第百二十話
アレンは2日でマシュマー達の専用機を仕上げた。
キャラ・スーンはファンネルを扱うことができるようなのでファンネルと高火力を重視した機体、ゲーマルクを、マシュマー・セロにはサイコミュコントローラーやサイコミュを搭載し、新しい技術でスペックを向上させたザクIII改を与えた。
この2機はハマーン専用機の土台となる機体となる。
それを伝えるとマシュマー達は俄然やる気を漲らせて訓練に力を入れた。
キャラのコクピットに座った時の変貌ぶりに若干白黒したアレンだったが、同時に本人がコクピットを嫌っている理由も納得できた。
コクピットに座っているキャラは好戦的で野蛮な言葉遣いはアレンが第1印象で抱いたイメージと合う。むしろ日頃のキャラこそ首を傾げているが……しかし、それは自分が弱いと思っているからこそ強く見せようとする防衛行為であり、典型的なコンプレックス型のニュータイプと言えたので理解できた。
マシュマーは何やらコンプレックスはあるようだが、どちらかというと感覚派であり、特に問題なく訓練を熟していく。
ただし、新技術で機動性や運動性を底上げしているとは言っても基礎的な部分のみしか変更点がないザクIII改はともかく、ゲーマルクは完全に新型機であり、キャラの専用機ではあるがプルシリーズにもテスト運用させていた。
今までキュベレイIIを操縦していたプルシリーズからは重MSであるゲーマルクの鈍さに不満の声が上がっている。
逆にキュベレイIIにはない数があって扱いづらいという欠点もあるが高火力は評判であり、アレンは次回の主力兵器更新、もしくは新たな支援機の開発を決めた。
その頃、アクシズはサイド3の統治で大忙しであった。
サイド3の多くの人がアクシズの統治を歓迎したのは確かだが、政治家の半数は微妙な反応で受け入れた。
政治家達は劣勢とはいえ、未だに力を保つ反スペースノイド、もしくはアースノイド至上主義であるティターンズの打倒がなっていない現状で独立することは危険だと思っていたからだ。
ティターンズの過激な粛清はダカール演説で与えられた以上の情報を民衆は入手できなかったが、政治家達にはティターンズから脅しとしてある程度の情報を事前に与えられていたことが効いていたのだ。
そのため、それなりの数の中立派、もしくはティターンズ派というものがおり、統治が上手く進まないのいる。
政治体制、アクシズ民の受け入れによる治安の悪化や自給率の減少、旧ジオン残党を受け入れて無理して拡張した軍をどうするのかなど多くの問題を抱え、それを解決しようとするのだが中立派やティターンズ派の政治家達が反対するので話がまとまらないか根回しで相当な時間がかかっているのが現状である。
それに対してアクシズのタカ派達は武力制圧により軍事政権の設立を目指すなどの意見も出ているがハマーンは保留としている。
武力制圧はあまりに風聞によろしくないというのが理由だ。だからといって戦乱の今、悠長にしている余裕もないので賄賂を贈ったり、脅したり、他のサイドとの外交に派遣(左遷)したり、アクシズ内に駐在(監禁)させたり、暗殺したりと切り崩し工作は着々と進められている。
それらのおかげで少しずつ形にはなって来ているが、新しい国家を名乗るにはまだまだだとハマーンは日夜働き詰めである。
ハードスケジュールであっても体調を崩さないのはアレンによる肉体改造のおかげだったりするのは余談だろう。そのおかげで無理が無理でなくなり、ハマーンの側近達もそれに付き合うことになってしまい倒れるものが続出したのは更に余談だろう。
そんな中、エゥーゴからある情報がハマーンの下に舞い込んできた。
「コロニーレーザーだと……ティターンズめ、つくづくジオンの真似が好きだと見える」
実際、サイド2の18バンチコロニーを破壊されたというのだから間違いないのだろうとわかるが、また中立派やティターンズ派が活発になるとハマーンは頭が重くなった。
「幸いなのは月があるおかげで射線に入ることはしばらくないということか……しかし、何らかの手を打たねばなるまい」
グリプス2がコロニーレーザーであるならば脇を固めるゼダンの門とルナツーを突破する必要がある。しかし正面突破を図ればそれ相応の被害を覚悟しなくてはならない、とまだ統治が安定していない状態では厳しいとハマーンは思い悩む。
いっそゼダンの門にアクシズをぶつけてみるか?という突拍子もない作戦が思い浮かんだが、アクシズを支持基盤としている自分達ではそれは厳しいかもしれない……などと考えている間にふと、あることを可能性が思い浮かんだが、さすがにこれはどうかと思う。
「さすがに工作部隊としてアレン達を使うのは無理があるだろう……」