第百八十一話
物流が多くなればトラブルも多くなるものだが、交易所の治安はおそらく全世界を見てもトップクラスだ。
なにせ犯罪を起こそうとしている人間はすぐに警らしているプル達に捕捉され、犯罪を行ったらほぼ間を置かずに現行犯逮捕される。
しかも、逮捕されて裁くのは私達であり、犯罪者に人権など無いことは交易所を利用している者達は知っている。なぜなら罰は身元と罪状と刑罰の執行を交易所内に生放送されるからだ。
ちなみにこの生放送は一部の人間には好評だったりする……人間も生物であり、闘争本能や狩猟本能というものが根底に眠っていることをよく示していると思う。
放送内容がどのようなものかというと中世的とオブラートに表現しておくことにしよう。お子様が見たら駄目だぞ。研究者との約束だぞ?
これらのおかげで富豪や権力を持つ者達は安心して立場を弁えて過ごしてくれている。犯罪者なら誰であろうと平等で裁くからここではどんな人間であろうと平等なのだ。
そういうこともあって富豪や権力者が訪れるようになったのはいいが、これらを利用して弱者が強者を煽る行為が頻発することになったりしたので今では上流階級とそれ以外の区画で分けることで解決した。
後、ここでの出来事は治療に関して以外は口外しないことを同意させている。これを破れば2度と治療を受けることはできないなくなる。これは人権団体などに……いや、世に公表されるだけで面倒になるからだ。
まぁ、それを利用して私達を脅してきた奴もいたが……主要人物の三等親と同時に入管していた人間を全て消してやったがな。
しかし、よくも平然と違反行為をするものだ。これだから権力と金に取り憑かれた亡者は……。(と科学と探究心に取り憑かれた狂人が言っています)
ここまでが1年間あったことで、やっと現在の話になるわけだが、プルシリーズが400人に到達したことで何とかまともに母艦が運用可能にすることができるようになった。
そして試験として未だに存在する海賊狩りに派遣する予定だ。
エゥーゴや新生ティターンズが今も縄張り争いをしているせいで海賊が生き残り、それによって各サイドや企業が被害を被っている。
サイド6は私が売ったMSで武装して警らを行っているのだが、この広い宇宙ではなかなか成果がないようだ。
そんなこともあって各サイドや企業から部隊の派遣を依頼されていたが私自身が出向かなければいけなかったこともあって面ど——ミソロギアのメンテなどが多忙であったから断っていた。
しかし、これで多少不安ながらも派遣することができる。
正直プルシリーズを無意味に戦場に出すのはプル24のことを思い出して気が引けるのだが……しかし兵士である彼女達の生死は隣り合わせであるのだから今更なのだ。それはわかってはいるのだが。
「とりあえず、初陣は私もアッティスで同行して様子見だな。母艦の艦長は……カミーユ、頼む」
「なんで俺が?!」
「プルシリーズは一応特殊マスクで顔を変えているとはいえ、何の拍子にバレるかわからんからあまり表に出したくはないし、そもそも教育を施しているとはいえ、一般常識があるとはとても言えん。カミーユは一応そのあたりも修めて……修めて……修めているよな?」
「当たり前だろ!」
いや、常識がある人間が超エリート組織ティターンズの兵士に殴り掛かるなんてしないからな?MSを盗んだりしないからな?そのまま反連邦組織に所属したり……はするかもしれないか。
とは言え、他に適任者がいないというのも事実だ。
ジャミトフは適任どころか役不足であるのだが、ミソロギアでやる仕事が多すぎて私と同じで長期不在はありえない。
スミレは畑違い。
フォウは記憶を取り戻してある程度常識を取り戻したが、どうも強化の悪影響なのか愉快犯なところがあるためパイロットとして参加させるのはともかく、指揮や交渉事を任せるのは不安がある。
ロザミア・バダムは論外。
つまりプルシリーズを除いた人間達は軒並み何らかの問題があるのだ。
「……あっ?!だからこの前俺に戦術指南書を渡したのか!」
「理解が早くて助かる。それでちゃんと勉強しているか?」
「ああ、サボったりしたらどんな目に遭うか不安だったからな」
「それは重畳。念の為プルツーを副官として付けるのでよく話しておけよ」
「それならプルツーに任せておけばいいじゃないか。俺なんかよりずっと適任だろ」
「プルツーは姉妹の中で特に重用されているのは知っていると思うが、それが姉妹達から嫉妬の対象となっているのだ」
「そうだったのか」
これは日頃から研究開発に引きこもっている上に異性のことであるため、カミーユが知らなくても仕方ないことだろう。
「……危険手当は出るんだろうな」
「もちろんだ。うちはブラック企業ではないぞ」
(ブラックではないかもしれないが見ただけで半狂乱してしまいそうな色なのは間違いないけどな)
「カミーユもなかなか言うようになったな」
「……俺は何も言ってないからセーフだ」
本当に頼もしくなったものだ。