第百八十ニ話
派遣部隊となるカミーユとプルツーと姉妹達の最終試験、私と演習を行うことにした。
カミーユ達は母艦とキュベレイ・ストラティオティス1機、キュベレイ13機、内パノプリア2機。
私はアッティスとMD化したMS(ザクIIF2型、ジムII、ゲルググ、ジム・クゥエル、ガザC、ガルスJなど多種からなる量産機群)40機だ。
仮想敵であるこちらはアッティスに搭載されているIフィールド、触手、ファンネルなどは禁止、メガ粒子砲を私ではなくプルシリーズに任せるというハンデで行われる。MDに関しては機体性能的に既にハンデがあるので私が本気で操作することになっている。
「さあ人形達よ。お前達が如何程のものかを示せ」
そう言うと同時に次々とMDは出撃していく。
スペックがバラバラなため本来なら運用に支障を来すだろうが私が操っているため統率は容易い。
あちらはキュベレイ・ストラティオティスを先頭に、パノプリアを装備したキュベレイ2機が脇を固め、その少し後ろにキュベレイ6機が付き、こちらに向かってくる。
残りのキュベレイ5機は母艦を護衛のようだな。
数という面では圧倒的に私が有利、質ではカミーユ達が有利……私達が戦うとなれば構図は基本的にこのような形になるだろう。そもそも同数ならよほどのことがない限り負けることはない。
さて、まずはお互い射撃合戦から始める。
パノプリアのミサイル弾幕と合間に迫るファンネルのビームはこの量産機群では思った以上に捌くのがキツイ。
比較的防御力に優れている連邦系のMSを全面に出してミサイルは迎撃、ファンネルはビームコーティングを施しているシールドで受け止めて無理やり戦線を押し上げる。
あまりこちらに陣地に押し入られてはIフィールドの無いアッティスではファンネルで蜂の巣にされかねない。
先陣を切るストラティオティスとパノプリアに実弾系武装を集中させ、ビーム系はキュベレイとファンネルを狙い撃つ。
量産型とはいえ、私が操っている以上はファンネルの機動に追いつけないということはなく、撃墜数はすぐに10を超え、もうすぐ20に到達する。
ファンネルが次々落とされるなどということはさすがに海賊相手にあるとは思えないが、アムロやカミーユと言った例もあるのだから全くないとは言い切れないのでこういう時の対処法を学んでおくことも大事だろう。
カミーユの決断か、プルツーの決断か、母艦からコンテナが発射される。それに内包されているのはファンネルだろう。
これはMSに余裕があるにも関わらず、主武装であるファンネルを消耗してしまった際に補給しに母艦まで戻る手間を省くために考えられたのがファンネルをコンテナに詰めて戦場に届けるというものだった。
問題はファンネルはどのMSでもコントロールできるようになっているため、機体識別を行うために多少時間が掛かることと無いとは思うが敵がキュベレイを……厳密に言えばキュベレイmk-IIを解析してサイコミュを複製されてしまえば、このファンネルは相手に乗っ取られる可能性があるという点だ。
もっとも、まだキュベレイやサイコミュが鹵獲されているはずはなく、旧キュベレイではなく、キュベレイmk-IIが漏洩されているはずもない。
ちなみに本来なら私がそのファンネルを乗っ取ることは可能だが、ファンネルは禁止であるため行えない。
「それにしてもIフィールドというのは敵に回すとこれだけ面倒なものだとは、な」
ストラティオティスやパノプリアに実弾がいくらかヒットしているが、ダメージを与えられているとはとても思えない。
実際プルシリーズの思念からは焦りや心配等といった感情は流れてこない。
「となると、やはりスラスターを狙うべきなのだろうが」
高い機動力を持つMSはスラスターの損傷は致命傷となる。
しかし、それはプルシリーズも百も承知……というより理解していないならまた1から鍛え直しだ……であるため、天才である私でもプルシリーズ相手では命中させるのは難しい。
「ちっ、やはり数と運動性の違いは如何ともし難いな」
まだ1分も経っていないやり取りでMDを3機落とされてしまった。更に実弾系、特に有効打となりうるバズーカとミサイルを多く装備しているザクIIF2型とリック・ドムII、ハイザックが落とされている。
ファンネルの動きから察するにちゃんと狙って行われたものだろう。
本来ならファンネル同士で消耗させてからMSとMDを戦わせることが戦術として正しいのだが……ちっズサまで落とされたか、ストラティオティスの改修が思った以上に上手くいっているな。
ストラティオティスは改修前よりファンネル数を減らし、その代わりに小型の核融合炉を増設することで同時使用は不可能だがビームから高出力メガ粒子砲へと変えた。(通常のビームに切り替えが可能でそちらなら当然同時使用が可能)
高出力となったメガ粒子砲はこちらの射程より断然広く、ファンネルと同時に攻撃されてはとても避けられない。
「と言うかそれ以前にストラティオティスを止めることができない」
バズーカやミサイルなどは周りを守るように展開するファンネルに軒並みに叩き落され、唯一当たるマシンガンは当たるだけで致命傷にならず、致命傷になりそうなものは触手で弾かれ、とても止められない。
接近戦を仕掛けて時間を稼ぎたいところだが、そもそも機動性が違い過ぎて振り切られる上に何とか阻もうとすればファンネルで蜂の巣か回避を余儀なくされる。
「我ながら化物を作り出したものだ……いや、この人形達が不甲斐ないだけか?」
アッティスのメガ粒子砲でストラティオティスを狙って砲撃をしているが……当然Iフィールドによって防がれ、何の効果もない。
本来であるなら触手で迎撃すれば問題は特に無いのだが、やはり禁止されているので使えない。
そして……ストラティオティスの特攻を止めることができず、アッティスは撃沈判定となり、カミーユ達の勝利となった。
「……が、油断は大敵だ」
別の場所に配置していた狙撃ライフルを装備したジム・カスタムが母艦を狙い撃つ。
その一矢は見事艦橋に命中、これでカミーユとプルツー、艦橋スタッフは全員死亡だろう。
「最後の最後まで気を抜かなければ100点だったのだがな」
ちなみに満点は1000点だがな。
戦場に終了の合図などありはしない。いつ如何なる時も油断は命取りだ。
特に戦闘終了後は、な。