第百六十七話
当時の連邦の最新鋭機であるガンダムだったとはいえ、赤い彗星シャア・アズナブル、北米司令官ガルマ・ザビ、青い巨星ランバ・ラル、黒い三連星、クスコ・アル、ララァ・スンなど数多くのエースを撃破したアムロ・レイ。
ガンダムが英雄視される切っ掛けを作った存在でもある。
そんな彼には色々と聞いてみたいことがあった。
例えば突然パイロットとして戦場に立つことになったことや孤立無援の状態に陥った時の心境、宇宙に上がれないと聞いたがララァの死と関係していたのか、プルシリーズとシミュレータで相手してくれないか、クスコ・アルは強かったかなどなど。
シャアとは違って志などない状態で戦い、戦後はニュータイプだからと軟禁されていた男の思いは色々と興味深い。
「そういえばアレン、アムロが乗っているのはリック・ディアスをベースとした機体だぞ」
「リック・ディアスか、あの中途半端な機体をよく量産しようと思ったものだ……しかし、アレの派生機ということはアムロの反応速度に合わないのではないか?」
「まぁこれでも経験だけは多く積んでいるからな。どんな機体でもそれなりに乗りこなしてみせるさ」
「勿体無い……なんだったら私が用意してやろうか?」
もちろんサイコミュなどの私達の独自技術などは渡すつもりはないが、コスト度外視のMSの1機ぐらいなら用意してやっても良い。
その代わり運用データはいただくがな。
「しばらくは戦争なんて起こらないので不要さ……そうだろう、シャア」
「だといいがな」
この場合はシャアの言葉が正しいだろう。
戦争なんて非効率なやり方をそう何度も起こらないと思うが、現状は武功を上げて権力を握った者達が多くいるので、新たな何かを欲した時にまた武力を持って力を手に入れようとする人間が居ても不思議ではない。
シロッコとかシロッコとかシロッコとか……シロッコといえば、女性の地位向上を掲げたことで女性から莫大な人気を勝ち取っているらしい。
これにより新生ティターンズは勢いが増し……たのはいいが、よく考えれば女性が主体となる以上戦争を引き起こすことは難しくなるだろう。
女性とは特殊な例を除けばだいたいは母性を持つ関係上、保守的な傾向にあり、男は狩猟本能により攻撃的な傾向が強い。
そして、今の地球連邦は男尊女卑ではないにしても重職のほとんどは昔ながらに男がほとんどを占めている。
そんな状態であるからこそ、女性の支持を得たシロッコは政争ではエゥーゴを下す可能性がある。
もっとも、女性は何処までいっても感情に素直な質であるから内部から瓦解する可能性が高いが……それはシロッコの手腕次第か。
「さて、そろそろ演習の時間か」
「さすがに2人は出ないのだな」
「俺達が出てしまうと機体性能云々の話じゃなくなるからな」
これが普通の人間なら自意識過剰か傲慢だと思うところだが、この2人の実力を知っている(片方は過去の情報ではあるがシャアと渡り合うという段階で化物認定)身としては肯定することしかできない。
「あれがエゥーゴの新しい機体、ZIIだ」
「名前、デザインからZガンダムの改修機……ではなくローモデルか?変形機構はZガンダムではなくメタスのそれに近いようだな」
「さすがだな。ほとんど正解だ」
確かにZガンダムはその変形機構の複雑さからコストと整備性が劣悪であることはカミーユから貰ったデータでわかっていたし、メタスの変形機構はZガンダムに比べると単純であるため、コストも整備性も優れていた。
……そういえば、メタスの設計が何処か修正前のガザCと似ているのは気のせいか?
それはともかく、メタスは貧弱な武装に難があったが——
「当然改善しているか」
Zガンダムの武装をほぼそのまま実装している上に、変形している状態で放たれたビームは相当な出力を有しているようだ。
量産機には違いないかもしれないが一撃離脱戦法を主として、白兵戦も可能ななかなかいい機体に見える。
ただし、いくつか問題があるようにも思える。
他のMSとの足並みが揃わないために集中運営しなければならないことだ。機動力に優れているため展開力があるため扱いやすそうではあるが、現在の軍運用は単艦での任務が多い以上、搭載してあるMSを全て出撃させてしまえば護衛がいなくなり、母艦が奇襲を受けると瞬く間に撃墜されてしまう。ZIIの機動力を考えれば戦場は遠くで行われるだろうが、戦場に絶対はなく、母艦が沈んでしまえばMSはただの棺桶にすぎない。
だからと護衛用のMSを搭載してしまうと今度はZIIの集中運用が難しくなると思うのだが。