第百七十五話
0090年ももうすぐ終わるといった頃にハマーンから通信が来た。
ネオ・ジオンでZガンダムに触発されて可変MSの開発をしているらしく、アドバイスという名の調査を頼まれた。
その設計図を見せてもらい、解析を行ったところ、ほぼZガンダムと変わらないスペックであることが判明した。
確かにネオ・ジオンの技術で作ることに意味はあるだろうが……同スペックの機体をわざわざ開発するのは無駄が多過ぎるだろう……これだから無能は。
一応初代のガンダムをモデルにしたような、上半身と下半身が分離するという特色もあるにはあるが分離と合体は技術的にかなり難しい(特に合体はゴミが入ったりする)上にコストが跳ね上がり、それに見合ったメリットがない。
それなら最初からZガンダムの生みの親であるアナハイムから購入した方が安上がりでマンパワーも他に回せる。
だからバウとかいう犬の鳴き声みたいな機体はこのままでは採用されない……はずなんだが、ネオ・ジオン内の利権関係で無理やり採用されそうなんだそうだ。
そんな非効率は認められないハマーンは——
「私に再設計の依頼してきた、ということだ」
「以前から思っていたがジオン残党……いや、ネオ・ジオンと友好関係なのではなく、ハマーン・カーンと蜜月なのだな」
ジャミトフが何やら納得したように頷いている。
「ネオ・ジオンがアクシズであった頃から私は組織とは無縁だったからな。関わりを持つ者は個人がほとんどだ……ちなみにハマーンは私の検体でもあった」
もしハマーンと関係がなかったら……おそらく私はアクシズに協力せず、今も研究に専念……できただろうか?アクシズが負けて大変な目にあっていたような気もする。
「そういえばあのクィン・マンサを操っているのはハマーン・カーンだったか……ニュータイプであの機体を預けるとなれば、アレンと繋がっているのも当然といえば当然か」
「それはともかく、ジャミトフには今回の対価を決めてもらいたい。私では資源ばかり増えていくからな」
「……まさか、あの宙域に放置されているゴミ……資源の山は……」
「今まで対価として受け取った資源だな」
最初はミソロギア内に貯めていたのだが、ミソロギアの生活環境が整い、資源の量が増えていくに連れ、管理に掛かる労力とミソロギア内に貯蔵することのリスクを考えるとミソロギア周辺宙域に放置する方が得策だということで放置している。
一応デブリ回避の訓練や機雷を隠すことには役に立っていたりするが……と言うか、今ゴミって言ったな?
「わかった。早急に検討に入る」
「頼む……ああ、できれば半分は資源や物資という方向にしておいてくれ。ジャミトフが加わってくれたおかげで周囲からの孤立感は随分薄らいだが、いつ孤立してもおかしくない要素がある以上、蓄えはいくらあっても困らないからな」
いや、本当にジャミトフの力と人脈はミソロギアに色々な影響を与えている。
以前までは1番の交易相手は月の奴らだったが、今となってはかなり相手が広がり、地球の小さい会社やコロニーの個人事業主まで取引相手となり、交易所が手狭になってきたぐらいだ。
それに変わったものを売り込みに来るものが増えた。この前なんてMS専用掃除機なんてものが持ち込まれてきたからな。
MSの掃除する機械ならともかく、MSで掃除機を掛けるのはあまりに無駄が過ぎるだろうに。
「そういうわけで——」
これは——またお客さんか。
早急に今日の戦闘班を召集を掛け、私自身もミソロギアに設置しているサイコミュ(10台)をフル稼働させて索敵を行って敵を捕捉してからアッティスに搭乗してチェックを行う。
訓練のおかげか、プルシリーズは召集から5分もせずに全員が揃った。以前の海賊襲撃騒ぎの時は全員が揃うまで10分掛かったことを考えれば十分な成果と言えるだろう。
さて、今回は何処の誰が相手だろうか、さすがに1度目の襲撃が失敗している以上、それ相応の準備をしていると思うが、まだ時間がそれほど経っていないので何処かの差し金であるなら無謀としか思えない。
「それにしても……敵艦から感じる敵意の少なさが気になるな」
私達への敵意というより好奇心が強く感じられる……むしろ私が研究している時と同じような知的好奇心のようなものが多い。
「まさか好奇心で私達に攻撃を仕掛けてくるような輩がいるのか?」
もしそうなら私のような研究者か、それとも随分と狂った奴らだな。
私達の編成は今回が初陣となるキュベレイ・ストラティオティス2機とキュベレイ16機、パノプリア3機、アッティスには通常のファンネル以外にも、試作機である超遠距離用ファンネルを10基ほど搭載してプルシリーズが使う予定とネオ・ジオンやエゥーゴ、ティターンズなどの主だった1つの組織の艦隊程度なら相手できる戦力を用意している。
敵艦は2隻と少ないが、得体の知れない部分が多々あることから念には念を入れてのことだ。
しかし、やはり気になるな……どうも気配から察するにパイロットの数が少ないような気がする。