシオ的には奇跡と言える数字と言えるが性能差を考えれば厳しいな」