第百三十二話
グリプス2制圧、ティターンズ側からすると陥落は世界を激震させた。
今まで基地の陥落など、失態が相次いでいたティターンズだが、ジャミトフ・ハイマンの政治力により発言力はかろうじて維持していた。
しかし、今回は基地どころか戦略級兵器を奪われたのだからティターンズのダメージは甚大だ。
連邦の政治家達は本格的なティターンズの切り落としを検討を始め、連邦軍はエゥーゴに付くか中立を保つかが大半を占めつつある。
だからといってエゥーゴに余力があるかというとそうでもない。
ゼダンの門ことア・バオア・クー戦で受けたダメージはTR-5の奮戦もあって参加していたMSの35%が撃破され、スポットは当たらなかったがルナツーもマウアー・ファラオがガンダムmk-IVが奮戦して損害を被っていた。
奇しくもガンダムmk-II、III、IVが場所も勢力も違うが戦場に出揃うという形になった。
両軍のMSの損害だけを比べた場合、エゥーゴの方が負けている……惨敗していると言っていいだろう。もちろんグリプス2を制圧出来たことで帳消しとなるわけだが……問題が起こった。
グリプス2の制圧には成功したのはいいが、それを占有するのがエゥーゴかアクシズかで話が割れてしまったのだ。
当初の予定ではアクシズの拠点であるサイド3はグリプス2の射程に入らないので重要性は低いとエゥーゴが引き取る手はずであったのだが、エゥーゴは先の戦いで戦力を消耗し、援軍を出すのに時間がかかり、アーガマもグリプス2に張り付かせるのは難しくなってしまったのだ。
そうなるとアクシズが占有することになるわけだが、それを維持するにはあまりメリットがない上にエゥーゴが撤退するとなれば戦力的に維持するのも難しい。しかもグリプス2はグリーン・ノア、ゼダンの門、ルナツーに囲まれているのでそれぞれの軍が進行された場合、コロニーレーザーで1つは潰せたとしても2つの艦隊はここまで到着してしまう。
「面倒だからコロニーレーザーでグリーン・ノアを消し飛ばそう」
ティターンズが仇となったアレンに容赦はなく、過激な発言であったが、ブライトやガトーからグリーン・ノアは軍事コロニーではあるが、一般人も利用しているらしく、うまく利用されてせっかく優位な世論が傾く可能性があると反対されて却下された。
ちなみにゼダンの門やルナツーはコロニーレーザーではあまり効果的なダメージを与えられないので眼中にない。
ならば破壊だ!とアレンが意気込むと慌てて拘束……されそうになったので触手でボコボコにしてしまい、その責任を取れと自重するように言われた。アレンは釈然としなかったが、彼はやることがあるので発言がことごとく却下されたことを理由に会議から席を外した。
とりあえず、グリプス2に核パルスエンジンを設置し、移動させることとなる。
包囲されてしまっているのが問題なのだから少しでも離れれば多少はマシになる……はず、という場当たり的な対応である。
そして結局はグリプス2は必須だということで予定通りエゥーゴが援軍を出すことに決定した。
ただし、引き上げる予定だったアクシズは引き抜かれたエゥーゴに代わってゼダンの門に張り付くことになった。
そして、エゥーゴの援軍が着た後もアレン一派とエンドラはグリプス2でアクシズの艦隊を狙われないように監視役として駐留することとなった。
「早々にゲーマルクを完成させるぞ」
「……」
スミレに声を掛けたのだが、返事はない。
彼女はプル24の死を聞いてからずっとこの調子だ。
落ち込むなとは言わんが死者の魂を思うならそろそろ元に戻って元気な姿を見せるべきだと思うが……とは言ってもプル達にもいつもの活気がない。
姉妹の死をどう受け入れたらいいかわからないのだろう……よく考えればここにいるのは全員若い者しかいない。
戦闘経験以上に人生経験が足りない。
かくいう私自身もどうやって整理をしたらいいのかわからない。
参考資料などマンガやアニメ程度しかない……ふむ、妄想の世界というのは常識を土台にしている部分もあるか。
……葬儀?墓?……なるほど、死者を送り出すという形を取り、生きている者に1区切り付けるのか。そういえばギレンが弟……ガルマ?だかが死んだ際に国葬というのを行っていたな。今考えるとアレが葬儀というものか。
となると葬儀はミソロギアで大々的に行うことにするか、宇宙葬というものがあるようだが、宇宙に資源(死体)を捨てるなど無駄なことはしない。それに宇宙葬は地味だ。資源の無駄であろうが最後の見送りなら派手にすべきだろう。
墓ももちろんミソロギアに作る。しかし個別に作るとこれから死人が出る度に墓の面積が広がるから大きい墓を作って共同墓地としよう。
平和になった暁には祭りでも開催するか……身内だけだから学生の文化祭というものに近いものになりそうだが、プルシリーズにはそういうことも経験させておくべきだと思う。
それら決めたことを放送で伝えるといくらか空気が軽くなったのを感じる。
葬儀がどういうもので墓がどういうものなのかプルシリーズにはわかっていないだろう。
しかし、死んだ者に何かしてやれることがあると思ったのだろう……私も落ち込んでいる場合ではないな。
それに、この死によって私やプルシリーズはニュータイプ能力の向上が見られた。
失うものが大きければ大きいほど成長するニュータイプとは……才能というより呪いと言った方が正しいのかもしれんな。
「もっとも呪いであろうがなんであろうが研究するには変わらんがな」