第百五十五話
シャア一家(今更偽名を使う必要があるかは不明だが)がミソロギアから離れていった。
どうもシャアは両替機の利用客に興味を持っていたようだが、プルシリーズに監視させて近寄らせなかった。
こういう裏社会的なものでも信用は大事である。というよりむしろ裏社会だからこそ大事なのだ。
それを徹底すべく、記録は取っていない……まぁ記録はしていないが私は誰が利用したわかるのだがこれを何かに使うつもりはない。強いて言えば相手の隠し財産を推測することぐらいだ。
何にしてもシャアがプルシリーズに気づくことがなくてよかった。もし気づくようなことがあれば始末しなければならなかった。
そうなると私達は十中八九エゥーゴと新生ティターンズと全面戦争になっていただろう。
「そしてこれが新型か」
ガズエル、ガズアルはてっきり前衛後衛に分けた機体なのかと思ったらただ単に肩の意匠が左右違いだっただけだったとは……騙された。
そしてこのガズエル、ガズアルはどうやら親衛隊のMSとして開発されたという経緯があるが……その機動力は確かに見るところがあるとは思うが、カタログスペック上では武装がドライセンより劣っているように思える。
資料上とはいえ、量産機とあまり変わらないスペックなのは少し問題があるな。まぁ他人事だけど。
ドーベン・ウルフの方はかなり当たりの部類だ。
「……と言うか、ナナイのやつはいつの間に連邦に行ったんだ?しかも帰ってきているし」
ドーベン・ウルフは連邦のニュータイプ研究所が開発したMS、ガンダムmk-Vを基にして作られた機体で、その技術を盗んできたのがナナイ・ミゲルのようだ。
そのコンセプトは多彩な武装による高火力とオールドタイプによるオールレンジ攻撃、そのありようはまるでTR-6の量産型と言えるだろう。
もっとも中途半端に大型化してしまった上にIフィールド発生装置は未搭載というのは防御力の面ではオールドタイプが操縦するには不向きとも言える。
Iフィールド発生装置はそのコストから量産型に搭載は難しいということは知っているのだが。
「しかし、大型対艦ミサイルやグレネードランチャーなどの実弾兵器を搭載しているあたりIフィールドを意識しているのだろうな」
それに元々出力が高いビームライフルと腹部にあるメガ粒子砲を接続することによって高出力メガ粒子砲を放つことができるメガランチャーというものは試算だと中距離でも距離次第では突破される可能性があるという結果が出ている。
そういえば百式がメガ・バズーカ・ランチャーなるスキウレもどきを使っていたからそちらから来た発想だろうか。
さすがナナイ、なかなかいいMSを仕上げるな。ただ、武装の多さに加え、有線式ファンネルであるインコムというのはオールドタイプが扱うにしては操作性が悪いように感じるが……習熟には随分時間がかかりそうだ。
残りのガザDだが……改善自体はできているようだが、わざわざ変形回数を増やす(ガザCは3、4回しか変形できない)必要性があったのだろうか?それに近接戦闘も熟せるようにアームの強化、と書いているがそもそも砲撃がメインであるガザCに近接戦闘の改善を行う必要性を感じない。
まぁ機動力を向上させたことだけは意義を認めるが……そもそもガザシリーズをこれ以上生産する必要があるのかというのも疑問だ。
コストはガザCよりは悪くなったものの元が良すぎたため、他のMSなどよりは生産性の良さはいいのだがな。
もしかすると軍縮用か?
「アレン、一応MSを設計してみた」
「ほう、思った以上に早かったな」
「俺のMSということだったからZガンダムをベースにして、ここの技術を盛り込んでみた」
早速設計図を見せてもらう。
……確かにほぼZガンダムだな。変形機構の複雑さが目につくのでここは変更すべきだろうな。
しかし……まさかファンネルを2基という少数搭載か、これならサイコミュも大型ではないものでもどうにかできるだろう。
なるほど、ファンネルを補助兵器として使うか……今まで私達は数で押す、主武装としてしか考えていなかったが、こういう用途で使うのもいいかもしれない。
早速、私達が抱いていた固定概念を破ってくれたようで何よりだ。迎えたかいがあったな。
「良い設計だと思う。変形機構が複雑なので少し手を加えて生産性と整備性を良くすれば特に問題ないだろう」
「ああ、そういえばメカニックがそんなこといってたな」
……エゥーゴでこれほど維持が大変なMSをよく運用できたな。私がメカニックなら愚痴だらけだっただろう。
もっとも、クィン・マンサもそれほど整備性が良いわけではないが、な。
「変形機構といえば地上で戦ったアッシマーというMSにしては大型なのに機動力があったな。あれはZとは違った機構だったと思う」
「ほう、アッシマー、ね」
残念ながら地上に配備されているとMSのデータはあまり多く手に入れれていない。
連邦にいたらしいナナイあたりが手に入れていないだろうか……いや、いっそシャアに頼むか?……まずはナナイに確認を取ってからだな。
「それにしても、カミーユは戦うことを決心したんだな」
「ああ、守るためには力がいる。今までは非道なティターンズが許せなかった、でも今俺の守るべきなのはファ達だ」
ふっ、非道ね。
私自身もどちらかというとティターンズ寄りなんだが……まぁ私は死を撒くのではなく、生を問答無用で産み出しているという違いは大きいかも知れないが。
「ああ、それとパノプリアを装着できるように調整もしないと」
「アレを……か」
「プルシリーズをいくら生み出したところで量で勝ることはできない。なら質を高めるしかないだろ?」
「動かしにくそうだよな。アレ」
「そこは要訓練だな」