第百四十八話
という感じに新しい住人の役割が決まり、特にトラブルもなく1ヶ月が経った。
プルシリーズがとうとう100人を超えて120人となったがまだまだ増やす予定だ。
ロザミア・バダムに関しては治療を施してみたが感触は泡を掴むが如し、つまり多少の手触りはあるが割れてしまい、効果はあまり実感がないというイメージだ。
唯一の救いがあるとすれば本人はあまり気にしていないことと私に慣れてきたことか。
最初こそ酷く怯えていたが、私自身あまり多く時間が作れないが、それでも回数を重ねれば慣れてくれるようだ。
そして、予定の1つであったあるものが完成した。
「……これはまた凄いな」
カミーユが見ているのは戦死したプル24の墓標である。
完成したのは墓標である。
あまり時間が離れすぎると薄情に過ぎると思い、優先して作っていたのだ。
「ねぇ、これって確かプルさん達の姉妹のお墓……なのよね?」
ファ・ユイリィの質問に頷いて答える。
「正確にはプル24の墓標だ」
「……どこからどう見てもお墓ではないわね」
「私の家族の墓標だ。ただの墓では忍びない」
目の前にあるのはハットルグリムス教会をモデルとした墓標である。
もっとも私達には祈る神などというものは存在しないため、教会としての役割は存在しない。
そして、その周りには広場を設けられ、現在はプル24の葬儀として祭りの準備にプルシリーズが大忙しである。
今回は人数がそれほど多くないため、祭りというよりパーティーとなっているが将来的には屋台などが並ぶことを期待している。
もっとも料理の準備だけで四苦八苦しているプルシリーズを見ているとまだまだ遠い話だろう。
「……アレンもそんな表情をするんだな」
「ん、どんな表情をしていた?」
「なんていえばいいのか……どこか楽しそうでいて……何処かで見たことがある……そうか、親の顔なのか」
答えを導き出したカミーユから複雑な心境が伝わってくる。
そういえばカミーユの両親はティターンズに殺されていたか、あまり親子関係が良くないと聞いていたが……これを詮索するのは野暮というものだな。
「まぁ、人殺しをさせている親ではあるが、やはり子の成長は楽しみであるのだろうな」
ニュータイプでも自分の理解できない、認識していない感情というのは存在する。
特に大切なものほどその傾向が強いというデータが出ているのだからオールドタイプだろうとニュータイプだろうと人間とは視野狭窄なのは間違いない。
「もう戦わせたくはないな」
「……残念ながらそれは難しい未来だな」
そういう未来を目指すのは悪くないが、な。
祭りというなの葬儀が始まった。
ここにいるのは未成年ばかりなのでアルコールはない……というかトラブルばかり起こすアルコールはミソロギアでは出すつもりはない。
コロニーという狭い空間内で生活するのだからトラブルの原因となるものは極力排除しておく。
ちなみにタバコも禁止だ。臭いから。
皆ジュースを片手に失敗した料理や失敗した料理や大失敗した料理や料理と言う名の化学兵器や努力すれば食べられる料理や普通の料理やパティシエが作った物と見紛う(みまごう)ばかりの洋菓子の数々を食べ、苦い顔や顰めっ面、お腹を押さえる者、何がおかしいのか笑い転げる者、ケーキに殺到する者達など様々だ。
「まぁ、失敗は明日の糧になるだろう」
これで料理に興味が出る者も出てくるだろうし、それで上達すれば食事係が決まるだろう。
ちなみに今までは戦時中ということもあってレトルト食品に頼っていた。ついでにいうとこのレトルト食品はアナハイムから購入したものだが、安い、(値段にしては)美味い、量が多い、がウリ文句であり、確かに値段にしては食べれないことはないが決して美味いものではないものだということを断言しておく。
安物買いの銭失い……昔の人はよく言ったものだ。
「なんでデザートだけ充実してるの……フォークが止まらない」
「ううぅぅ、明日の体重計が怖い」
「ケーキは美味しいね!お兄ちゃん!」
カミーユのハーレムメンバーはデザートに夢中なようで、皿には山盛りにされたケーキやプリンなどが乗せられている。
「それは良かった。作った側としても嬉しい限りだ」
「「「「…………え?」」」」
「あ、お父さんのデザート独占してる!」
「これは私達への挑戦ですね」
「……丸かじり」
さすがにこの量を作るのは大変だったが、これだけ喜んでもらえるなら触手をフル動員して作ったかいがあったな。
それにしてもアクシズに居た時には材料集めに苦労したな。今となっては金さえあれば月からいくらでも買えるようになった。
……しかし、なんだろうな。当時の苦労が楽しかったと思うのは感傷だろうか、それとも……。
「ん?ハマーンから暗号文?なんだ?」
【私を放置してデザート……葬儀だと、デザートだと許せん】
……プルシリーズの誰かがハマーンに自慢したな。仕事が早い。全然嬉しくないが。
それにしても最初に本音をほぼ言ってからまた本音に戻るのはどうなんだ。
ハァ、仕方ない。何か送っておくか。幸い月からならサイド3までそう時間がかからないし。
「さて、そろそろ催し物の時間だな」
今回は催しまで手が回らなかったので——
「……さすがにMSのシミュレーターはないんじゃないか」
シミュレーターで大会を開くことにした。
ちなみに何気なくパワーアップしており、サイコミュ兵器を再現し、クィン・マンサやパノプリアを始めとして、Zガンダム、サイコガンダム、ハンブラビ、TR-6ハイゼンスレイII・ラーなどが実装されている。
「一応他にもドッジボールや触手合戦などを予定している」
「ちょっと待て、ドッジボールはともかく触手合戦はいいのか?!」
知識としてある人間なら間違いなく18禁的な空間……に見える……なんて期待するかもしれないが操っているのはプルシリーズである。
触手の動きが速すぎてとてもそのような見方ができるものではない。
「そういえば、勝手だがカミーユや後ろの彼女達も参加登録しているからそのつもりで」
「Zガンダムが登録されているのを見た時にまさかとは思ったけど……まぁイベントなんだから仕方ないか」
ハーレムのメンツも快く参加してくれることになった。
「ところでアレンも参加するんだよな」
とカミーユが挑戦的な声でこちらに言ってくるが、その声が聞こえたプルシリーズは顔を青くなったのが目に入る。
予定では参加するつもりではなかったのだが——
「もちろん私も参加しよう」
こういうイベントでは売られた喧嘩は買わないとマナー違反だと何処かで見たから仕方ないな。