第百九十一話
アナハイムの狙いが幾つかわかった。
まず確定しているのはどうやら私達を単純に敵対する、というよりも私達の戦力、技術の情報収集活動であること、物資の消耗させようと試みているようだ。
私達が多くのニュータイプを抱えているということはファンネルを大量に使用していることから察するには容易である。クローン人間であるということまでは掴んでいないが、効率の良いニュータイプか強化人間の見分け方、作り方を保有しているのではないかと疑っているようだ。
そしてクィンマンサの戦闘データだけでもサイコミュの開発が抜きん出ていることは把握しているようで、その技術も欲している。
物資の消費は唯一、確実に敵対行動と取れる内容で、私達の足を引っ張ることで時間を稼ぎたいらしい。時間を稼ぐというのはMSの技術的な意味でもあり、経済的な意味でもある。
「今のところ、これといった問題はジャミトフとカミーユの仕事量が増えた程度だからしばらくは放置するとして防衛計画をもう1度見直しする必要があるな」
「そうですね。こうなってしまうとアレンさんの心配していた通り、いつ攻められるかわかりませんね。とりあえずパノプリア、ストラティオティスの増産、MDの本格的導入、プルシリーズの……その……増産をしましょう」
スミレは未だにプルシリーズに対して『増産』という機械的に人間を産み増やすことに抵抗があるようだ。存在そのものに抵抗がないなら私としては問題ない。
「アレンのおかげで奴らから資金を集めてきた。奴らも折角得た不老不死もどきを手放したくはないようで簡単に話がついたぞ。それと奴らもアナハイムに対抗するために非公式ではあるが組織が結成された。名は不死鳥の会だ」
さすがジャミトフ、動きが早い。
それにしても……不死鳥とは……年を取ってもイタイ病を患っている人間もいるようだ。
もう不死鳥の騎士団でいいのではないか。
「しかし、我々の根幹となる資源の入手ルートが限られているのが痛い。デブリを減り過ぎると防衛力に不安がある。不死鳥の会に参加しているほとんどの企業の商圏は地球であるため宇宙まで運ぶとなると効率的ではない。当面は今まで通りネオ・ジオンと各サイドに頼るしかなかろうな」
だが、それだけでは心許ないのも事実。
ネオ・ジオンはまだ再興して時間が経っておらず、未だに不安定。各サイドはアナハイムの利権が大き過ぎるためにこちらに回せる量は限られている。
「それならその不死鳥の会って奴らにネオ・ジオンへ進出してもらえばいいんじゃないか?」
カミーユの言っていることは一考の余地がある。
不死鳥の会の宇宙利権の少なさが問題であるなら与えてしまえば問題は解決するわけで、ネオ・ジオンへの進出ならハマーンに頼めばハードルは無いも同然。
それにネオ・ジオンの資源量が少ない理由は独立戦争と連邦による制裁によって企業が弱体化していることが起因している。
不死鳥の会が参入することである程度息を吹き返すことができるだろう。
「ついでにここにも本格的に進出してもらえばいいんじゃない?」
とはフォウの発言である。
確かに今の交易所内の企業の規模は小、最大で中規模でしかない。規制していたというのもあるが元々グレーな存在である私達を信用するには難しいからこの程度で良かったという言い方もある。
しかし、不死鳥の会が本格的にこちらへ肩入れするならば話は変わる。
ネオ・ジオン……サイド3で資源を確保してもらい、
ジャミトフに視線をやると私の意図を読み取ったのか頷いて応える。
「早速話をしておく。アレンにはハマーンを頼む」
「わかった」
ハマーンと話すのは私の役割だからな。
他の者に任せたりすると次に話す時に愚痴愚痴言われるからな。見かけや話し方は取り繕っているがいつまで経っても独り立ちができないやつだ。
「後、カミーユ隊の増員もしておくか。これからも襲撃があることを想定しておくべきだろう」