第百六十二話
賠償金を手に入れたことで資金的には更に余裕になった。
そこで更にプルシリーズを増やすことにした。ただし、今回は70人と一気に増産する予定だ。
ただし、今回はMSの操縦技術ではなく、母艦のクルーとして育てることにしている。
アッティスを操縦ができるのは私のみという欠点も然ることながら2方向から敵に攻められた場合だと迎撃ができずにミソロギア周辺で戦闘することになる。
それでは防備が不十分なミソロギアを後ろに戦うことになり、その結果が目を覆いたくなる被害になることは誰でもわかるだろう。
実際、一年戦争序盤の連邦が一方的に大敗したのもミノフスキー粒子とMSのせいだけではなく、コロニーを守る戦いだったことも1つの要因だ。
それが理解できているからこそジオン側に寝返られることを承知でコロニーを放棄したのだ……まぁスペースノイドを軽視していたのもあるだろうが。
それはともかく、ミソロギアの防備の計画はあるのだが、実現させるには相応の時間と手間と資源が必要がある。防衛に関しては悠長にミソロギアの防備を待つわけにはいかないため、早急に対応するための手段として考えた対策が新たな母艦だ。
母艦はもちろんこの前侵入してきた賊達の輸送船を改造したものになり、武装は巨大触手と対空砲火をメインとして攻撃は重視しておらず、純粋にMSとパノプリアの輸送するための機動力とIフィールドによる防御力を重視する予定だ。
更に交易所とミソロギアの運送も小型船やアッティスだけでは対応しきれなくなってきているので丁度いいだろう。
それに最終的にはアッティスよりも機動力も輸送能力もより優れたものになるはずだ。
「アッティスは色々詰め込み過ぎているからな」
私の研究設備、製造設備、戦艦としては異例の居住性など、ミソロギアを手に入れる前までは自分の過ごしやすい家を作る感覚で設計していたため、純粋な船としての機能性は2流と言える。
「……そうか、母艦が運用されれば私自身がアッティスを操縦する機会も減るのだから製造設備や研究設備は取り払っても問題ないのか」
今となっては研究設備も製造設備もミソロギアの方が充実している上に、アッティスに乗る必要性は移動する時や戦闘の時以外は特に見当たらない。
まぁ自身で作った家とも言えるためそれ相応に愛着はあるがな。
サイド6との交易が本決まりした。
それに伴い、航路上をアッティスで巡回して周辺に潜んでいた海賊を潰して周り、2週間ほど掛けたが海賊達は逃げるか宇宙の藻屑と化した。
そして、1ヶ月ほど様子を見て後に本格的に交易を開始した。
これが普通の国ならもっと時間が掛かるが、さすが実質新興国であるサイド6だ。話も行動も早い。
これによって少し相場に変化が生まれ始めた。
アナハイムとネオ・ジオンしか交易相手はおらず、しかもアナハイムは一年戦争が終わった後、サイド3にも大きな手を広げ、MSを作り出したジオニック、今でも系譜が続くドムやギャンの生みの親ツィマッド、メガ粒子砲を搭載した水陸両用MSズゴックや数々のMAを作り出したMIPなどを吸収し、他の企業も一部吸収して子会社化している。
つまり、サイド3にもいくらか影響力を有しているアナハイムは私達にとってやりづらい相手で、相場がコントロールされていたと言ってもいい。
しかし、そこにサイド6の企業が参入したことでアナハイムの優位性を潰すことができたことにより相場が変動することになったわけだ。
「MSの技術などはジオニックなどを吸収しただけのことはあるがな」
MS技術に関してだけは中立を保ったままで軍備は自衛用の警備隊のようなものしか存在しないサイド6に求めるのは酷というものだろう。
もっともそちらはネオ・ジオンと競争相手でもあるから問題はないのだが……サイド6はそのMS技術を欲していたりする。
宇宙海賊の件で対応できなかったことで危機感を感じたようなのだ。私からすると過ぎたる戦力は災いしか呼び込まないと思うのだがな。
具体的に言えば連邦にサイド6が叛意を持っているのではないのかと疑われたり、ネオ・ジオンがそれを付け狙ったり、MSを押し売りしそうなアナハイムなどだ。
そういう意味では私達はほぼ完全な中立であるためサイド6とは付き合いやすそうではある。
サイド6もそう思っているのかどうかは知らないが、配備予定のMSの設計の依頼が来ている。正直あまり乗り気ではないのだが依頼されては仕方ないと適当に安い、(機動性も製造も)速い、簡単(操縦が)な最低限なMSの設計図を渡しておいた。
聞いた話によるとジム・コマンドやジムIIを使うような宇宙海賊はおらず、ほとんどがザクIやオッゴ、ボールなどらしい……オッゴなんてレア機体をどこから手に入れたのか気になるが、スペック自体は大したことがないものばかりだから問題ないだろ。